<第162回国会 2005年3月30日 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第6号>


平成十七年三月三十日(水曜日)
   午後一時開会

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本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○独立行政法人沖縄科学技術研究基盤整備機構法案(内閣提出、衆議院送付)
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○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 まず、普天間基地の移設にかかわる問題です。
 名護市の辺野古沖への普天間飛行場移設が国の天然記念物になっていますジュゴンに重大な影響を与えるとして、昨年の九月に日米の自然保護団体が米国の文化財保護法、NHPAに基づくジュゴンの保護を求めて訴訟を行っていました。
   〔委員長退席、理事榛葉賀津也君着席〕
 被告の米国防総省とラムズフェルド長官は、このNHPAの適用対象は建造物なのでジュゴンのような生物は対象になり得ないんだと、またこの代替施設は日本政府のプロジェクトであって、建設行為に米政府は関与しないんだと言って却下を申し立てていました。しかし、このサンフランシスコの米連邦地裁は今月初めにこれを退ける決定を下して、実質審理に入ることになりました。今後、米国の裁判所でも、この普天間移設がジュゴンにどのような影響を及ぼすのか審理されることになります。
 大臣は環境大臣も務めておられるわけですけれども、こうした動向についてどのように受け止めておられるでしょうか。
○国務大臣(小池百合子君) この訴訟につきましては、先般ワシントンに参りました際に、ラムズフェルド国防長官も自ら、僕はジュゴンに訴えられていると言って認識をしておられました。
 今回、この司法のまずはサンフランシスコにおける連邦地裁の御判断が出たということでございます。あくまでも、まず米国内の司法の判断ということでございますので、私としてのコメントは差し控えをさせていただきたいと思います。
○紙智子君 今回のこの連邦地裁決定の重要な点というのは、沖縄のジュゴンが米国でも文化財保護法が適用される価値のあるものだと認知をされたということですね。それから、辺野古への移設が日本政府の単独の行為ではなくて、これは米国政府の行政行為でもあるとしたことなんですね。
 今後、アメリカ政府がこの米文化財保護法の手続を守っているかどうかが争点になってきます。審理の進展によっては、米国内でも大きな関心を呼ぶことになりますし、さらに関心の高まりということでいいますと、日本、米国にとどまらず、国際的にも注目を浴びることになると思うんです。
 昨年の十一月に国際自然保護連合、IUCN世界自然保護会議が、このジュゴンなどの希少野生生物保護と環境影響評価と、この見直しを日本とアメリカ、日米両政府に求める勧告案を採択をしています。世界自然保護会議は絶滅の危機が更に進んでいると指摘をしておりまして、今後の審理は国の枠を超えて注目される問題になってきます。
 大臣も、北限のジュゴンを守る立場を更に強めて発言をされるべきではないかと思いますけれども、いかがでしょう。
○国務大臣(小池百合子君) 政府の一員といたしまして、まずは市街地に所在しております普天間飛行場の一日も早い移設そして返還という大きなテーマもございます。ですから、その辺野古の移転の部分と、それから普天間の飛行場の対応ということなどを考えまして、平成十一年の閣議決定などに基づきまして、自然環境などに著しい影響を及ぼすことのないように最大限の努力を行うという、こちらに注力をしているところでございます。
 御指摘の点について、IUCNでの、バンコクで開かれましたIUCNの決議等々につきましては十分承知をしているところでございます。
○紙智子君 世界に対しても恥ずかしくないように是非やっていただきたいというふうに思いますし、やはりジュゴン保護という立場を出していただきたいというふうに改めて思います。
