<第159回国会 2004年4月8日 農林水産委員会 第10号>


平成十六年四月八日(木曜日)
   午前十時開会

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本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○卸売市場法の一部を改正する法律案(内閣提出)
○特定農産加工業経営改善臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
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○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 息せき切って着いたばかりのところを申し訳ありませんけれども、早速大臣に質問いたします。
 まず、今回の改正の一つであります卸売市場法のこの手数料の自由化の問題についてお聞きしたいと思います。
 委託手数料の自由化については、多くの卸売業者が非常に脅威に感じています。私も北海道でその関係者の話を聞きました。手数料の自由化が集荷力のある市場とない市場に格差を生み出すと、それから市場間の競争が激しくなる、それから大都会の間に挟まった市場は厳しくなると、それから大きな市場は残れるかもしれないが、地方の中小市場にとっては致命的な問題だという声もありました。
 さらに、青果の卸の関係でいいますと、今でもぎりぎりの状態でやっている中で、わずかに下がっただけでもこれは赤字になるんだという声や、生鮮食料流通に大きな混乱をもたらすし、産地や小売、消費者にとっても大きな損失になると、こういう声が出されました。
 それで、日経流通新聞のアンケートを見ましても、この卸会社の六百四十九社のうちで手数料の自由化に賛成だというのが九十八社、一五%ですよね。それから、反対だというのが二百六十三社、四〇%と自由化への反発、依然として強いわけです。にもかかわらず、なぜ手数料の自由化をこれ強行するのでしょうか。これについて、まず大臣、お願いします。
○国務大臣(亀井善之君) 今回の改正におきまして委託手数料を全国一律的な定率制を廃止をして、卸売業者が機能あるいはサービスや地域の品目ごとの取引実態、それに応じて弾力的に委託手数料を徴収すると、こういうことであるわけであります。
 もう一方、この措置を講ずることによりまして、現在、卸売市場外の流通におきまして高付加価値化やあるいはまた低コスト化といった出荷者あるいは実需者のニーズに即した多様な取引内容やサービスの提供が行われている結果として市場外に流れている取引を、卸売業者が多様な機能、サービス、こういうことを提供することによりまして再び市場内に取り込むと、こういうこと、そういう中で卸売業者の取引額が増加することにつながる、このようなことを期待をしておるわけでありまして、手数料の弾力化に当たりましては、おおむね五年の準備期間を設けると、こういうことにしたところでありまして、その準備期間内に各市場における産地やあるいは実需者のニーズに対応したサービスの提供とその場合の手数料の在り方につきまして議論をいただきまして、市場の活性化につなげることをしていただきたいと、このように考えておるところであります。
○紙智子君 依然としてやっぱり批判が強いということを申し上げたんですよね。
 それで、関係者のその理解を得ているという話もされたんですけれども、しかしやっぱり業界のトップのところとは確かに意見交換されたんだと思うんですけれども、現場の市場関係者のところを歩きますと、やっぱり出てくる声というのは、手数料の自由化先にありきだと、市場で意見述べても変わらないと、しゃべらせるけれどもそれだけだと、賛成しているのは競争力のある市場だけなんじゃないかという声もあります。
 実際に、その現場の人たちの声としては、この改正でどう変わって、どんな影響が出るのかということは分からないというふうに言っておられるんですね。だから、理解を得てというふうに言うんですけれども、実際にはとてもその理解を得ているという状況とはほど遠い状況だというふうに私は思うんです。
