<第159回国会 2004年6月10日 農林水産委員会 第20号>


平成十六年六月十日(木曜日)
   午前十時開会
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本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○農業協同組合法及び農業信用保証保険法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)


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○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 前回の質問では農協の事業に対しての機械的あるいは一律的な指導の問題について提起、問題提起をいたしました。それで、農協改革というふうに言うわけですけれども、やはり国の支援策も非常に大事だと。やっぱり両方が相まって、本当に農家のための農協の改革、農協事業ということが確立することできるんだろうというふうに思います。
 それで、経済事業改革、この中で生産資材価格の引下げということが目標になっているわけです。農水省は生産局長の下に農業生産資材問題検討会というのを置いて、その傘下の委員のメーカーや流通、それから利用段階の各団体に低減のための行動計画というのを作らせていると思うんです。その低減計画というのはどれだけの団体で制定されているのか、そして現在の計画は、特に資材費の低減や達成度について目標数値を明示するということが眼目になっているわけですけれども、この目標数値を立てているところはそのうちどこどこなのかということについて、まずお答え願います。
○政府参考人(白須敏朗君) ただいまの資材関係のお尋ねでございます。
 お話しのとおり、平成七年に農業資材問題検討会を立ち上げまして、その検討を基に、主な農業生産資材でございます肥料、農薬、農業機械、その関係団体、各都道府県、それぞれ製造、流通、利用の各段階に応じまして行動計画を策定しておるわけでございますが、この団体といたしましては、ただいま委員からあれございましたが、まず製造団体としては肥料関係の九団体、それから農薬工業会、日本農業機械工業会、流通段階といたしましては全農、全肥商連、全農薬、全農機商連、それで利用段階としては都道府県と、こういったそれぞれ製造、流通、利用の各段階におけます団体の皆さんにお集まりをいただきまして、それぞれ関係団体が生産資材低減のために具体的に実行をしていただく、そういう指針として行動計画を策定したということでございます。これはおおむね五年ごとに見直すということにされておるわけでございまして、平成十三年の見直しの際にできるだけ数値目標を入れるということで検討会からも御提言をいただいたわけでございまして、そういうことで私どもとしてもできる限り目標数値を盛り込むというふうな指導を行ったところでございます。
 その結果、例えば全農が策定した計画におきましては、最終年度でございます十七年度までに肥料、農薬、農業機械のコスト削減効果を積み上げまして、最大で二〇%のコスト削減を目指すというふうなことで具体的な目標数値が盛り込まれているわけでございますが、ただいま委員の御指摘の、どこが目標数値があるのかないのかということでございますが、それぞれの団体でそれぞれ目標数値を定めておりまして、ちょっとここでそれぞれすべてを私列挙するわけにまいらないわけでございます。一例といたしましては、ただいま申し上げましたそういう具体的な目標数値というものも盛り込まれた計画になっているわけでございます。
○紙智子君 それぞれにということなんですけれども、メーカー側はこの製造価格を何%下げるかというふうな目標計画を示しておりますか。
○政府参考人(白須敏朗君) それぞれ価格の引下げ目標というふうなことで品目別にそういう目標も定めておりますが、これはいろいろ経営に差し支えるという面もございますので……
○紙智子君 聞いたことに答えてください。
○政府参考人(白須敏朗君) はい。定めております。
○紙智子君 今、メーカー側は製造価格を何%に下げるかの目標計画持っていますかと聞いたんです。それに答えてください。
○政府参考人(白須敏朗君) 全農としましては、肥料として、例えば低コスト肥料拡大で一〇%、農薬では低コスト農薬拡大で一〇%、農業機械ではHELP農機拡大で一〇から二〇%を引下げというふうな目標を立てているわけでございます。
○紙智子君 メーカーは、メーカー側も参加していますよね、会議に。
○政府参考人(白須敏朗君) メーカー側の、私、ただいま目標についてはここで承知をいたしておりません。
○紙智子君 この低減計画を自己点検、評価するということで一番の目玉に置いていたわけですね、数値目標を持っていこうと、立てていこうと。それで、そういう意味では農水省としては、それぞれのところに数値目標を立てさせていくということなんだけれども、立てていないところに対してはどういうふうに助言や勧告、指導してきているんでしょうか。
