<第161回国会 2004年10月28日 農林水産委員会 第2号>


平成十六年十月二十八日(木曜日)
   午前十時開会

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本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○参考人の出席要求に関する件
○農林水産に関する調査
 (米国産牛肉輸入再開問題に関する件)
 (BSE対策国内措置の在り方に関する件)
 (台風、地震等による被害状況と対応策に関する件)
 (農政改革の方向性と食料・農業・農村基本計画見直しに関する件)
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○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 最初に、この間の台風と、そして地震で被災をされた皆さんに心からお見舞い申し上げたいと思います。我が党も長岡市に救援センターを設置いたしまして救援活動に取り組んでいるわけですけれども、政府、農水省においても万全の対策をお願いをしておきたいというふうに思います。
 それで、ちょっと二テーマで質問したいので、答弁はできるだけコンパクトにお願いしたいと思います。
 最初に、農業共済についてですけれども、今年は台風が十個上陸するということで、かつてない被害がもたらされました。農林漁業被害の関係の被害額も五千七百億円というわけですけれども、北海道では台風十八号でハウスが大変大きな被害を受けました。
 園芸施設共済では、道内十七の共済組合があるわけですけれども、そのうち九組合で共済金の支払資金に不足が生じています。年度末までの不足見込額ということでは、現時点で一億八千万円を超えるということなんです。現実に共済組合に資金がないという中で、減額支払を毎年繰り返している実態もあるわけです。過去五年間、被害農家何戸に対して幾らの減額がされているのか、まずお答えください。
○政府参考人(須賀田菊仁君) 過去五年間におきまして、農業共済組合が自分の責任で支払うべき共済金額を減額した額でございます。農家戸数の合計は二万戸強でございます。年平均が四千三百三十戸でございます。金額は五億五千万でございまして、年平均一億一千万でございます。なお、共済金額全体は年大体一千億出ております。
○紙智子君 五年間の中で五億超える、そういう減額がされたということです。ただでさえ足切りですべて補償されるわけじゃないということですけれども、その上共済金が減額されたということではやはり農家は再建する意欲を失うということだと思うんです。共済制度への信頼を揺るがしますし、この加入促進の足かせにもなっていくというふうに思うんです。被災農家への共済金の減額支払が生じることがあってはならないと、これは大臣も同じ思いだというふうに思うんですね。
 九一年大冷害、この年一年だけで十一億五千万超える減額が生じたんです。昨年は冷害だったと、それで今年は異常な被害だと。共済金の減額に追い込まれていく組合が、額の上でも件数の上でも増えていくんじゃないかと思いますけれども、大臣の御認識はいかがでしょうか。
○国務大臣(島村宜伸君) 再三御指摘がありますように、本年は正に相次ぐ台風が来襲したり、あるいは地震等もう災害にいとまがないわけでありますが、全国的に園芸施設に大きな被害が発生をしているところであります。これら園芸施設共済に係る共済金の支払財源が不足する事態が招来しはしないか、そのために言わばその補償額が減っても困るという御指摘は当然のことだと思います。
 御承知のように、農業共済制度は、気象あるいは病虫害、鳥獣害などの災害を被りやすい農業の特性に着目いたしまして、多数の農業者が主体的に参加して保険の方式により災害で被った損失を補てんする仕組みで、特別に国が掛金の助成を行っているところであります。国の助成は御承知のように二分の一ということでございますが、このような仕組みであることから、本年のように大きな災害が連続して発生した場合には一時的に支払財源に不足を来すことがあり、現に北海道の園芸施設共済においては、引受けを行っている十七の共済組合のうち十組合で財源不足が見込まれているわけでありますが、これらはそのような状況でも共済金は支払うと、その方針であるというふうに我々は聞いておるところであります。
