<第159回国会 2004年1月28日 農林水産委員会 第1号>


平成十六年一月二十八日(水曜日)   午後一時三分開会

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本日の会議に付した案件
○国政調査に関する件
○政府参考人の出席要求に関する件
○農林水産に関する調査
 (牛海綿状脳症問題に関する件)
 (高病原性鳥インフルエンザ問題に関する件)
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○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 まず最初に、BSEの問題から質問いたします。
 昨年の十二月に、十二月二十三日、アメリカでBSEが発生いたしました。調べてみましたら、この一年間だけでもう危険部位である牛の脳が四十キロ日本に入っていて、うち半分以上が消費されていたという大変ゆゆしき事態が明らかになりました。九九年以降、EUでは、危険部位を取り除いていない、削除していない牛肉については輸入はしないと、こういう措置を取ってきた。その対策と比べますと、日本は余りにも差があり過ぎるというふうに思うわけです。これは、やっぱり責任の所在ははっきりしないといけないというふうに思います。
 日本の米国への調査団が行って、戻ってきて報告書を出しました。そのまとめの中にありますけれども、今後米国においてBSEが発生しないという保証はないと書いています。私は、率直に言いまして、今初めて分かったことだろうかというふうに思いました。昨年の五月、カナダでBSEが発生したときに、本委員会でも私もそのときにカナダとアメリカとは流通があるんだということを指摘していましたし、そのほかにもいろいろ情報はあったというふうに思うんです。
 昨日、衆議院の農水委員会があって、我が党の高橋千鶴子議員が、農水省が二〇〇一年から取り組んできたこの米国でのBSE汚染の危険性を評価するステータス評価、この問題をめぐって米国に質問状を送って回答を得ていると。米国からいつ回答があって、それについての扱い、これ技術検討委員会に出したのかどうかというふうに質問をしているわけですけれども、きちんと答えていないですね。私、これ大事な問題だと思いますので、再度回答を求めたいと思います。
○政府参考人(中川坦君) BSEのステータス評価でございますけれども、確かに平成十三年の三月から評価方法の開発、それからアメリカを含みます主要な輸入先国に対しましての評価作業を行ってまいりました。具体的には、アメリカを含めましてBSEの未発生国を対象にいたしまして、そのそれぞれの国において発生国からBSEが侵入した可能性だとか、あるいは肉骨粉の給与の状況、それからサーベイランス体制の整備状況といったことを、国ごとにその情報に基づきましてステータスの評価をするということで作業を行ってきたものでございます。
 それで、今御質問がありましたように、各国に質問状を送付をいたしまして、平成十三年の五月に各国から回答を得ているところでございます。さらに、この回答、一回限りでは十分なものではありませんので、再度追加の質問票を送付をしたりというふうな作業も行ってきたところでございます。
 そういう作業を行ったその後でありますけれども、昨年の五月にカナダで新たなBSEの発生ということが確認をされました。今回の作業は、言わばBSEがそれまで発生してないところの国を対象にして、例えばEUなどからBSEの発生の原因になるいろんな物質がどういうふうにその国に入っているか、入っているとすればどの程度であるか、そういうデータに基づいてやっていたということでありますが、今回、今回といいますか昨年の五月に、それまで清浄国であったカナダで新たなBSEの発生があったということで、言わば根拠になります、ベースになります前提が崩れてしまったということで、もう一度その作業を見直すという必要があるということで作業を一時中断をいたしたわけでございます。
 こういったステータス評価というのは日本だけではなくてEUでもかねてから行われておりましたけれども、EUにおきましても、この作業はそういった最近の動きを踏まえまして凍結をされているというふうに理解をいたしております。
○紙智子君 じゃ、専門家の技術検討委員会に提出しなかったというのは、要するにその作業の途中でそういうことになったということで出していないということなんでしょうか。
○政府参考人(中川坦君) 検討委員会に出していないということではございません。調査に対します回答、質問票に対する回答はすべて作業検討委員会の方にお出しをしてございます。ただ、昨年の五月のカナダにおきますBSEの発生という新たな事態を踏まえまして、再度この手法等も含めて見直す必要があるということでございます。