 それで、業界トップと地方の市場関係者の間に乖離があると私は思うんですね。それはこの法律の中身から見ても当然だと思うんですけれども、農水省は今度のこの法改正で市場の体質強化ということを言われます。しかし、この実際改正で体質が強化されるのは一部のやはり大手の卸売業者だけだというふうに思うんです。たとえ開設者が手数料を決定したとしても、大規模産地は引下げの要請を強めるでしょうし、有力産地からのブランド力のある荷を集めようということにしようと思うと、やっぱり現行の料率を維持するということは困難になるだろうと。
 そうすると、市場間の引下げ競争になる可能性も否定できないんじゃないかと思うんですけれども、この点いかがでしょうか。
○政府参考人(須賀田菊仁君) 手数料の弾力化、懸念といたしましては、先生おっしゃいましたように、市場間の競争、卸間の競争、それから生産者との関係、いろいろ懸念があるわけでございます。ただ、基本は、もう全国一律の手数料を定めている制度というのはこれだけでございまして、規制緩和の政府全体の計画の中でも弾力化して競争を通ずる活性化を図れと、こういうことを言われておりまして、そういう方向での改正を今回することにしたわけでございます。
 確かに、経営の問題、市場間の競争の問題で懸念する声が今なおございます。このために五年間という移行期間を取らしていただいて、その間で市場の関係者でどうやったらそういう競争の中に飛び込んでいけるかということを十分議論をしていただきたいということ、そして、五年後も市場で話し合っていただいて、市場ごとにその手数料の上限の率を定めることは可能でございますので、力の弱い、まだ体質が強化されていないようなところについては、そういう前向きの努力と併せて、そういう市場ごとの手数料の率を定めるということも併せて措置していただいて、こういう環境に生き抜いていけるような努力をお願いをしたいというふうに思っております。
○紙智子君 弾力化という話しされて、その幅があるんだということなんですけれども、しかし、実際に自由化して手数料が上がるということはまずないと。結局、下がることになるだろうというのは関係者が一番心配していることなんですね。
 それで、卸売業者の収入というのは委託手数料が大半を占めています。事業収益見ますと、青果でいいますと収入の八〇・四%ですし、食肉は七九・四%、花卉は八七・七%です。卸売業者の経営というのはこの手数料の収入に依存しているわけですよね。この料率引下げというのはイコール委託手数料の収入が減少することになる、これは確実だと思うんですね。卸業者のうち三割近くが赤字に今なっていると。だからぎりぎりの経営をしているわけで、それがこの手数料の引下げということになりますと、これはやっぱり死活問題だというふうになると思うんです。大規模な拠点の市場に属する一部の力のある卸業者はより集荷力を強めていくというふうになると思うんですけれども、経営体力のない中小の卸業者は経営を脅かされることになると。
 集荷競争や品ぞろえで不利になれば、これは買い出し業者が離反する、経営不振で廃業に追い込まれることになるんじゃないかと、こういうふうに思うわけですけれども、こういうやっぱり実態から見てどうなんでしょうか。
○政府参考人(須賀田菊仁君) 卸業者の委託手数料、これ、生産者から見ますとこれはコストに当たるわけでございます。生産者にとってはそういうコストはできるだけ効率化して低い方がいい。一方で、卸の方々の経営を考えますと、先生言われましたように、安定するためには固定的な方が望ましいという問題があるわけですけれども、問題は、市場の経由率が落ちて、その市場に魅力がなくなってきている、これをできるだけ活性化しないといけないという大きな目的があるわけですから、生産者の方々の意向、それから卸の人たちの意向、開設者の意向、市場間競争、そういうものを十分勘案して、自らでやはりルールを作って、相反する、安定と効率化という相反する要請を調和の取れるような仕組みにしてほしいというふうに、そういうための改正をいたしましたので、その点よく趣旨を踏まえて対応していただきたいというふうに思うわけでございます。
○紙智子君 今の事態が大変だからそれを打開するためのものなんだということで、消費者の側から見ても安い方がいいんだという話なんですけれども、私はやっぱり、実際の今の現実のところをよく見たときに、果たしてそうなのかというふうにも思うんです。