 農業共済制度におきましては、年ごとに被害が大きく変動するという農業災害の特殊性を踏まえまして、二十年という長期で収支が均衡するように掛金率を算定しているところでありまして、三年ごとに被害率を踏まえて掛金率を見直すということにしているところであります。当然のことに、肝心のときに共済組合の能力が、力が発揮されなければ何もなりませんので、我々は更に意を用いる必要があると考えております。
 ちなみに、平成十四年度もいろいろございましたが、このときには一億六千八百万円の言わば金額、財源不足を生じました。約年間一千億でありますから、その意味では数字的には非常に低いわけでありますけれども、我々は常にこういう本当に共済制度の精神にのっとってこの作用が行き届くように努力をしていきたい、こう考えております。
○紙智子君 二十年でバランスを取りながらという話もあるんですけれども、実際にやっぱり現場に行きますと、例えば今回、北海道、五十年ぶりの異常事態だったわけですけれども、通常被害を大きく超える被害の場合は、現行制度では対応できないんだという声が多く寄せられたわけです。道内のある組合では、被災農家に削減支払で打撃を与えるわけにはいかないと。ただでさえ大変だということですね。
 非常に厳しい議論をして、どうするんだと。実際に削減しないで払った場合に、借金して払わなきゃならないと。そうしたら、この今借金するとすると、十年それ穴埋めに掛かると。その場合、もし来年も災害が来たときどうするんだ、いよいよ払えなくなるじゃないかと。そういう本当に厳しい議論を繰り返しやる中で、やっぱり実態考えるならば、減らさないで支払をしようということで借金して払ったという、そういうこともあるわけですけれども。
 とにかく、被害があった場合はその都度共済金の削減問題が浮上してきて、そういう中で、北海道で例えば園芸施設共済でいいますと、連合会の場合は支払金額が一定水準を超えたら国が再保険金を支払うという仕組みがあるわけですけれども、せめて同様にそういう仕組みも単位の段階で設けられないだろうかという要望も寄せられているわけです。
 やっぱり、減額して払わなきゃならないという事態にならないように、通常だったら、通常の被害の場合はあれですけれども、予想を超えるような異常なそういう被害の場合には、組合が支払困難なったときには国として特別な対策を取るということが必要じゃないかというように思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
○政府参考人(須賀田菊仁君) 先ほど大臣からも御答弁がございました。確かに、先生言われるように、大きな災害が続きますと一時的に支払財源が払底するということは考えられるわけでございますけれども、ここでよく考えていただきたいのは、農業共済制度は一定の母集団に基づく相互扶助による補償でございますので、大きな事故が続いた場合には、この保険の仕組みを継続したいと思えば、新たな掛金率を設定して将来に備えていく。それが嫌ならば、補償の額を下げるなり、そういうことをやっていくのがこの制度を存続させる筋ではないかというふうに考えております。
 そもそも、私ども考えますのに、防災ということを考えまして、共済の事業運営の安定化に資するように、例えば強風に耐え得るような、内地でありますような低コスト耐候性ハウスなどの普及、こういうことによりまして事故発生の防止に努めながら、先ほど申し上げましたような保険を維持するような対応をしていくということを中核に考えていただきたいというふうに考えております。
○紙智子君 組合も経営努力しているわけですよね。そういう中で、赤字を繰り返して借金繰り返すと結局掛金に跳ね返ってくると。そうすると、今度そんなに高い掛金払えないということで加入が下がると。そういうやっぱり現場の矛盾というのがあるわけで、ですから保険だということで言い切ってしまえばそれまでなんですけれども、やっぱりそこを何とかするということで、改善策を是非考えていただきたいということで申し上げて、ちょっと次の、時間の関係で、質問に移ります。
 知床の世界自然遺産の問題ですけれども、候補地になりまして、現地は非常に歓迎をしていて、非常に期待をしているわけです。来年の夏が世界遺産委員会の決定だということで、先日、国際自然保護連合から書簡が送られて、その中で二つ重要な指摘がされているわけですね。
 まず、林野庁にお聞きしたいのは、そこで指摘されている河川工作物、ダムの問題です。資料をお配りしまして、これは知床半島の地図ですけれども、水色のが川で、赤い線がダムです。それで、ここに林野庁のダムが四十四か所、北海道のダムが六か所で計五十か所あるわけです。IUCNは、これらダムのサケへの影響調査を急ぐことや、将来的な撤去を含めた検討や魚道整備などを求めているわけです。