○紙智子君 そういう経過で中断しているということなわけですけれども、私は、このステータス評価の過程であるという、そういう見直しを掛けなきゃいけないということが言われているんですけれども、しかしその間にも様々な情報は農水省、入っていたと思うんですね。
 例えば、米国の二〇〇〇年の会計検査院、ここで出されている報告の中でも、肉骨粉の使用禁止措置が不徹底であると。つまり、複数回にわたって違反が指摘されているにもかかわらず何ら強制的な措置が取られていないとか、あるいはFDAの立入検査に欠陥があるとか、そういうことを指摘していたわけです。で、BSE対策は不十分だというふうに評価している。これは農水省のホームページでも掲載しているわけですよね。
 農水省としては、この今言ったアメリカの会計検査院の報告については、いつ知って、どういうふうに受け止めて、どういうふうに扱ってこられたんですか。
○政府参考人(中川坦君) 米国会計検査院の二〇〇〇年の報告におきましては、今、先生の御指摘がありましたように、FDAの行っております飼料規制について十分遵守がされていないということ、それから対策を強化する必要があるというふうな勧告が出されたというのは承知をいたしております。当時、アメリカではまだBSEが発生をしておりませんでしたけれども、アメリカにおきましては、一九九一年におきましてBSEの発生国からの生体牛ですとかあるいは牛肉、肉骨粉の輸入を禁止をいたしておりました。また、九七年からはいわゆるフィードバンが実施をされていたということでございます。
 日本は九六年に通達でこういったものの使用の自粛といいますか、そういったこともやっておりますけれども、二〇〇一年、日本におきましてBSEが発見をされるまでは、むしろアメリカの方が具体的なBSE対策は残念ながら先々やっていたというのが実態でございます。その後、二〇〇一年の九月に我が国でBSEが発生をした、それを受けて急遽、全頭検査ですとかあるいは特定危険部位の除去、あるいはフィードバンといったような、さらには死亡牛の検査といったような、アメリカに比べましても徹底をしたBSE対策を整えたということでございました。
 そういう状況にありますので、昨年の十二月にBSEがアメリカで発生をするまでは、やはりアメリカに対しましてそういった発生国でないところに一定のBSE対策が行われているという理解をしておったということでございます。
○紙智子君 会計検査院の報告をいつ農水省では分かったんですか。
○政府参考人(中川坦君) 具体的な日にちまではございませんけれども、会計検査院の報告がなされた後、そう時間を置かずに承知をしていたものというふうに思います。
○紙智子君 実際には二〇〇〇年にこれは出されていたと。いずれにしても、分かった段階で非常に問題があるんじゃないかということを、普通ならやっぱり問題にするということをしなくちゃいけないというふうに思うんですよ。やっぱり、どう受け止めてどう扱うのかというのはその都度求められているわけで、結局、今の話ですとそういう、アメリカはかつては日本よりも進んでいたということで特には検討しなかったということなんでしょうか。
○政府参考人(中川坦君) 二〇〇〇年の会計検査院報告は二〇〇〇年の九月にたしか出されたというふうに思います。それから日を置かずに承知をしたというふうに理解しております。したがいまして、まだこの時点では我が国においてもBSEの発生がない状態であります。その時点におきまして、アメリカにおいてはある程度のBSE対策を行っていた、そういう理解でおったと思います。
○紙智子君 ちょっと、全然問題だというふうに思うんですよね。
 やっぱり、非常に緊張してとらえるということでいいますと、もう一つちょっと聞きますけれども、米国の農務省が二〇〇三年の三月に発表した報告では、機械で解体する先進的食肉回収、AMRですね。これで処理された牛肉を調べたところが、約三五%で脊髄などの神経の中枢組織が混入していたことが判明していると。これは畜産振興事業団のホームページにも紹介されているわけです。
 農水省は、この問題はいつ把握して、それに対する対応をどういうふうに検討してきたんでしょうか。
○政府参考人(中川坦君) AMRというものは、高圧で骨を破壊することなく骨などに付着した肉を回収する方法でございますけれども、これにつきまして、先生がおっしゃいましたように、背根神経節等の特定危険部位が回収時に肉に混入するおそれがあるというふうなことが報告をされているというのは、いつ時点というのは私ども現在そういった情報は持ち合わせておりませんけれども、そういった問題があるということは承知をいたしておりました。