 実際、昨日、今日の新聞見ましても、赤字経営で改善命令が出されている卸売業者が増えているということですよね、今日の農業新聞にも出ていましたけれども。そういう中で競争が迫られるということになりますと、より一層弱体化することになると。各部門ごとに一社しか卸業者がいない中央卸売市場というのが、青果でいいますと三十三市場ですし、水産で十市場、食肉で十、花卉で十五市場です。だから、それがもしつぶれた場合には市場が存在できないところが地方にはたくさんあるわけですよね。だから、そこで仕入れをしてきた、そういう専門の小売店というのは続けられないことになってしまいますし、そうすると、今までお年寄りなんかが買いに行っていた、その買いに行った場所がなくなってしまうと、こういうことにもなっていくわけで、結局はそこにしわ寄せが行くんじゃないかということなんです。
 それからもう一つ、手数料の自由化のことで問題だというふうに思うのは、開設者によって上限下限を設ける、そういう幅を持たせて、規制しないことも可能になるということなんですけれども、そうなりますと、結局、市場側が産地を選んで、集荷する産地によって手数料に差を付けることも可能になるということがあると思うんですね。
 卸売市場法は差別的取扱いを禁止しているわけですけれども、例えば手数料で大規模産地と中小産地に対して差を付けるというような対応を取ることを禁ずることができるのかどうか、この点どうでしょうか。
○政府参考人(須賀田菊仁君) 差別的取扱いの禁止、受託拒否の禁止、これは今後とも継続していくことでございます。
 元々卸売市場制度ができましたのは正にこのためでございまして、先生言われるように、産地によって選んで手数料に差を付けるというようなことではこの規定に抵触をいたしますので、そういう場合が仮に現れたという場合には、農林水産大臣又は開設者がその業者に対しまして改善措置命令の発出ということで是正をしていくということとなる運用をするつもりでございます。
○紙智子君 この間、農水省さんからもいろいろ説明聞いてやり取りしてきたわけですけれども、差別的な取扱いについては、結局、その場その場の判断、ケース・バイ・ケースの判断、これが可能になるということでもあると思うんです。
 例えば選果とか箱詰めとか、出荷形態ですね、それから出荷側のサービスの度合い、これが同じだと、にもかかわらず手数料で差を付けた場合は、これは差別的な取扱いになるんだと、抵触するという話になると思うんですけれども、そうすると、例えば大きなロットの単位というか、全部品ぞろえをやって出してくる、あるいは均質な、均一な作物でもって出荷できる、大規模にそれをやれると、そういう産地と、なかなかそこまで行かない、そうでない中小の産地、こういうところの差別的取扱いを規制するということは困難になるんじゃないかと。つまり、そういうふうに品ぞろえもあらかじめやって出してくるのは、当然それは差が付きますよということになりやしないかと。
 そうすると、やっぱり非常にこの差別的取扱いの禁止ということについて原則が形骸化することにもなるんじゃないかというふうに思うんですけれども、それはどうでしょうか。
○政府参考人(須賀田菊仁君) ロットが大きくて質が高くて、しかもそれが均一であるといった農産物は、これは実需の方の需要も付きますし、そういうことで、そういうものをそろえて出してくる方に対してそうでない人と差を付ける、同じ市場でですね、差を付けるという、これは合理的な差ではないかというふうに思っております。
 問題は、先生言われたように、A市場は大きくてそういう集荷力があるんでそういう大ロット、均質の農産物が集まる、そうでないB市場、小さいところでは集荷能力がないんで集まらないと、そうすると市場間で差ができるじゃないか、それどうしてくれるんだというお話でございます。
 これは、市場間の競争になるわけでございますので、そういう市場は今後ほかの市場とネットワーク化するなりあるいは合併するなり、こういうような対応でできる限りの集荷能力を自ら付けていただきたいと、それが今後競争状態の中で生き抜けていける工夫じゃないかということでございまして、そのためにこの手数料の弾力化には五年間の移行期間があるというふうにお考えをいただきたいというふうに思うわけでございます。
○紙智子君 やっぱり差別的な取扱いがどういう場合そうなるのかということなんかが、結局はその場その場で判断されるということになるんじゃないかと思うんです。それで、そういう差別的な取扱いが起こった場合にどうやって是正するのか、そのための是正についてはどういうふうにやっていくというふうに考えておられるのか、この点はどうですか。
