<第162回国会 2005年2月8日 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第2号>


平成十七年二月八日(火曜日)
   午後一時開会

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本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○沖縄及び北方問題に関しての対策樹立に関する調査(北方領土問題に関する件)
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○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今日は三人の参考人の皆さん、ありがとうございます。
 最初に、私、袴田参考人にお聞きしたいと思います。
   〔委員長退席、理事榛葉賀津也君着席〕
 実は、昨年、北方領土返還・四島交流促進議連ということで超党派の議員の皆さんと一緒にサハリンに行ってきたんです。それで、その現地での報道が、第二次世界大戦後の結果の見直しという自らの固定概念を表明するために訪問したのは明白だと、だが戦勝国がそれを認めないことは明白だということで報じていまして、やはり戦勝国だったら、戦争に勝ったんだから領土を奪っておいても当然だという意識が今もずっとあるのかなというふうに思ったわけです。
 それで、こういう意識状況ということでいえば、モスクワとサハリンというのは距離はありますけれども、何というんでしょう、そういう意識のままで来ているということは、裏を返せば日本の側からの交渉といいますか、これまで領土交渉の際にも、日本の側からも問題があったんじゃないのかなということを率直に思うわけです。
 例えば、サンフランシスコ条約で放棄した千島には国後、択捉は入っていないと、だから返還すべきだという論拠ということでいえば、これはロシアの国もそうですけれども、国際的に見ても説得力を持っているのかということを一つ思いますし、それから、大西洋憲章、カイロ宣言ですね、ここで表明された領土不拡大という、この戦後処理の原則の逸脱と、それからスターリンの誤りを正すという点でいうと、日本側からの言い分といいますか、主張するということが足りなかったんじゃないのだろうかというふうに思うんですけれども、その点についての先生の評価はいかがでしょう。
○参考人(袴田茂樹君) まず、第二次世界大戦で決定された国境の見直し、それをいったん許すとドミノ現象が起きてしまう、つまりポーランドともフィンランドともあるいはドイツとも、いろんな国と国境問題が再燃してしまうと、だからこの第二次大戦後いったん決まった国境を変えるということはできないんだという議論はよくロシア側がします。
 それに対しまして我々が述べていることは、ポーランド、ドイツ、フィンランドその他の国々との間には既に国境はきちんと画定していると。日本は、いったん戦後画定した国境を変えろと言っているのではない、つまり日本とロシアの間には国境は画定していない、それはロシアも公式的に認めていることであって、その意味で質的に全く別次元の問題であるということを我々は述べるわけです。そこまで述べれば大抵の人は、あっ、この日本が言っている問題、それとポーランドその他の国とのそういう国境問題というのは全然別次元だということは大抵理解してもらえると思いますので、それはしっかり述べていただきたいと思います。
   〔理事榛葉賀津也君退席、委員長着席〕
 それから、戦勝国が領土を拡大するのは当然であると、これはよくこういう論理で向こうは言ってきます。日露戦争のときに日本が勝った、だから南樺太、南サハリンを日本が取ったじゃないか。第二次大戦で日本が負けた、ソ連が勝った、で領土を取る、これは日本がやったことと全く同じことをやっているんだと。しかも、日本は第二次大戦のときに、これは侵略国、軍事、軍国主義の国ではないかと、それが罰せられるのは当然であるというふうな論理でよく言われてきます。
 それに対して私がロシア人によく説明するのは、一九〇五年当時は、戦勝国が賠償要求をするあるいは領土の譲渡を求めるというのは、これは国際法的に違法なことではなく、当時の国際法では当たり前のことであった、しかもそれは勝手にやったのではなくて、ロシアとの間で講和条約、つまり平和条約で完全に合意の上で行ったことであって、これは当時の国際法に完全にのっとった行為であると。しかし、その後、無併合、無賠償といったのが次第に常識になり、今おっしゃったように四一年の大西洋憲章、またそれを確認したカイロ宣言などで、大西洋憲章はソ連も署名しております、戦勝国といえども領土を拡大してはならないというのが国際的な合意になっていると。
 じゃ、日本は侵略国だったじゃないかと。確かに大日本帝国といって、日本は、戦前の日本は帝国、帝国主義的な行為だったということをたとえ認めたとしても、しかし、その帝国あるいは侵略国であるということをたとえ認めたとしても、これは東京裁判の合法性についてはいろいろ議論がありますが、それは一応別にして、たとえ認めたとしても、放棄をさせられるのは、どん欲、武力によって、あるいは侵略的な行為によって占領した地域である。日本は一つの帝国的な、一つの、大日本帝国と言っていたわけですから、台湾とか満州とか朝鮮半島等を領有していたわけですが、それは放棄した。しかし、北方四島は一八五五年の日露通好条約によって平和裏に日本の領土となり、その後一度もロシア領となったことはない、決して日本が侵略によって拡大した領土でもない、したがってこれを放棄させられるいわれは全くないのであるという、そういう説明をするわけであります。