 ただ、繰り返し申し上げますけれども、アメリカでBSEが発見をされましたのは昨年の十二月の二十三日、現地時間でございますが、二十三日でございます。それまではアメリカではBSEの発生はないという前提で対応していたということでございます。
 したがいまして、このAMRによります手法につきまして、一部背根神経節等の混入があるという報告は承知をしておりましたけれども、そのことが直ちに問題になるというふうには認識をしておりませんでした。
○紙智子君 EUもアメリカのステータス評価というのをやって出しているわけですよ。二〇〇〇年でしたかね、いやもうちょっと早かったかな。やっぱり国内では二〇〇一年ですね、国内ではもう発生をして大問題になって、その危険部位の問題が大問題になっているわけで、当然そういう様々な情報が入ってきたときにはそれに対しての、どうなっているのかと調べて当たり前じゃないかというふうに思うんですよ。
 これだけじゃないんですね。二〇〇二年の一月に、農畜産振興の情報に、海外情報という形で米国の飼料規制の遵守が不完全だということが出ています。これについては「畜産の情報」というものに出ているわけですけれども、これ自体が日本が行ってきたBSEのステータス評価の手法についての参考文献になっていますから、ですから知らないはずがなかったわけで、日本政府がこういう危険な事実を早い段階で把握しながら技術検討委員会にも報告もしない、そして昨年十二月二十三日にアメリカで発生するまでアメリカからの輸入を続けてきたということは、これは農水省がいろんな情報を本当はいろいろ知っていたのに握りつぶしたと言われても仕方がないんじゃないかというふうに思うんですよ。
 国内でこのBSEをめぐってあれだけ議論してきたわけですよね。そういう中で教訓生かさなきゃいけないというのに、やっぱり反省が生かされていないんじゃないかと言わざるを得ないんですね。国民の食の安全性を最優先にするという立場、ここに立つならば、やっぱりこういういい加減で危機感のない甘い対応でいいのかということを私改めて思うんですけれども、昨日の衆議院のやり取りでもって、農水大臣、亀井大臣はそのことについても自分は承知しないということを言って責任認めていらっしゃらなかったんですけれども、これだけの事実、情報がありながら、まともな対策を取らなかった責任というのはやっぱり否定できないんじゃないでしょうか。大臣、いかがですか。
○国務大臣(亀井善之君) 我が国におきましてもBSEの発生、こういうことでいろいろの、消費者の信頼、こういうことを得るために、食品の安全、安心、こういう面に十二分に対応する、BSEの発生後、いろいろの努力を積み重ねてきております。
 今、いろいろ御指摘の点につきましては、それぞれその対応が、完全にそれができておらなかったか、こういうところあろうかと思いますが、BSEの問題につきましてはそれぞれその対応をしてきたんではなかろうかと、このように思っております。
○紙智子君 その責任はお感じになっているということで受け止めてよろしいですか。
○国務大臣(亀井善之君) いろいろ役所としても、今日までBSEの問題につきましてはそれなりの対応をしてきたわけでありまして、いわゆるその責任と、しかしそういう以上にこのBSE問題につきましては省を挙げていろいろの専門的な分野でもいろいろな努力をして積み重ねてきていると、このように私は思っております。
○紙智子君 なかなか責任は感じているというふうにおっしゃらないわけですけれども、私はやっぱりそこのところが本当に不十分であったならば、これからの対策としても甘いものになってしまいかねないというふうに思うんですね。
 昨年、カナダでBSEが発生したときにも、カナダとアメリカが牛についてはこう流通しているんだと、一体化については私も質問の中で指摘をしましたし、アメリカからの輸入について安全性をクリアするまではやっぱりストップすべきじゃないかということを言いました。しかし、大臣そのとき、アメリカは未発生国なんだという答弁もされて、その後も輸入を続けてきたわけです。
 最初にも言いましたけれども、やっぱりEUとの対応の違いですね。EUはアメリカのリスク評価をもう行っていて、九九年以来、この後、アメリカもそのときはまだ発生していなかったけれども、発生する可能性は高いんだということで危険部位を取り除いてもらうと、それをやっていない牛肉の輸入は認めないということで、独自の基準を設けて安全の対策を取ってきたわけですよ。それと比べてもやっぱり余りにも甘いと。本当にこの甘さを払拭するということなしには、この先の問題もやっぱりかかわってくるというふうに思いますので、もう一度大臣、ちょっとその辺のところははっきりおっしゃっていただきたいと思います。