 昨年と今年、環境省や道から委託を受けて、野生鮭研究所が行ったサケの遡上の調査ですね。これでは、林野庁のダムが十三件あるイワウベツ川、それから道の治山ダムが三件あるルシャ川については、堰堤や魚道の直線化などで、人為的な要因で再生産レベルは低く抑えられていると。河川環境を保全する方策を再検討する必要があるというふうに指摘をしているんですね。人工的な建造物が遡上を妨げているという話もしているんですが、地元でも、すべてがこのダムが必要、すべてのダムが必要だとは思えないという声もあるわけです。
 林野庁として、こういう多方面からの指摘を受けて、魚類や自然環境に与える影響を調査して、必要のないダムは見直すべきだと思うんですけれども、知床の保護についての学術的な立場で助言をしている第三者機関である知床世界自然遺産候補地科学委員会ですね、この専門家の知見も踏まえて、ワーキンググループなども作って納得いく調査を行うべきだというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(前田直登君) 確かに私どもも、この知床世界自然遺産候補地、この自然環境を将来にわたって適正に保全管理していくというためには、関係行政機関、そして地元関係団体と密接な連携を、協力を図っていくことが重要であるというふうに考えております。
 このために、環境省、それから北海道庁、それとともに実は知床世界遺産候補地域連絡会議、これを昨年十月に設置いたしました。また、今お話ございました、科学的なデータに基づきまして必要な助言を得るために、学識経験者によります知床世界遺産候補地科学委員会、これを今年の七月に設置いたしておるわけであります。
 そういった中で推薦地の適正な保全管理方策、これの検討を進めてきているわけでございますが、今後、この推薦地域内の治山ダムの取扱い、これについて検討を行っていくということに当たりましては、今申し上げましたこれらの仕組みといったものも活用しながら、地元や専門家の意見、十分お聞きしながら検討を進めてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
○紙智子君 今の御答弁で、要するによく調査もして知見も踏まえて、必要でなければ撤去も選択肢としてダムの影響や必要性を十分調査していくということでよろしいですね。
○政府参考人(前田直登君) 治山ダム撤去そのものにつきましては、当面は、これ正にその下の方に集落もありますし、道路等の、生活道等の公共施設もあるわけで、そういった観点から当面は、少なくとも当面はすぐに撤去ということにはなかなかなり難いんではないかというふうに考えている次第でございますけれども、特に魚道の関係につきましては是非いろんな、先ほど申し上げましたような委員会の意見、あるいは早急に調査を行いながら適切な措置を講じていきたいというふうに考えておる次第でございます。
○委員長(中川義雄君) 紙智子さん、時間ですから短くやってください。
○紙智子君 はい。
 じゃ、もう一つ指摘されている海洋保護の問題ですけれども、スケソウダラの繁殖、産卵・育成場所の漁業を行わないように求めている点で、これも科学委員会の大学の先生が実際に、スケソウダラの減少はオホーツク海全域のもので地球規模の温暖化やロシアのトロール船の漁船による根こそぎの捕獲という問題もあると。
 既に地元では厳しく制限したり、保護や増大の施策を取られているということも指摘されているわけですけれども、IUCNに対してこうした現状の対策も十分伝えながら、ワーキンググループなども設定して研究もしてやっていく必要があるというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(小野寺浩君) 十一月五日がIUCNの締切りですので、今最終調整を鋭意やっているところでございます。その中で調整して恐らく書けるだろうと思っているのは、今委員が御指摘になりました漁協等の自主的取組、それから科学的調査についての方針ははっきり出したいというふうに思っております。
 科学委員会については我々が委嘱をして七月に発足したものでありますので、まず第一義的には科学委員会にお諮りするということが筋だと思いますが、より中身が明らかになりました段階で、より実効的な海域の保全のための体制についても考えていきたいと思っております。
○紙智子君 終わります。