○政府参考人(白須敏朗君) できる限り数値目標を盛り込むようにそれぞれ指導というか、お願いということでやっているわけでございます。
○紙智子君 できるだけということを言われるんですけれども、やっぱり一番の目玉にしてきたのは、目標数値を明示していくということをはっきり書いてあるわけですから、この計画の問題の中に。
 それで、全中の経済事業改革指針の中では、物流の合理化などで資材価格の引下げを図るというふうにしているわけですね。それで、やっぱりそうなりますと、元の価格、農機具やそれから農薬や肥料メーカーの価格や、これをいかに引き下げるかということがやっぱり大事だと思うんですよ。この点では、メーカー側がこの行動計画の眼目である引下げの数値の目標を立てていないということになるとこれは問題だと思うんですね。大体、会議にも、業界、団体の役員が検討会の委員になって、引下げを図る必要がある、数値目標を決めるんだと言って発言もしているわけですから、そこで自らメーカー側も決めないというのはこれはちょっとどうなんですかね。農水省として、その点、求めてきたんですか。
○政府参考人(白須敏朗君) 今回、基本計画の見直し作業も行われているわけでございます。これに併せまして、十三年に立てましたこの行動計画の見直しというものを今回前倒しで改定をしていくと。このためには、この計画の分析、検証あるいは評価というふうなことが必要でございまして、そういうことを行いまして、その上でできる限り数値目標を盛り込むように各団体に対して指導いたしまして、その見直しを進めてまいりたいというふうに考えております。
○紙智子君 今、これからその計画の見直しを行うのでその中で立てさせていくということなんですけれども、ここはきちっと徹底させるべきだというふうに思います。
 農水省は、やっぱり、農業団体に資材価格引下げを掲げさせているわけですけれども、これはいいですよね。しかし、農水省自身も、自分自身ができることといいますか、責任はやっぱりきちっと果たすようにすべきだというふうに思うんです。資材価格だけを引き下げるといっても、やっぱり限界があるわけですよね、元々の値段があるわけだから。だから、そういう点で、やはり、もし仮にいろいろ努力して資材価格を下げたというふうにしても、また農産物の価格が下がっていくということになれば、結局効果というのは帳消しになっちゃうわけじゃないですか。
 ですから、やはり全国農業会議所のアンケートの結果を見ますと、その中でいろいろ答えていますよ。これはアンケートの結果出ているんですけれども、これ見ますと、「直面する課題」というところで、(1)の生産面のところでは、生産資材が高いと感じている人が七七・七%を占めて第一位なんですよ。
 それから、その他いろいろ挙げられている主な意見のところにもあるんですけれども、生産価格、生産物価格が低迷する一方で、農業機械、生産資材が高いと、こういう意見も挙げられているわけですね。
 それから、次の(2)の経営面というところになりますと、生産物価格が去年よりも低下しているというふうに感じている人が五五・三%ですから、過半数超えてそういう感想を持っているわけです。
 ですから、やはり資材価格だけ引下げを掲げるのではなくて、やはり生産物価格の安定と両方での努力が私は政府としても必要じゃないかというふうに思うんですけれども、この点の認識を、次、大臣にお聞きしたいと思いますが、いかがでしょう。
○国務大臣(亀井善之君) 肥料、農薬、農業機械、こういう生産資材、現在の農業にはもうこれは不可欠の問題であるわけであります。例えば水稲につきましても、近年、その生産コストの約三分の一がそのような生産資材に占めていると、こういうことでございますので、生産資材の低減、これを図ることは大変重要なことであるわけであります。
 そういう中で、生産資材費の低減、そういうことで、資材価格自体の低減に加えまして、資材の効率的な利用の推進、こういうことも必要なことでありまして、各方面からの取組が必要でありますし、先ほど局長からも申しておりました、その農業生産資材費低減のための行動計画に基づきまして、製造、流通、さらには利用、各段階での取組が必要なことと、このように思っております。
 そういう面で、今年、食料・農業・農村基本計画の見直しの検討状況を踏まえつつ、行動計画を改定することとしておるわけでありまして、資材費低減に向けた取組が一層推進されるように関係団体等も指導してまいりたいと、このように考えております。
○紙智子君 資材価格の引下げだけじゃなくて、やっぱり生産の安定を図るということを併せてやっていく必要があるということを再度申し上げておきたいと思います。
 それから、信用事業についてなんですけれども、全体として農協も融資が厳しくなっていると。その背景はどこにあるとお思いかということと、この農水省の全国アンケート調査、これ平成十五年にやられている調査ですけれども、その中では、農業経営を営む問題点として、生産物価格の不安定というのが七割あります。それから、融資の審査、保証条件が以前に比較して厳しくなったというのが三割の人が答えています。