○国務大臣(亀井善之君) アメリカ合衆国はいわゆるBSEの未発生国と、そういう前提で来たわけでありまして、いろいろ可能なことはそれぞれやってきたつもりでおります。今後、私自身、国民の安全、安心と、この確保に全力を尽くして責任を全うしてまいりたいと、このように考えております。
○紙智子君 その上に立ってなんですけれども、これからの対策ということで、一月二十三日に日本で日米の会合がやられました。その概要が出されているんですけれども、そのやり取りを見ていましても、日本側の主張、全頭検査だという話だとかいろいろされているわけですけれども、その主張に対しては、例えば特定危険部位の除去の対象月齢についてもどうするかという話は相手からはないわけですよね。それから、全頭検査を行うのかどうかということも明確なアメリカ側の回答はないと。先送りになった形になっているわけです。
 しかし、様々な点でアメリカの対策というのは後れているというふうに言えると思うんですね。死亡牛の検査についてもそうですし、これどうするのかと日本の場合も相当議論して、やっぱり本当に感染原因というかそこを調べる上でも、お金も掛かるけれども、しかしやっぱり必要だということでやった経過もありましたけれども、死亡牛の検査、それから機械的処理の問題。それから、肉骨粉についても、アメリカの場合は鳥と豚にはこれは与えてもいいということになっているから、交差汚染という可能性もこれもやっぱり除去できない状況になっているわけです。
 アメリカは、言ってみれば発生国になったのに、余りにもこの対応が楽天的だというふうに思うんですね。そういう中で、日本がこの全頭検査、危険部位の除去を始めとして、日本の国民がやっぱり納得し得る、そういう条件クリアしなければ輸入できないと、そういう日本の態度を明確に相手に伝えるべきですし、その立場を断固として貫くべきだというふうに思うんですけれども、どうでしょうか。
○国務大臣(亀井善之君) 再三申し上げておりますとおり、ベネマン農務長官にも私は、何といっても両国の最大の懸案、それは安全、安心、これの確保が大前提であるわけでありまして、そして全頭検査、また特定危険部位の問題、このことも十分強く私は長官にも申し上げておることでございまして、やはり国民の、消費者の信頼、こういうものが得られなければならないことでありますので、引き続きその努力をいたしてまいりたいと、このように考えております。
○紙智子君 それじゃ、次に鳥インフルエンザの問題について質問いたします。
 高病原性鳥インフルエンザの感染拡大ということではこれは止まらない状態になっていて、過去に例を見ない広域同時多発という言葉が使われる様相を呈してきているわけです。WHOも歴史上前例がないと、そういう事態だというふうに指摘しているわけです。人が感染して死亡した例も出ている人畜共通感染症ということであるだけに、やっぱり警戒心を持った対応が求められているというふうに思うんですね。
 一月の十六日に実は我が党で国会議員団として山口県の阿東町に調査に入りました。それで、現場で聞き取りを行ったんですけれども、現場では初めての事態で非常にこの対応に戸惑いながらも、しかし不眠不休で蔓延防止のために必死に取り組んでおられました。
 それで、農水省はBSEの教訓から昨年の九月に高病原性鳥インフルエンザの防疫マニュアルを作成していたと。このことで迅速な対策が打てたというのは確かだというふうに思うんです。しかし、今回、実際入ってみまして、その不徹底さも露呈されたというのも事実だというふうに思うんですね。
 昨年六月時点で各県への説明会をやったということなんですけれども、この説明会をやりながらも、マニュアルで各県に義務付けられている、その最も基本になるモニタリング検査の報告が二十数県しかされていなかったということですよね。山口県も含めて半数以上の県からまだ上がっていなかったという状態だったわけです。
 それで確認しますけれども、山口県を含めてこの未報告の県に対して、九月出されていますから九、十、十一、十二というふうになるわけですけれども、これは点検をされたんでしょうか。
○政府参考人(中川坦君) 九月に策定をし配布をいたしましたこの防疫マニュアルに基づきます全国のモニタリングの実施状況でございますけれども、一月上旬の時点では十数県でありましたけれども、改めまして各県の実施状況を確認しましたところ、現時点におきまして四十一県で実施をされております。検査結果はすべて陰性でございます。
 幾つかの県におきましては農場の協力を得るためのその調整に少し時間が手間取ったというふうなところもありまして、一部遅れたところがありますけれども、現時点におきましては、先ほど申しましたように、大半の県ではモニタリングの調査も行われているというふうに思っております。