○政府参考人(須賀田菊仁君) 一つ一つ具体的な状況によって違うと思われるわけでございますけれども、開設者が作った手数料の規定におかしなところがあればそれを是正する、それに基づく卸売業者の運用に恣意的な運用があると判断されればそこを是正をしていく、取り過ぎた手数料ならお返しなさい、そういうふうなことを命令、指導をしていく、こういうことになろうかと思います。ただ、具体的なケースによってそれはもう違うと思いますので、この趣旨に即して具体的な措置命令を行っていくということになろうかと思います。
○紙智子君 そこは一体だれがやるんですか、どこがやるんですか、そういうことは。
○政府参考人(須賀田菊仁君) 農林水産大臣又は開設者が行います。
○紙智子君 市場の取引委員会なんかは、ここはやらないわけですか。
○政府参考人(須賀田菊仁君) 市場取引委員会は取引の議論を、適正取引の議論をするところでございまして、その根っこのルールを作成するときに議論を、意見をいただくと。で、ルールができました以上、それの運営、運用の問題でございますので、その是正措置は開設者又は大臣というふうになろうかと思います。
○紙智子君 いずれにしても、そういう問題が起こり得るわけですよね。ですから、本当にそこに対する体制というのは強化していただきたいというふうに思います。
 それから次に、市場再編の問題なんですけれども、今度の改正案では、広域化が必要な中央卸売市場を指定し、中央卸売市場整備計画に名称を記載することになるわけですけれども、農水省として、この広域化、広域化というのはどのような範囲を想定しているのか、それから、広域化した市場への施設整備の優先順位や予算などを重点化するなどの、その他の市場と比べて特別措置を取るようなことを考えておられるのか、これはどうでしょうか。
○政府参考人(須賀田菊仁君) 広域化が必要とされる中央卸売市場、基本的にはその取扱量、現在道路網の発達とかそういうのが見られて流通自身が広域化しておりますので、取扱量を基準に考えたいと思っておりますが、その立地によっては取扱量が少なくても必要だというところがございます、利用する方々の便益を考えますと。そういうところでは再編の仕方をネットワーク化にするだとかいろんな工夫のしようがあろうかと思っております。
 そして、再編統合を行う場合の支援措置でございます。予算面では、卸売市場の再編統合を伴う場合には補助率について十分の四という最高補助率を適用いたしますし、税制面では、卸の合併に関しましては登録免許税の軽減措置、中央卸売市場が地方卸売市場化されてその市場が他の市場と合併するといったような場合には固定資産税の軽減措置、こういう支援措置を用意しているところでございます。
○紙智子君 今度の法改正では、理論的には東京や神奈川で広域連合を作って開設者となるような市場が可能になるわけですけれども、大型量販店による大規模な流通に言わば合わせるような形で市場流通を作るべきではないというふうに思いますし、そういうところだけに重点化するようなことはすべきではないというふうに思うんですね。もちろん、東京とか大阪とか、人口が集中したような地域の拠点市場とその他の市場の一定の機能分担ということの必要性については否定するつもりはないですけれども、しかし、大都市の拠点市場とそれ以外の市場の格差は拡大したままで、多くの中央市場とその関係者は取扱量の減少ということで非常に苦しい経営を迫られているわけです。こういうところに本来支援が必要だというふうに思います。
 拠点の大型市場に出荷できない中小の零細産地の出荷先の確保の問題や、それから中小小売店の仕入れの確保の問題や地域の地場流通を支える市場の公的な機能、これはやっぱり維持拡充されるべきだというふうに思いますし、そこにこそ国の施策を重点化すべきだというふうに思うんですけれども、この点いかがでしょうか。
○政府参考人(須賀田菊仁君) 先生おっしゃいますように、実需者あるいは産地が大型化をしておる、そしてモータリゼーション、道路網が整備をされているということで流通圏が広がっておりまして、一大消費地を抱えて大量の取引が可能な大都市の卸売市場に出荷が集中をしている実態がございます。そのとばっちりといいますか、地方の卸売市場、集荷力は低下をして大都市の卸売市場から転送をされているというようなことで、コストの面でも取扱高の面でも大変経営が悪化しているということでございます。