 作物価格の安定、収入の確保の見通しがなくなってきている、そのために農協も融資には慎重になるということがあると思うわけですけれども、この厳しくなってきた理由は一体どこにあるとお考えでしょうか。
○政府参考人(川村秀三郎君) 信用事業の関係で申し上げます。
 農協の融資残高を見ますと、平成十二年の事業年度以降、この減少が続いております。その原因でございますけれども、近年の地域経済の低迷等によりまして資金の投資意欲等が減っているということでの需要の低迷、それから、輸入品との競合等によりまして農産物の価格が低迷しているということで、そういうことも反映して、農家組合員の投資意欲が低下してきているということを反映しているというふうに考えております。
 ただ、その融資が厳しいかということになりますと、この貸出しにつきましては、画一的な審査でなくて、農業者の、借り手の経営状況なり資金の回収可能性、そういうものを総合的に判断して行うように指導しているところでございます。
 ただ、近年、今低下しているということを申し上げましたけれども、例えば住宅ローンを始めとします生活資金のニーズにこたえる融資、こういうところでは、つい最近でございますが、増加に転ずる傾向も見られますし、また、組合員向けの融資も、特に担い手向けの融資が回復する傾向が見られておりまして、そういう意味ではちょっと明るい兆しがあるかということを感じております。
 いずれにしても、農協というのは正に地域に根差した、密着した事業体でございますので、組合員であります農業者の経営の状況、これを日ごろから把握をして、そして、単に物的担保に頼るのでなくて、的確な融資ができるようにしていくことが重要だというふうに思っております。
○紙智子君 今、厳しくなった背景といいますか、お話をされている中で、輸入の影響で価格が下がって、そういう不安定なことなどもあるという話もされました。やっぱり本当に一戸一戸の農家といいますか、組合員のところがしっかり安定してこそ、そういうふうにやっぱりなるような農政の転換をやってこそ、本当に農業に基盤を置いた農協の信用事業の発展があるんだと思うんです。
 そういう中でも、この金融機関の努力というのは非常に大事だというふうに思うわけですけれども、信用事業に対するこの検査、指導は系統金融検査マニュアルに沿って行われているわけですけれども、このマニュアルの別冊、三月に改訂されましたよね。この改訂されたマニュアルの主な趣旨についてはどういうことでしょうか。
○政府参考人(船本博昭君) 系統金融検査マニュアルの本年三月の改訂の趣旨についてお尋ねでございますが、農林水産省では、農林漁業者、中小零細企業等の実態に即した検査を実施するために、平成十四年の八月に系統金融検査マニュアルの別冊として、「農林漁業者・中小企業融資編」というのを策定いたしまして、検査を実施してきたところでございます。
 さらに、お尋ねの三月でございますが、債務者である農林漁業者等の実情に即したきめ細かな実態把握に一層努めるということで改正いたしまして、系統の金融機関が継続的な現地訪問等を通じて農林漁業者及び企業の技術力や販売力や、それから経営者の資質といった定性的な情報を含む経営実態の十分な把握と債権管理に努めているかとか、それから、きめ細かな経営相談、経営指導等を通じて積極的に事業の再生に取り組んでいるかといった言わば系統の金融機関による債務者への働き掛けの度合いを重視いたしまして、債務者区分の判断等におきましてもこの点を十分勘案するということにしたところでございます。
○紙智子君 このマニュアルの別冊では、債務者区分を単に赤字や債務超過などのこういう表面的な現象で判断するなというふうにしているわけですよね。こういう注意が改めて明記されたということは、やはりこれまでの検査で実態に合わないような債務者区分について機械的な対応があったということに対しての反省があるんじゃないかと思うんですけれども、どうですか。
○政府参考人(船本博昭君) 先ほど申し上げましたように、平成十四年の八月にまずマニュアルの別冊を作りましたので、それに基づきまして、その中でも、当然、各農林漁業者の実態に即した検査を行うということで、画一的に行わないということを明記しております。それに即しまして検査の方も実施をいたしましたし、各検査官あるいは都道府県に対しても周知徹底を図っているところでございまして、それに即してやられているというふうに判断をしておりますけれども、今回、更に一層そういった点を徹底させるという意味で今回別冊の方を改訂いたしまして、そこを明記したという次第でございます。