○紙智子君 当初はやっていなかったんですよね、その点検というのは特に。そうですよね。私は、やっぱりそこのところに危機感の、ないとは言いませんけれども、弱さが表れていたというふうに思うんです。
 それで、農水省はやっぱり家畜だけ見ていればというふうな縦割り意識がないのかということを、私は率直に言って人の影響ということを軽く見ることにつながっていたんじゃないかというふうにも思うわけです。やっぱり人にも感染し得るんだと、そういう危機意識を持った対応が必要ではないかというふうに思うんです。
 今、一番危惧されている問題というのは、人から人に感染する新型インフルエンザウイルス、これに変化するおそれですよね。もうそうなる前に食い止めなきゃならないということだと思うんですけれども、これが一番やっぱり本当に怖いというふうに思うんです。
 それで、今回、インフルエンザの発生農場の死亡鶏について、これ死亡鶏は全部検査を行っていると思うんですけれども、三十キロ圏内の他の農場の死亡鶏については鳥インフルエンザの検査をやっていなかったわけですね、行った場所で聞きましたけれども。それで、発生農場以外の死亡鶏についてもこれは検査すべきじゃないかと。
 一つの農場で、今で言いますと、本当に規模が大きくなっていて、何十万羽という規模で飼っているところもある中で、聞いてみますと、毎日毎日とにかく十羽とかそのぐらい死ぬというのは当たり前の感覚になっているわけですよね。だから、それだけに積極的に死亡鶏の検査を、サーベイランスと言うのかな、やっていく必要あるんじゃないかというふうに思うんですけれども、この点、農水省として指導すべきじゃないでしょうか、いかがですか。
○政府参考人(中川坦君) 移動制限区域内の農場におけるチェック体制の御質問でございますけれども、この高病原性鳥インフルエンザといいますのは、症状が突然出て非常に高い死亡率をもたらすというふうなことでございますので、飼養者の方が見ていれば、きちっと注意をしておれば、臨床症状の異常によりまして把握が可能だというふうに思っております。そういうことからしますと、この三十キロ圏内の三十戸の農家の方々のところからはまだ異常は確認をされていないということでございます。
 もちろん、この移動制限区域内におきまして、これからも清浄性の確認ということはやっていく必要がございます。ただ、これは、二十八日間の移動制限の期間内におきまして、実際にほかの農場におきまして鶏がこのインフルエンザに感染しているかどうかというのは、やっぱり抗体などで検査をする必要がございます。そうしますと、感染をしてからその鶏に抗体ができるまで一定の時間がございます。ですから、実際にこの発生農場において処分などが全部終了した二十一日の時点から起算をいたしまして、しかるべき時間がたったところでこういった抗体検査等を行うというふうにいたしておるところでございます。
○紙智子君 これからの防疫の対策として、やはりモニタリングの検査を完全実施という問題と、それから報告、今四十一県まで来ているというんですけれども、あと五県が上がっていないわけですから、そういう意味ではやることも必要ですし、それからやっぱり一県当たり一か所十羽というふうにモニタリングというふうになっているんですけれども、これ少なくないかというふうに思うんですね。
 今、アジア全域で本当に同時多発というふうな言葉でもって広がってきているだけに、毎月やっぱり一回はそういう検査もし、かつ検査の精度を上げていくといいますか、精密にやっていくということでもその見直し必要じゃないかということを思うんですけれども、ちょっと次の質問あるので、短くお願いします。
○政府参考人(中川坦君) まず、専門家の方々の意見を伺いますと、この鳥インフルエンザにつきましては、臨床症状の有無を基本にして判断をするというのがオーソドックスなやり方だという御意見をいただいております。そういうことで、これを基本にしてやっていきたいというふうに思います。
 モニタリングの数につきましては、これはかなり統計的な根拠があるわけでございますけれども、一定の確率で感染していた場合にそれを発見する、そういった統計的なモデルに基づいて、一県一農場当たり十羽というのは、専門家の方々の御検討の下にこれは定められているものでございます。
○紙智子君 それじゃ、ちょっと補償問題で、次、大臣にお聞きしたいんです。
 それで、先ほど来この問題も話になっていまして、結局、殺処分については、発生農家については補償されるわけですけれども、移動制限を受けている三十キロ圏内の農場は融資だけで、あとは何の補償もないということなわけで、それに対して、先ほど経営支援についていろいろこれから相談して判断するんだという話があったんですけれども、これはあれですか、融資以外の支援も考えているということで理解してよろしいんでしょうか。