 普天間基地の辺野古への代替新基地の建設の見直しにかかわっては、様々な政府の発言がされています。小泉総理は、三月二十三日の参議院の予算委員会で、なかなか進んでいないことも事実と、全体の中でそういう点も踏まえてどうすべきか検討しなければならないというふうに言っていますし、それから防衛庁長官も衆議院の審議で、針の穴みたいな小さな穴かもしれないが、もしいい案が出てくれば見直しは当然だというふうに、見直しの可能性についても言っているわけですね。
 これは、見直しの可能性は否定していないということですよね。いかがでしょうか。
○国務大臣(小池百合子君) お二方の発言でございますので、私からお答えするというわけにはいかないかと思います。言葉ではいろいろと言えると思いますが、全体としての判断ということも必要になってくるかと思っております。
 御指摘のことは重々よく承知をいたしておりまして、そしてそういった中で何ができるのかということ、また日本の抑止力をどのようにして確保しておくのか、そしてまた現在進行形であるであろう米軍の再編問題とどうかかわってくるのか。これは、辺野古につきましては、あくまでもSACO、そして普天間の飛行場の移転ということについての問題であると、このように認識をいたしております。
○紙智子君 自民党の元大臣だった額賀議員も、移転計画がスムーズに進展していないのは明らかであると、この際きちんと現状を再検討し、その上で判断する時期に来ていると、こういうふうに言っているわけですよ。
 一〇〇%可能性がないというふうに大臣としては言えるんですかね。一〇〇%可能性ないと言い切れるんでしょうか。
○国務大臣(小池百合子君) お答えできません。
○紙智子君 極めて、非常に大事な問題なわけで、そういう中で大臣がそういうふうに言われるということは非常に私は残念です。針の穴みたいな小さなものでも可能性があると防衛庁の長官も言っていると。そういう中で、そういうことであれば、結論が出るまでは凍結するのが当然じゃないかというふうに思うんですよ。
   〔理事榛葉賀津也君退席、委員長着席〕
 この委員会としても、今年一月に現地に入りまして、防衛施設庁の方から説明を受けました。実際に今ボーリング工事をやっているところの説明を、現場を見て説明を受けたわけです。そのときに、アセスのために最小限のことは必要なんだというふうな話をされているわけですけれども、その施設局でさえ、昨年十二月にこの台船設置による海底のサンゴの破壊、消失ですね、三十四か所も破壊している箇所があると公表しているわけです。それで、防衛施設庁の調査でさえもそういう話で、地元の人たちのはもっと、それどころじゃないと、もっと破壊されているということを言っているわけです。
 やっぱりサンゴ礁を傷付けることは、これ避けられないわけで、少なくとも、今いろいろ考えられているという中で、結論が出るまでは計画はストップすべきだということで、大臣のリーダーシップでおっしゃるべきではないかと思うんですけれども。
○国務大臣(小池百合子君) あくまでもこれは普天間の飛行場の移設・返還ということにかかわってくる問題でもございますし、環境の保全という点ではこれまでも何度も助言なども繰り返してやってまいりました。その結果、例えば作業の時間を区切るなど、そういった形で対応をしていただいているところでございます。
 また、政府としても、先ほど来申し上げておりますように、我が国における抑止力の確保という大きな観点もございます。そういった点で、両方並び立たずというところもございましょうけれども、現時点でおきまして、小泉総理の発言なども多々ございますけれども、現時点で辺野古沖への移設計画の見直しについて具体的に検討しているという事実もございません。
 ですから、何というんでしょうかね、言葉でいろいろ申し上げることはできますし、いろんな思いもございます。しかしながら、そこでもって、どのようにして現在の沖縄の軽減、負担の軽減をしていくのか、それぞれ私もここで十分申し上げられないかもしれませんけれども、そういったことも踏まえて今最善の努力をしているところでございます。
○紙智子君 これまでの答弁の範囲からは余り変わらない、非常に、立場としてはそういう意味では環境大臣でもある一方で沖縄北方の担当大臣ということなんですけれども、やはり本当に国際的な長い目で見たときに、必要な立場に立って必要なイニシアチブを発揮していただきたいというふうに改めて思います。
 このまま工事を進めて、仮に見直しの方向になったときに、取り返しが付かない状況になると思います。結論が出るまで計画を止めるように、やっぱり私は大臣から強く言っていただきたいということを再度申し上げておきたいと思います。