 ただ、おっしゃいますように、その地方に卸売市場がなければ生産者、出荷者困るわけでございます。私ども、ですから合併だとかそういうものを進めるときに、単にその取扱量だけではなくて、そういう立地といったようなものも勘案しながら進めていきたいというふうに思っておりまして、現在、瀬戸内のネットワークだとか、瀬戸内海を挟みました複数県がネットワーク化しているだとか、奥州アライアンスということで奥州の市場がネットワーク化して、共同して集荷・販売力を強化しようとするような動きがございます。
 私どもは、こういう手法を含む市場の再編ということを進めていきたいというふうに思っておりまして、いろいろな予算を活用しながら、決して地方の卸売市場が衰退しないように、その集荷・販売力の強化ということを進めていきたいというふうに思っております。
○紙智子君 具体的なやっている策というのはあるんですか。
○政府参考人(須賀田菊仁君) ネットワークに関しましては、その推進、実証を進めていくということ、それから、先ほど申し上げましたように、合併をするといった場合には卸売施設の整備事業で支援をするということ、こういう用意はございますけれども、基本はやはり自主的市場間の話合いを通じてあるべき方向を模索をしていただきたいというふうに思っております。
○紙智子君 今ネットワークの話がされているわけですけれども、まあ地方でいろいろ努力もされているわけです。
 例えば、札幌市でいいますと、地産地消の取組として、市内の農家が定められた生産の基準に従って収穫した野菜を札幌中央卸売市場を通じてその日のうちに小売店に届ける「朝どりとれたて便」というのがあるんですけれども、そういう形で実施しています。それから、ほかのところでいっても、小規模農家が生産した朝取りの野菜を市場から車を出して集荷して回ると。午後の競りに掛けて地元の小売店で販売する仕組みを取っているわけです。有機栽培や地域特有の伝統野菜の産地づくりと結び付けてやっていると。
 取扱量を増やしている市場もあるというふうに聞いているわけですけれども、やっぱり地産地消ということが、重視しようということを言われている中で、そこをやっぱり本当に重視するのであれば、こういう地方の市場に対して、こうした地場流通を支えて、特色あるやはり市場づくりの取組を大いに支援することが必要だというふうに思うんですね。
 やっぱり地域の地場流通を確保するために、卸売市場が取り組む零細生産者に対する庭先の集荷とか、あるいは午後の競りの導入とか、短時間の流通などの取組に対する助成、これについては思い切ってやっていく必要があるというふうに思うんですけれども、これ、何かやっておられるんでしょうか。
○政府参考人(須賀田菊仁君) 最近、市場の機能を活用した地産地消、先生言われましたけれども、あと兵庫だとかあるいは広島の竹原だとか、先ほど私申し上げましたが、瀬戸内だとかで取組で成功して取扱量を増やしている例もございます。
 私ども、こういう活動を支援をするために、地方卸売市場連携物流最適化推進事業というのを用意をいたしまして、地方卸売市場の集荷力の向上等を図るための最適物流システム確立の実証というものにつきまして予算措置、総額で七千五百万ほどでございますけれども、用意をさせていただいているわけでございます。
○紙智子君 今七千五百万円付けてやっているという話ですけれども、せいぜい数か所ですね、場所でいえば。やっぱりこういうのをもっともっと拡大していく必要あるというふうに申し上げておきたいと思います。
 それから次に、仲卸の経営健全化についてなんですけれども、開設者はこの仲卸の健全な経営を確保するために業務規程で財務基準を定めるというふうにしていますけれども、前回の改正で卸売に導入したような一律の基準でやれば多くの仲卸が早期是正措置で統合や廃業が迫られることになると、そういうふうに心配するわけですけれども、これはどうでしょうか。
○政府参考人(須賀田菊仁君) 先生のおっしゃるとおり、仲卸業者の数は卸に比べますと相当多い、そして市場によりまして経営形態、経営内容も著しく違っているということでございまして、全国一律にやったんでは確かに先生おっしゃるように不平等のようなものが生じてくるというふうに我々も思っておりまして、こういう各市場ごとの実情を踏まえて、開設者が業務規程で基準の内容や水準ということを決定するというふうにしております。
 私どもも、単に任せるぞというだけではなくて、ガイドラインができるならば作りまして、そういう財務基準の設定が円滑に進むようにしたいというふうに思っている次第でございます。
○紙智子君 仲卸は個人経営が多いですよね。零細な業者がほとんどなわけですけれども、東京の中央卸売市場では、今日、新聞に出ていましたけれども、五割が赤字という状況ですよね。