○紙智子君 貸付けにおいてもとかくこの農業というのはオーバーローンになりやすいと。そういうときの、例えば災害が起きたりすると入り用になりますし、それから借り地で農業をしているだとか、それから自己資本が少ないとか、担保力よりも以上に借りざるを得ないような状況というのが出ていると。そういうときに、上部の監査や行政検査で貸出しが多いとか、引当金を積めとか、回収を急げというようなことで、言ってみれば機械的、一律的なそういう指導にならないように留意しなきゃいけないというふうに思うわけですけれども、表面的な現れ方で判断すべきではなくて、やっぱり総合的に見るべきだと。その点では、基本的な姿勢として、実態をつかんでいる農協金融、やっぱりいろいろ言ってもその地域の中で実態をつかんでいるということではそういう農協金融機関の判断についてやっぱり尊重すべきだというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(亀井善之君) 農協、それは農業者が自主的な協同組織としての自己責任、この原則にのっとった経営が基本であるわけであります。このために、系統金融機関の検査に当たって、自己責任原則に基づく系統金融機関自身の内部管理と中央会などの外部監査を前提としつつ、これを補強するものとして適切性等の検査を実施すべきものであるわけでありますが、いわゆる系統金融検査マニュアル、こういうもので仮に系統金融機関が行った自主査定が系統金融機関検査マニュアルの字義どおりに行われていなくとも、当該系統金融機関の業務の健全性、また適切性確保の観点から見て対応が合理的なものでありまして、当該金融機関の規模や特性に応じましたものである、こういうことが認められる、こういうことであれば、必ずしも不適切とするものではないんではなかろうかと。
 そういう面で、今後とも系統金融機関が行った自己査定結果の検証に当たりましては、系統金融機関と十分意見交換を図ることによりまして、私ども農水省といたしましても、系統金融機関の規模や特性を踏まえまして実態に即した検査、こういうことを実施する考え方であります。
○紙智子君 各地歩いていまして、寄せられる中で、破綻懸念先というふうに判定されたところには、債務額から担保評価額の七割分を差し引いた額の全額分を貸倒引当金に積むようにと指導されているというふうに聞いているんですね。それで、引当金を積めないならば、これ無理に回収しなければならないと、そういう話があるわけなんですけれども、このマニュアルではそういう指導を行っているんでしょうか。
○政府参考人(船本博昭君) お尋ねの破綻懸念先への引当金のルールでございますけれども、農林水産省の定めております系統金融検査マニュアルにおきましては、破綻懸念先の債務者に関する貸倒引当金につきましては、原則として過去の貸倒れ実績率等に基づいて予想の損失額を見積もって、その額を貸倒引当金として計上するというふうにしております。一律に一定の比率で貸倒引当金を計上するといったようなことを指導しているものではございませんで、農林水産省の実際の検査におきましても、このマニュアルに即して実施しているところでございます。
○紙智子君 一律にやっていないというお話だったと思います。やっぱり個別的な実態に即してということで確認をさせていただきたいと思うんです。
 それから、金融機関も非常に大変で、基本的には展望のある農業を守る農政の確立が必要なわけですけれども、金融事業としても、それぞれの農協の自主的な判断というのは尊重されるべきだというふうに思います。
 信用事業検査の際にその趣旨をよく徹底させるべきだというふうに思うんですけれども、この点、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(亀井善之君) 先ほども申し上げましたが、その特性、そういうものも十分加味をして、そして規模やそういうものを十分考慮して対応しなければならない、そしてさらには、十分系統金融機関とも意見交換等を図りながらそれを指導してまいりたい、このように考えております。
○紙智子君 新規就農者の問題に質問移ります。
 農協改革にとっても新規就農の参入というのは不可欠の課題だと思うんですが、各地で新規就農者の定着の努力が行われています。北海道でも、農業公社とか自治体の担い手センターがいろいろ努力しているんですけれども、近くにある農業関係の大学で研修する場合に、自治体が支援をしているわけですね。
 それで、土地を借りて研修しながら営農して、五年たつと土地を買うと。しかし、その資金は到底生み出し得ないものですから、融資になるわけです。初めに就農した当時は借金しているから、また抱えるということになっちゃうんですね。その融資も、結局、制度資金が全額対象になればまだいいんですけれども、限度額があると。そうすると、あとは農協資金で、保証人が必要だと。そうすると、農協はリスクを抱えるということになるわけです。その返済も、これからの農政がどうなるかということによってなかなかよく見えない。そうすると、非常に未知数で不安定な状況になるわけですね。
 農水省は、新規就農者が土地を取得する際に、資金の貸付け、それからその返済がスムーズに行われているのかどうか、こういうことについての実情についてはどうとらえておられるでしょうか。
○政府参考人(川村秀三郎君) 新規就農するに当たりまして、農地の取得の問題、これは非常に重要な課題といいますか、一つのハードルとも言えるような課題だというふうに思っております。
 私どもも、この農地取得の問題に対応するということで、一つは、新規就農相談センターによりまして農地情報を提供する、あるいは相談活動、また農業委員会による権利調整活動もやっておりますし、また、農地保有合理化法人によります農地の貸付け、売渡し、それから農地の取得に必要な資金の貸付け、こういうことで各般の施策を講じております。そういう意味で、そういった融資もやっております。