 次に、沖縄科学技術研究基盤整備機構法についてですけれども、基本的にこの法律については賛成であります。
 沖縄科学技術大学院大学の設立については、沖縄側としても非常に高い期待を持っています。しかし、重要なことは、この大学院大学が沖縄振興法の基本的な目標である沖縄の自立的発展にどのようにつながるのかと、皆さんも質問の中でもいろいろやり取りされているわけですが、大臣は衆議院で、大学を中心とした企業の研究所、ベンチャー企業が周囲に進出をし、知的産業クラスターが形成されることで沖縄における先端産業の創出や、ひいては沖縄経済の発展に寄与するというふうに答弁をされています。
 問題は、この企業の研究所、ベンチャー企業が果たして沖縄に進出してくるのかどうかということだと思うんですね。今までも、沖縄振興法に基づいて特別自由貿易地域としてこの企業の誘致を促進しようということでいろいろやっているわけですけれども、なかなかこの企業が沖縄に来ない現状があるというふうに思うんです。大学院大学が設立されていく場合には、こうした企業誘致が進むのか、その見通しがあるのかということでの見解を伺いたいと思います。
○政府参考人(東良信君) お答えいたします。
 先生もう御案内のとおり、ベンチャー企業が集積をして知的産業クラスターが形成されていくという循環図は御理解いただけているんではないかというふうに思います。具体的にどういう形になるのかということが問われているんだろうというふうに思っております。
 一つは、大学院大学の方で一体どういうことをやるのかということが大きな問題が一つあるだろうと、それから、それに向けて一般の企業がどういう反応をするだろうかと、これは予測の範囲内でしか答えられない部分がございますけれども、その二つの部分についてちょっと御説明をしたいというふうに思います。
 大学院大学におきましては、基本的にやっぱりきちっとした研究成果を出すということが大切だと。そして、当然のことながら、リサーチパークの造成とか、周辺環境の整備というものがなけりゃならないと。それからもう一つは、TLO的なものでございますけれども、大学院大学の産学連携のための制度といいますか、そういうものをきちっとつくると。これは大学院大学でちゃんとやっていこうということでございますし、この機構においてもやっていく予定でございます。
 そして、今度は企業側がどうかということでございます。現在、現在のことでいえば、先行研究事業が四チーム進んでいるわけでございますが、この動き、この先行的な事業を、研究を見て、例えばつくばにあります大学関係のコンピューター、おっしゃっている、最先端のメーカーが例えば名護に進出をしようという計画を今やっているとか、それから、ここはネズミを使った研究だとかそういうものを、動物実験をやっておられる方が結構ございます。そういう企業も、当然のことながら、ここで相当の研究費が投入されてやっていくということでございますので、進出の機会をねらっている。例えば熊本にあるそういう有名なマウス研究所みたいなところだとか、そういうところはやっておるところでございます。
 そういう意味で、今の、現段階でいえば、サポートインダストリーという部分が相当の意欲を見せてきているということでございます。
 そしてもう一つ、こういうベンチャー企業で、そういう大学の周辺とか研究所の周辺に立地しているベンチャーとか、まだ元気のいいといいますか、大手でないですけれどもそういう企業は、非常にここの話題、大学院大学の研究について非常に話題を持って、いろんな会合出ますと、あれはどうなったということを聞かれるというのが今の状況でございます。
 そういう意味で、企業誘致は、従来のいわゆる工業団地を造って何かそういう県知事が来てくださいと言うのではなくて、こちらでそれなりのいわゆるエンジンを持った上での周辺の波及効果としてやっていくものでございますので、やり方が全く違う方向でございますので御理解をいただければというふうに思います。
○紙智子君 やっぱり期待が大きいわけですけれども、本当に現実甘いものではないという認識で、夢物語にならないように取り組んでいただきたいというふうに思います。
 次に、機構で研究されたこととか大学になってから蓄積される知的成果、知的財産が国や県のために使われないで外国の企業に利用されてしまうんじゃないかと、沖縄の振興のためにどう活用されていくのかというようなことが衆議院の議論でも問題になっていました。政府の説明では、沖縄の経済に還元されるように地元関係者とよく相談していくんだということで御答弁がされているわけですが、もう一つこの展望が鮮明でないなと。