 健全化のための対策が必要なことは言うまでもないんですけれども、仲卸の経営悪化の要因というのは、やはり今の不況の影響というのがまず第一にあると思うんですけれども、農産物の価格の下落、それから大手スーパーなどの取引が増えてその支払が遅れたりする、延びたりする、それから低価格の納入や不当返品などの優越的な地位の濫用ということも影響していると思うんです。バイイングパワーによる不公正な取引の押し付けもあると。その中で早期是正だけが実行されるようなことになれば、これは廃業につながっていくというふうに思うんです。
 午前中の大臣の答弁の中で、公正取引月間を設けるというお話があったかと思うんですけれども、現在仲卸業者が懸念しているのは、やっぱり消費税の総額表示、これに伴う問題が一番やっぱり大きな今問題になっているわけですね。四月から消費税の総額表示が実施されることに伴って、量販店などからの値引き要求とか納入伝票などの変更の負担がすべて納入業者に掛かると。納入業者に対する量販店の横暴な要求がされているということが公取の調べでも明らかになっているわけです。
 仲卸組合の人の話聞いたんですけれども、総額表示をめぐっては業者の取扱いというのは一様じゃないと言うんですね。例えば、今まで百円のものなんだけれども、総額表示で百五円だというふうにやった場合に、上がったように見られないために百円で表示して、その分、じゃ五円はどうするかというと、まあ自助努力でそれだったらいいけれども、問屋さんの方に仕入れ値を九十五円にしてくれという形で言われると、我々卸売、仲卸の業者というのは利益率でせいぜい七%、八%の世界だと、そこに五%持ってくれと言われるのは本当にきつい話なんだということを言われているわけです。
 しかし、こういうことが実際には広くやられていることも予想できるということなんですね。だから、実際スーパーで引下げ競争も始まっているということで、報道もあるわけですけれども、農水省としてやはりこの仲卸の実態を調査すべきでないかと。
 これ、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(亀井善之君) 昨年十二月に食品流通分野において、いわゆる納入業者へのしわ寄せが行わない等の適正な総額表示が行われるよう関係団体に指導文書を発出しております。
 また、公正取引委員会は、優越的地位の利用、濫用、不当表示等の行為が行われないよう監視し、違反する行為につきましては厳正に対処するとの考え方でおるわけでありまして、この違反行為が行われていないかどうかを把握するために調査を行い、問題のある大規模小売業者につきましては指導を行うとともに、その改善内容につきましての監視をすることとしております。
 これまで量販店等のバイイングパワーに起因する不適切な取引が報告されてはいないわけでありますが、農水省といたしましては、今後、仲卸業者に量販店の取引における納入条件を中心とした実態調査の中で、総額表示の導入に伴う取引実態について把握をしてまいりたいと、このように考えております。
○紙智子君 その把握というか、調査の中身についてなんですけれども、私、やっぱり公取がやっているように、固有名詞でつかんで具体的に是正できると、そういうふうにしなきゃいけないと思うんですよ。一般的に聞くだけだったら是正掛けることできないと思うんですね。仲卸は今後の引取りを考えるとやっぱり強く言えないわけですね。この後また差し替えが出てきて、もうおたくとはやらなくていいですなんて言われたら困るわけですから、なかなかやっぱり弱い立場で、言えないという現状にある中で、これは農水省としてはやっぱり実際是正につながるような、そういう形でやっていただきたいというふうに思います。
 それと、これはまた別なんですけれども、札幌市の水産の市場で、天然ガス使用の構内運搬車を全国に先駆けて導入しているんですね。これが助成が今年で切れるということで、市場関係者は来年以降の助成を継続を求めているわけですけれども、環境にも優しい、クリーンエネルギーとしてこれからの市場でも普及を進めていきたいということでもあって、東京は電気ですかね、電気でやっていますけれども、農水省としても、この電気や天然ガス使用の舎内運搬車に対する助成を是非要望したいということなんですけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(須賀田菊仁君) 先生おっしゃられました札幌市の中央卸売市場、これどうも札幌市の市単の予算で天然ガスを燃料とする場内運搬車を導入したと聞いております。