 この結果、新規就農者の数も増えておりますし、また、就農者の調査によりましても、定着率も、これはサンプルでございますけれども、八五%程度ということでございますので、それなりの成果も上げているのではないかというふうに認識をしております。
○紙智子君 取得する際とか、その資金の貸付けとか、それがスムーズに返済されたとか、そういうことについて実情をとらえていますかというふうに聞いたんですけれども、どうですか。
○政府参考人(川村秀三郎君) もちろんそういう貸し付けた後のフォロー等もその普及組織等を通じてフォローをしているところでございます。
○紙智子君 ここに対しての国の担い手育成のための支援を強めれば、やっぱり地域農業そのものを本当に発展させていくことにつながっていくというふうに思うんです。
 それで、融資で土地購入というのはなかなか今困難な情勢だと思うんです。それで、農地保有合理化事業、五年間、特例の場合は十年でしたと思いますけれども、その間はリース式、後は買うということになっているわけですが、制度自体はあるわけですから、これを例えば延長して、五年と言わず、三十五年とか四十年とか、もう思い切ってそういうふうにやったらどうかと、やってくれたら本当にもう徹底してそこで安心してやれるのにという要望があるわけです。
 なぜ五年でないと駄目なのか、事業主体の支援、援助で長年のリースでやれるようにこれは検討したらいいんじゃないかと思うんですけれども、どうでしょうか。
○政府参考人(川村秀三郎君) 今お尋ねにありましたリース事業で、五年間ということで期間を設定しております。
 こういった五年間の考え方でございますけれども、これまでの新規就農された方の就農後の状況を見ておりますと、最初の一、二年というのはなかなか収入も経営も軌道に乗らないというような実態がございますが、三年ぐらいたちますとかなりの水準に来る、五年もしますと周りの方々にも遜色のないような経営も実現できるということでございます。そうなりますと、正にその収益の中から土地の購入のための資金を借りまして償還をしていくということも可能になりますので、最初の立ち上がりの五年間、こういうことは、経費が少なく、単年度ごとの経費が少なくて済むリースというものの制度を設けているところでございます。また、五年では必ずしも十分ではないという御意見もございましたので、今、委員も御指摘ございましたけれども、御紹介がございましたけれども、十年間というかなり長い、長期間の長期貸付けの制度も設けたところでございます。
○紙智子君 そういう要望があるということは御存じだというふうに思うんですね。検討されたこともあるんですよね。どうですか。
○政府参考人(川村秀三郎君) もちろん、今申し上げましたとおり、この五年と十年が同時にスタートしたわけではございませんで、まず五年をスタートさせまして、それではもう少し長い方がいいという御意見もありましたので、十年というものもオプションとしてあるということでございます。
○紙智子君 やっぱり新しい時点に立ってというか、本当にこれから担い手の問題がどこでも大きな問題だし、切実な問題になっているわけですよね。そういうやっぱり条件を作っていくということでは、今までの延長線ではなくて、やっぱり新たな時点に立ったそういうやり方といいますか、そこは大いに抜本的な見直しというか改革をしていっていただきたいということを強く求めたいというふうに思います。
 それから、農地だけではなくて施設や機械を含めてリース制度の要望もあるわけです。平成十年の農政改革大綱の中でリース農場制度の活用がうたわれているんですけれども、国の補助事業として行われているこのリース事業というのは、経営構造対策事業のリース事業、これは認定農業者及び新規就農者が対象だというふうになっているわけですけれども、新規就農者でこの事業の活用実績というのはどのようにとらえられているでしょう。
○政府参考人(川村秀三郎君) 経営構造対策でこのリース事業を実施しております。リース事業全体の実績ということからいたしますと、平成十二年から平成十四年の三年間、これで見ますと、この経営構造対策でやった施設整備全体に占める割合からいきますと、施設数で二〇%、事業費で一八%と、こういう実績になってございます。ただ、今、委員が申されたように、新規就農者だけを取り出した集計になっておりませんので、その内訳は、申し訳ありませんが、分かりません。
○紙智子君 それも是非把握していただきたいというふうに思います。
 農水省のアンケートの結果で、昨年の九月の十七日に意向調査というのがやられていると思うんです。「新しく農業を始める方に必要な方策・支援について」と。離農者、これは新規就農者で離農した人を含んでいるわけですけれども、その中で必要な対策、支援策ということで答えている第一位が「機械・施設整備に対する補助金の拡充」というふうになっていたと思うんです。高額な投資できないわけですし、それから融資は大変だと。リース制度であれば、こういう機械やその施設ですね、この農地の負担が軽減されると。新規就農者にはメリットがあるわけです。