○国務大臣(亀井善之君) 先ほど来申し上げておりますとおり、これらの問題、融資以外の問題と。これらは山口県とも十分いろいろ御相談をさせていただきまして、国としてできることがどうかと、こういうことを検討してまいりたいと、このように考えておるところであります。
○紙智子君 韓国でもこの問題が発生して、そこに対する様々な対策打ってきているようですけれども、約五百の農家や加工業者に、日本円で言うと、昨年から発生しているわけですけれども、合わせて四十一億円、一戸農家当たり、そういうことでもって支援もしていると。
 昨年、百万羽近い処分があったということなんですけれども、そういう具体的な対応も取っていますし、国内においても、これまでも例えば口蹄疫、二〇〇〇年に発生して、北海道、九州で非常に大きな問題になったわけですけれども、このときも実は議論をされていて、やっぱり移動制限掛けられたときに、結局、強い権限でもってそれを抑えるわけで、それによって損害が全部かぶってしまう形になるわけですから、そこに対して何らかの助けていく補償というのはやっぱり必要だというふうに思いますので、是非これは改めて制度化をしてほしいということを要望したいと思うんですが、いかがでしょうか。
○国務大臣(亀井善之君) 十分検討させていただきたいと思います。
○紙智子君 それじゃ、最後の質問になりますけれども、WHOは、一月の十四日に高病原性インフルエンザに感染した可能性のある動物の殺処分にかかわる人員の防御に対する暫定ガイドラインというのを出して、そして二十六日には病気が流行している地域への渡航者に対して動物市場や養鶏場は避けるようにということで勧告を出しています。
 これらの指摘を受け止めてすぐに対応する必要があるわけですけれども、この内容を受けて、厚生労働省と農水省とそれぞれどのような対応をするのか、お聞きしたいと思います。
○政府参考人(田中慶司君) WHOの西太平洋地域事務局は、一月十四日、高病原性鳥インフルエンザに感染しました鳥の殺処分に携わる者について、同疾病の感染防護のための勧告を出しております。
 厚生労働省としましては、翌十五日に、この勧告の内容も踏まえまして、鳥インフルエンザ対策の留意点として、まず、鳥の処分を行う者に対します感染防護の徹底、それから、感染した鳥に接触した者が万が一高病原性鳥インフルエンザに罹患した場合に、人のインフルエンザと同時感染を防ぐために、インフルエンザワクチンの接種、感染した鳥の殺処分に従事しウイルスを吸入するなどのリスクのある者についての抗インフルエンザウイルス薬の予防投与などの事項について、都道府県等へ指示を行っているところでございます。
 また、人への感染が確認された地域への出国者等に対しましては、生きた鳥が売られている市場等への立入りを控えるよう、検疫所を通じました注意喚起を一月十三日より行っているところでございます。
 一昨日、WHOから旅行者に対するアドバイスというものが出されましたので、人への感染事例はないけれども鳥への感染が確認されている地域に対しましてもこの取扱いを拡大するように、昨日、検疫所に指示を行ったところでございます。
○政府参考人(中川坦君) 農林水産省の対応について御説明を申し上げます。
 まず、山口県で今回の鳥インフルエンザが発生いたしました際にも、県におきましては、公衆衛生部局と連携をしながら、農場の従業員の方々あるいは家族の方々の健康状態の管理とか、あるいは作業従事者の感染予防等についての留意はしてきたところでございますが、今回のWHOの勧告に基づきます厚生労働省の通知や、あるいは先般専門家の方々にお集まりをいただきまして家きん疾病小委員会も開きました。
 そのときの助言も踏まえまして、一月の十九日でございますけれども、局長通知を出しまして、一つは、防疫作業に従事をする人たちは防疫の服ですね、衣服あるいはマスク、ゴーグルあるいは手袋といったものを必ず着用し、感染防止に努める、そういうことに十分留意をするということと、それから予防の投薬等につきまして医療関係者の助言を求めるようにといったようなことを各都道府県に通知をいたしました。
 いずれにいたしましても、この問題につきましては、厚生労働省と緊密に連携を取りながら、人への感染防御も含めまして万全の対策を取っていきたいというふうに思っております。
○紙智子君 それじゃ、WHO、FAO、それからOIEと、昨日、この三つの機関がやっぱり人間の健康に脅威だということで共同声明も出しているということなんで、是非危機感を持って取り組んでいただきたいということを最後に述べて、質問を終わります。