 沖縄の産業や企業が大学院大学に大きな期待を持って見守っていくために、この研究成果と地場産業の発展、新しい沖縄での産業発展にどうかかわっていけるのかと、もう少しこれ具体的にお話しいただきたいと思います。
○政府参考人(東良信君) 地元の企業と大学院大学との関係といいますか、今、機構との関係についての御質問だろうというふうに思いますので。
 現在、今考えていることは、いわゆる沖縄のこういう研究、いわゆる機構にしましても大学院大学にいたしましても、そこで出されていった研究それから成果、これは一体どういうものなのか、どういうものとして使えるのかということを、やはり第一義的には、第一義というか第一番的には地元の人たちにお教えをする、インフォメーションをきちっと与えるということが大切だろうということでございます。そういう意味で、地元の研究者、現在は研究者でございますし、それから企業の関係が若干おりますけれども、集まっていただいて交流会だとかやっております。
 それからもう一つは研究成果、これは先ほど大臣が、ネーチャーに論文を発表したという話もございましたけれども、いわゆるアニュアルレポートという形で、年間こんなことをしました、こういうことですよということをきちっとした形で出していこうと。それは当然沖縄の地元の方々にもつながっていくということで、いわゆる大学院大学でできているシーズ、それから何を考えているかということも含めてきちっとした情報伝達をやっていく、これが一番大切だろうと思いまして、それはずっとやっていこうというふうに思っております。
○紙智子君 世界の最高水準のこの国際的な大学院大学と、アジア太平洋地域の先端的頭脳集積地域ということで発展させるというふうにありますけれども、同時にこの沖縄の経済的自立を図るということを目標にしているわけですね。したがいまして、是非この点が十分担保、保障できるように検討していただきたいというふうに思います。
 あとちょっと、一、二分まだありますので、最後にもう一つ質問いたします。
 小池大臣になんですけれども、実は前回、二十二日のこの委員会で質問をした問題ですけれども、貝殻島の昆布漁の問題です。
 領土問題が解決がしていないために高い採取料を払って操業せざるを得ないという状況について述べました。当面、採取料への支援策を検討していただきたいということで大臣に質問しまして、ところが大臣は、根本的な解決に努力すると、領土返還のために努力するという答弁で、それはそれで大事なんですけれども、採取料支払への支援については答えがありませんでした。
 それで、大臣は、漁民の方がやっぱり不利益を被っていると、このことについては認められた御答弁されたわけですけれども、領土問題を解決する、今すぐ解決するというふうにならないわけですけれども、その解決までの支援策を是非取っていただきたいと、検討願いたいということなんですね。水産行政の問題でも確かにそうなんですけれども、やはり北方問題という特殊な条件にあるわけですから、ここは是非担当大臣の御尽力をお願いしたいということで、そこのところ、もう一度お願いいたします。
○国務大臣(小池百合子君) この御要望につきましては、せんだっても根室の方に行ってまいりまして、そして貝殻島の昆布漁の話なども直接御要請も伺っております。
 ただ結論は、現時点ではやはり民間の取決めの結果に対して国として直接助成するというのはなかなか難しいものがございますので、前回もお答えしたかと思いますけれども、そもそも論になってしまって恐縮でございますけれども、そもそもそんなにそういう昆布漁に対して漁業者の方々がお金を払わなければならないというような状況に至っている根本問題である領土問題の解決ということに国としては努めるということが一番肝要なのではないかと思います。
 これまでも長い、六十年という長い年月がたってしまいました。それまでも、これまでも幾つものいろんな動きがあったと、だけど現時点では全く何も変わっていないという状況であるかと思います。今年はいろいろな節目の年でもございますので、またせんだってのプーチン大統領の二島返還発言などもございます。これをどう取るかは別でございますけれども、動きがあるということだけは明確だというふうな意味でとらえていきたいというふうに思っております。
 昆布漁に実際に従事されている漁業者の御苦労については、もう重々理解をしているつもりでございます。