 地方自治体では、この補助事業の対象にならない規模の、大きいものではなくて、いろいろ工夫して機械や施設のリースを行っているところが増えているわけです。国のリース事業の活用をもっと実態に合った有効なものにするように、これ改善するとかリース制度の拡充について検討する、してほしいという声もすごく強いわけですけれども、そういうおつもりはありますか。
○政府参考人(川村秀三郎君) 施設なりあるいは機械につきましてのリース事業、こういうものは各地方公共団体においても取り組まれているということは承知をしております。
 私どもも、この経営開始に必要になる施設なり機械、こういうものの設置のための助成というのはいろいろやっております。その中での、例えば無利子資金の活用、またリース事業としてもやっておるということでございます。また、先ほど話題になりました合理化法人、これにつきましても、その土地と併せて農業用の機械なり施設、こういうものを貸し付けるという合理化事業もスタートしてございます。それからまた、今年度予算でございますけれども、先般、就農法を改正させていただきましたけれども、この研修生として新規就農者を受け入れた受入れ法人に対しましてもリースというものを今回拡充をしたといったようなことで、いろんな状況等を踏まえながら拡充なり改善をしてきているところでございます。
 今後の問題としまして、やはりいろんなニーズ等を踏まえながら、どういうことができるかは常に研究なり勉強をしたいというふうに思っております。
○紙智子君 あわせて、重要な問題として研修や技術指導の拡充の問題があると思うんです。さきの意識調査の結果でも三割以上の人がこれは必要だというふうに答えています。国は支援の融資制度しかないわけですけれども、進んだ自治体では研修機関の設置や期間中の生活支援も行っているところがあるんですよね。
 ちょっと日本農業新聞で紹介されていましたけれども、五月の中で、これは愛媛県の久万町というところの話、紹介されていました。全国トップレベルの支援策を誇る愛媛県の久万町と。新規参入者を受け入れる町の研修所久万農業公園アグリピアは、資金援助として二年間の研修期間に毎月十五万円を支給すると。就農時にはJAと連携して、リース事業として軽トラックや土地付きハウス、農業機械、中古のハウス・トラクターも貸し出すと。設備投資にも補助制度があって、これ、二〇〇一年に新規で入った愛知県から移り住んだ方が、ホウレンソウの栽培、ハウスの設備などで五百万円掛かったわけだけれども、そのうち三百万は町と県の補助でやったと。それで、久万町というのは支援策が充実しているのでここを選んで来たんだという話をされているわけですよね。既にこの町は七人の新規就農者が就農していて、このアグリピアで販売先の開拓まで指導を受けながらいろいろ栽培してやっていると。こういう、町を挙げてといいますか、本当にいろいろ頑張ってやっておられる話もあるわけです。
 それで、アンケートでも示された声、そしてこういう全国的な中にいろいろやっぱり光る話というか、頑張っている話があるわけですけれども、こういう経験に依拠をして、農水省は、やっぱり地域での研修所の施設あるいは運営と、さらに新規就農者のその間の研修費や生活費支援に対して、国としても制度を作って全国的な流れを促進すべきではないかというふうに思うわけです。
 これに関する制度の実情と、その拡充強化ということについて考えを聞きたいと思います。
○政府参考人(川村秀三郎君) 新規就農者を確保していくという問題は、農業政策にとっても非常に重要な問題でありますし、また個々の地域の自治体にとりましても、やはり地域の振興という意味でいろんな意味を持っているわけでございます。そういう意味で、各自治体におきまして様々な取組がなされているということは承知をしております。
 国としてどういうところまでやるべきかということは常に検討しなくちゃいけないと思っておりますが、我々の今の、現在の状況の中では、そういう状況を踏まえながら改善すべきところは改善していかなくちゃいけないというふうに思っているところでございます。
 それから、研修費あるいは生活費といったお尋ねがございました。
 まず、技術の習得、これにつきましては、道府県の農業大学校等の研修施設での研修あるいは農業法人等の先進経営体での研修、これは生産現場での研修ということになりまして、実践的な技術あるいは経営手法を身に付けるという意味で非常に有効だと思っております。
 青年等就農法の中での就農支援資金、この中に就農研修資金がございます。これは、この資金によりまして、今申し上げましたような農業大学校におきます研修施設あるいは先進経営体、こういったところの研修に必要な資金については対応を既にしているところでございます。また、先般の改正によりましてその雇用先の方にもそういう資金の貸付けができるということがございます。