 その意味で、サンフランシスコ条約で日本が放棄をした、それがどこの国に帰属するかということは、まだ法的には国際法上は確定していないというのも事実であります。ただ、現実的には、南樺太、南サハリンは事実上ロシアのものとして日本は認めている、公的な機関を日本はそこに置いておりますからね。この問題に関しては、ただロシアは、先日の日ロの専門家対話でも、ロシアはサンフランシスコ条約に署名していない、その署名していないロシアがどういう権利でもってサンフランシスコ条約の条項によれば云々ということを述べるのですかということも我々は述べました。
 以上です。
○紙智子君 ありがとうございます。
 それじゃ、藤原参考人にお聞きしたいと思います。
 先ほどの出されてもおりましたので、北特法についてちょっとその続きといいますか、更にちょっと突っ込んでお聞きしたいんですけれども、結局今までせっかくあっても一度も適用にならなかったと。それで、結局はその一〇%ですね、自治体の財政収入額の一〇%ということで、そうすると相当の事業をやらなきゃいけないと。その適用の条件として、市の予算状況ですね、それから財政が非常に大変なわけですけれども、そういう現実に照らしていかに大変なのかということだと思うんです。
 具体的にその対象事業の総額という場合、根室の場合どのくらいで、自治体の負担額がどれぐらいになるのか、要件に合致させるというふうになる場合はどれくらい事業を拡大しなきゃいけないのかというところについて、少しリアルに話してもらった方がよく分かるかなというふうに思うんですけれども。
○参考人(藤原弘君) 根室市における北特法の対象事業の総額及び自治体負担額についてのお尋ねでありますが、この北特法第七条の特別の助成を受ける対象となることができます特定事業とは、住宅、下水道、都市公園、教育施設等であります。当市の平成十六年度予算で申し上げますと、住宅、下水道事業など事業費総額は六億五千万円であります。この地元負担額の総額は三億五千万円と、約半分程度ということです。
 当市の財政状況は、先ほどからお話ししているように、四度にわたる国際減船、さらには基幹産業である漁業が価格の低迷等によりまして大変不振を続けておるというようなことなどから、市税の収入額が大幅に落ち込んでおります。また、平成十一年に自主的な財政再建計画を策定し、投資的経費、いわゆる建設事業費を厳しく選択しておりますことから、平成十六年度の建設事業費の総額は約十九億円ということになっております。この十九億円というのは、建設事業費がピークでありました平成七年度の五十三億円と比較いたしますと、三十四億円の減少になっているというような状況でございます。
 そういった中で、先ほどからお話ししているように、この七条のかさ上げ措置の要件を該当させるためには事業を拡大しなければならぬということですけれども、簡単に言いますと、当市の場合は十六年度、北特法第七条の対象事業でございます六億五千万円の約三倍の事業拡大が必要になると。約十八億円の事業費が必要となるということから、当市の現在の財政状況では到底その拡大はできないというようなことになっております。
 以上です。
○紙智子君 ありがとうございます。
 それじゃもう一点、漁業に対する支援の問題で、先ほども説明がありましたけれども、結局入漁料や協力金を払って操業しなきゃいけないと。それで、非常に漁場も年々狭まってきていて、経営難でやめる人も増えていると。それで、漁業協定について言えば、政府交渉もあれば民間交渉もあるわけですよね。それで、特に民間交渉ではこの相手側から足下を見られた厳しい条件を突き付けられると。多くは領土がなかなか返ってきていない中での困難なわけですけれども、やっぱり責任を国が持ってこの漁業の維持、振興を行うべきだというふうに思うわけですけれども、この交渉や操業条件、それから振興策への国の責任ある対応ということで言えばどのような対策を望まれるでしょうか。
○参考人(藤原弘君) 先ほどもお話ししましたけれども、現在のところこの貝殻島昆布交渉、そして地先沖合交渉、また安全操業と、この三つが今政府間交渉、民間交渉の行われているわけでありますけれども、大変今、大きな問題といたしましては、ロシア側に払う採取料といいますか協力費、これが非常に漁業経営を圧迫しております。
 例えば貝殻島昆布ですね、これは一隻、二人乗りの小さい船外機の船なんですが、約ですね、二、三か月で水揚げは約百万円ぐらいですね。そのうち一隻当たり約五十万円ぐらいの採取料を払っておると。年間ですね、年間といいますか、一億二千二百万円を毎年ロシア側に払うわけですね。そしてそれを出漁隻数で割り返していくということなんですね。これ、取決めの隻数というのは三百七十五隻あるんですが、現在はその採取料が払えなくてその着漁をやめるというような人たちも出てきておるというようなこと等もございます。
 私たちが今要望いたしたいのは、各種のGGベース、いわゆる政府間交渉、地先沖合交渉等は、これは政府間交渉ですから政府の責任でやるんですが、サケ・マス、ロシア二百海里内のサケ・マス交渉、あるいはこの安全操業、そして貝殻島昆布交渉は、これは民間がやるわけですね。したがって私たちは、そこに外務省なり水産庁なりの人たちが後ろに控えておって、ロシア側が前に言ったことと違うようなまた要求をしてきた場合は、違うでしょうということで、的確にその交渉を支えていただく、そういったオブザーバー的な出席を必ずお願いいたしますということを言っていることと、先ほどから申し上げましているように、協力費あるいは採取料、これをこの安全操業の場合はかなり、かなりというか国の方で面倒見ていただいているんですが、こういった貝殻島等の問題等について、この当該海域でやる漁業生産活動の伴うロシア側への協力費、採取料については、私どもの要望としては国で全額支援していただきたいと。いろいろの、この四島が返ってきて、返ってこらないために、きていないためにいろいろな不利益を被っていると。したがって、その返ってくるまでそういった全額国で支援していただきたいというようなことでございます。
 以上です。
○紙智子君 ありがとうございます。