 私どもも、こういう動きは品質管理の高度化だとか環境に配慮した市場運営に資するということでございますので、事業協同組合、市場内の業者が構成している、事業協同組合がそういう運搬車の整備を行って、貸し付ける場合に、その整備について一定の助成をしたいという事業を発足させております。
○紙智子君 済みません。それじゃ、急いであと二つやりたいんで。
 特定農産加工法なんですけれども、この加工法は農産物の輸入自由化の影響を受ける加工業者に対して経営安定のための支援を行うということなんですけれども、この支援措置ですね、対象加工業での国産原料の利用率の引上げにつながっているかどうかと。つなげるべきだというように思うんですけれども、これ、いかがでしょう。
○政府参考人(須賀田菊仁君) この特定農産加工業は、知事が地域農業等に資するような取引の仕方をしている場合に認定して融資するということになっております。
 具体的な要件を、利用率を課しているわけじゃないわけですけれども、融資されたところの業界の利用率はずっと上がっておりますので、やっぱり地域によって実情が違いますので、この仕組み中で利用率の向上につながるように期待をしております。
○紙智子君 認定計画書というのを書いてもらってやると思うんですけれども、この計画書見ますと、国産原料は書くことになっているんですけれども、輸入原料は書くことになっていないんですね。だから、実際には国からお金が出ても、国産原料が増えるのは分かるにしても、増えている率は分からないんですよ。だから、そこは今後の中で、やっぱり利用率を引き上げられるような指針を農水省として示すべきだということをちょっと申し上げておきたいと思います。
 それで、あともう一つ最後に、質問なんですけれども、小麦の問題なんです。ちょっとこれ法案とは少し違うんですけれども。
 それで、具体的に言いますと、今、北海道の春まき小麦、ハルユタカという小麦なんですけれども、パン用の小麦として人気が上がっているんですね。しかし、この春まきの小麦というのは雨に弱いと。すぐ穂発芽になっちゃうんですね。それで、リスクが大きい割に実入りがないということで生産が増えないと。ところが、現在、技術的な努力がされていて、今徐々に生産が増えて、何というんですか、雪が降る前にまいておいて、雪が解けるとどんどん成長してきて、雨が降る前に刈取りできるんですね。それで被害に当たらないということで徐々に今上がってきているんです。
 それで、製粉会社では地産地消にこだわって、道産小麦ということでこだわって商品開発をやってきているんですけれども、やっぱり一番大きい問題は、一般的なめん用、めん用というか、めんのための小麦、それからパン用といったことでは単収にも格差があると。それで、まだ現在の農産物検査の規格も問題があるということなんです。
 つまり、今の規格でいいますと、めん用に重きが置かれているものですから、そのパン用の春まき小麦については、消費者から幾ら人気があって、もう本当に引く手あまたというか、うちにも欲しいという話があるんですけれども、あっても、色あせがあるということで、等級検査では一等麦というのはほとんど皆無なんです。大体二等か規格外に全部なっちゃうんですね。だけど、パンを作る人は、見掛けというのは関係ないんだと、中身の問題なんで、やっぱり味がいいわけだから、そういう意味では規格についても見直しできないものなんだろうかと。やっぱり実需者の求める春まき小麦の品種を作付けする生産者をもっと支援してほしいという声が出ていて、経営安定金、等級の見直しを要求してきているわけです。
 それで、パン用小麦が普及するように、その実態に合わせて麦の格付の見直しをすべきではないかと。独自の、パン用で言えば独自の規格を設けるなど改善できないかということなんですけれども、これについてお願いします。
○委員長(岩永浩美君) 時間が来ています。簡潔に御答弁ください。
○政府参考人(須賀田菊仁君) 確かに、先生言われたように、現在の検査規格はめん用の小麦とパン用の小麦、一緒です。パン用の春まき小麦は、検査所において、やっぱり雨に当たる等で色あせで一・二%しか一等がありません。これまでもいろいろ検査規格工夫してきましたので、生産、流通の関係者の意見を踏まえて、必要があれば春まき小麦の特性に即した検査規格の見直しということを検討していきたいと思っています。
○紙智子君 終わります。