 また、生活資金の関係でございますが、現在の準備資金が、就農準備資金がございます。この中で、就農に密接に関連をいたします例えば住居の移転、引っ越しですね、費用、それから住居等を契約するための敷金、礼金等、こういうものは就農に密接に関連するということで就農準備資金の貸付対象にしております。ただ、生活費全般についてまで助成するということは、その性格上、国の支援としてはなかなか難しいとは思っております。
 いずれにしましても、新規就農者が円滑に定着をし技術等を高めていくということが必要でございますので、資金面の援助だけでなく、どういうことが効率的であるかということは常に検討していきたいというふうに思っているところでございます。
○紙智子君 やっぱり研修の支援、生活のことも含めて、ここのところが私は大事なところだと思うんですね。実際、やっぱりさっきの久万町のようにやっているところはあるわけですし、そこのところをやっぱりどうするかということで、これは本当に取り組んでいくということで農水省として力を入れてほしいというふうに思うんです。
 それで、確かに融資制度というか、そういうところには貸すんだという話なんだけれども、融資制度や就農支援資金制度というのは、これは我々も賛成です。賛成なんですけれども、やっぱりこれだけじゃ不十分じゃないかと。やはり直接的な助成や支援措置というのは必要だと、前回も質問でやりましたけれども。
 それで、大臣の農政改革基本構想というのが出されていますが、この中でも担い手の経営改善のための農林漁業金融の在り方を検討するということが書いてあります。最近の基金協会の代位弁済額の増加というのは、融資によって破綻するケースが多くなっているということを示しているわけですが、就農支援資金を借りた人が一定定着をして役立っているというふうに思うんですが、その返済がまた経営を圧迫するというふうなことがあるのかないのか、そしてその返済がスムーズに行われているのかどうか、こういう実情をどういうふうに把握しているのか。また、高価な施設資金について、今後その据置期間が過ぎてくるわけですけれども、返済の見通しがどうかということについて、これは調査すべきではないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(川村秀三郎君) 就農支援資金でございますが、既に償還が始まっておりますソフト資金、就農研修資金と就農準備資金があるわけでございますが、この償還状況を見てみますと、貸出金総額は九十三億円あったわけでございますけれども、このうち償還履行期限を経過したのは五千六百万円ということでございまして、貸出金総額に占める割合は〇・六%ということで低水準ということで、おおむね順調に償還がなされているというふうに考えております。また、施設資金、ハードの資金でございますが、これはまだ償還が開始されておりません。そして、今御指摘もございましたように、猶予期間もございますが、この償還期間につきましては就農後その据置期間を経て同世代の他産業並みの所得水準が成るというようなことでの制度設計をしております。
 今後どうなるかということは十分見ていきたいと思いますけれども、今申し上げましたように、就農等施設資金の限度額なり償還期間というのは借受け者の経営自立を考慮して設計されておりますので、基本的には償還は円滑になされるものというふうに考えております。
○紙智子君 農業白書で示されている就業人口の年齢階層別構成では、三十五歳未満というのはイギリス、フランスで約三〇%なんですけれども、日本の場合はわずか数%です。しかし、じゃ展望がないのかというと、そういうわけでもないというのは、今、新規就農への相談件数が年に一万件を超えていると。もっともっとそれが年々増えているということなわけですよね。だから、やっぱりこの人たちの就農をいかに現実化するのかというその努力のところがとても大事だというふうに思いますし、政策的な支援を強めれば、条件はあるということだと思うんです。
 アンケートで、せっかく就農したけれども残念ながら離農した人の声の中で、やっぱりもっと機械や施設整備に支援が欲しかったとか、研修を拡充してほしかった、こういう声が出ていたわけで、それにこたえて、やはり新規就農の担い手育成を図るということで、そのためには土地や機械や研修、生活への支援について、今までの制度を本当に抜本的に強化する、そういう国の政策を確立強化させるべきだというふうに思うんですけれども、これは大臣、お答えお願いします。
○国務大臣(亀井善之君) 新規就農者を確保する、これは大変重要なことでありまして、職業として農業の魅力を高めていくということが必要なことであるわけでありまして、農業内外からのチャレンジ、こういう精神をもって新規就農者を確保していくことは、これは大変重要なことと、このように思っております。
 就農に際しまして、先ほど局長からも技術の習得、あるいはまた資金の手当て、農地の確保、こういった課題に対応しつついろいろのことを考えていると。また、就農相談の体制の構築ですとか、あるいは新規就農者の習熟度合いに応じた技術あるいは経営研修、また就農支援資金の貸付けなど、就農形態や経営の発展段階に応じたきめ細かな対策を講じていくことが必要と、このように考えております。
 さらには、先日成立いたしました青年等就農促進法の一部改正法によりまして、就農支援資金の貸付対象を拡充し、現行の自営形態での就農に加えまして農業法人等への就農も貸付けの対象としたところでもございます。今後は、この制度の着実な実施に努めるとともに、より円滑な就農に向けて施策の一層の充実を図ってまいりたいと、このように考えております。
○紙智子君 ちょっと残り時間も迫ってきたんで続けて大臣にお聞きしますが、農政改革の問題で、大臣の農政改革基本構想についてです。
 品目横断的政策を導入をする、日本型の経営所得対策を構想している、対象は担い手とし、そこに支援を集中するというふうにしているんですけれども、大臣の言う担い手というのは、この対象がちょっと狭いんじゃないかと率直に私は思うんですけれども、どのような人を対象にしようと検討しているんでしょうか。
○国務大臣(亀井善之君) 基本計画の見直しの中で我が国の農政全般にわたる改革方向につきまして検討を進めているところであります。
 この検討の中で、諸外国の直接支払の制度、このことも視野に入れまして、諸外国との生産性の格差が大きい畑作あるいは水田作を対象として、個別品目ごとの価格支持的な政策から意欲と能力のある担い手を支援をする品目横断的な政策へ移行することを含めまして、施策を担い手に集中する、こういうことを基本といたしまして、競争力のある農政の展開方向を見定めていく考えであるわけであります。
 対象経営としては、市町村長が地域条件に応じて認定しております認定農業者であることを基本としつつ、経営規模や経営改善への取組についても要件とすることが望ましいと、こういう考え方で今いろいろの議論をめぐらしているところであります。
○紙智子君 具体的な数字は触れませんで、今いろいろ思いをめぐらしているという話なんですけれども、私は農業構造改革で全体としては担い手を絞っていく方向なのかというふうに思っているんですね。これでは、本当に今自給率上げようといっているときに、それにはつながっていかないんじゃないかと。同時に、農協の発展という立場から考えた場合どうなのかと。約三百万戸の農家の中で、ある人は所得への何がしの支援がある、多くの人はそれが当たらないと。農村集落の中にそういう差別的な政策を持ち込むということは、結局農業者の協同組合の発展を促進するという農協法の趣旨からしても、これ問題が生じるんじゃないかというふうに思うんです。
 つまり、そういう不平等の政策を持ち込んで組合員相互間で協同の立場に立てるのかどうか、逆にこの協同の条件を損ねていくことになるんじゃないかというふうに思うわけですけれども、この点での大臣の認識を最後にちょっとお聞きしたいと思います。
○国務大臣(亀井善之君) すべての農家に対しまして一律的な直接所得補償、こういうことになりますと、やはり農家の経営努力を阻害をする、こういうことになりかねないと。現状の農業構造を固定化する、こういうことで改革に支障を来すおそれ、こういうことを考えるわけであります。しかし、集落全体として環境、水の問題等々あるわけでありまして、そういうものを含めた中で改革をまた進めてまいりたいと、このように考えておるところであります。
○紙智子君 終わります。


○紙智子君 私は、日本共産党を代表して、農業協同組合法及び農業信用保証保険法の一部改正案に対して反対の討論を行います。
 反対の第一の理由は、共済事業において契約条件の変更を可能にする制度を導入したことであります。これが実施されれば、共済金の大幅削減をもたらし、契約者の生活設計を狂わせるものです。
 昨年、多くの反対の声を押し切って保険業法が改正され、生保の契約条件の変更を可能にし、予定利率の引下げができるようになりました。本案は、農協の共済についてもそれと横並びにしようとするものです。いわゆる逆ざやを契約者の犠牲によって解消できるようにするもので、容認できません。
 しかも、農協共済においては、逆ざやはありますが、他の利益で穴埋めしてもなお、二〇〇二年度には約四千六百四十億円もの基礎利益を生み出しています。このような実態で、農協共済の契約不履行を担保し、共済金額を減額させる目的の本制度の導入については反対です。
 反対の第二の理由は、全国農協中央会が定める経済事業改革を含む基本方針を法的に位置付け、都道府県中央会に各農協を指導させるとした点です。
 これにより、中央集権的な指導が強まり、農協を営利本位に変えていこうとする動きと相まって、赤字を抱えたり、一般企業と競争力のない事業の縮小や廃止が強く指導されるなど、地域の独自性、農協の自主性を損ねていくことが懸念されます。
 政府の農政が大きな背景となって農協事業の困難が生まれていますが、そういう中でも組合員の協同の力を発揮し、営農や生活、地域の環境を守っていく多彩な活動の発展で、経済事業の改革に粘り強く努力していく方向こそ重要です。
 さらに反対の理由として、合併、事業譲渡における総会手続の省略についてです。
 大規模組合がその組合員数、資産額の二十分の一以下の組合を吸収合併する場合、総会の議決を要しないとすることは、合併推進のために民主的手続をないがしろにするもので、農協の民主的発展の上から問題であり、賛成できません。
 以上を申し述べて、私の反対討論とします。