<第156回国会 2003年5月27日 農林水産委員会 第12号>


平成十五年五月二十七日(火曜日)
   午前十時開会

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  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○食品の安全性の確保のための農林水産省関係法律の整備に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法案(内閣提出、衆議院送付)
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○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。私も、午前中からの議論に続いて、牛肉のトレーサビリティーシステムの問題で質問をいたしたいと思います。
 このシステムの導入そのものは必要だと思うわけですけれども、衆議院でも議論の最大の焦点になった輸入牛肉の扱いについて、これが、国内流通の六割以上を占める輸入牛肉が対象外とされるということについては、どう考えても問題だと思うんです。
 それで、カナダでBSEが発生する事態になったのに、大臣は、先日の農水省設置法の参議院の本会議のこの質問のときにも、それからまた今日の午前中の審議の中でも、相変わらず、牛肉の輸出国は未発生国でありBSEという点では安全だと、だから原産国表示で水際の対応で十分で、トレーサビリティーは必要ないと、同じ答弁を繰り返しました。
 未発生で安全であったはずのカナダで既に一月に発生していたと、しかもその間ずっと輸入をされていたという事態になっているのに、未発生だから安全なんだということ、どうして言えるんですか。
○国務大臣(亀井善之君) 先ほど来御答弁申し上げておりますとおり、このトレーサビリティーシステム、これはBSEの発生と、こういうことから、国内の牛肉につきまして、国民の、消費者の皆さん方の不安、こういうことを払拭をする、こういう視点に立ちましてスタートしておるわけでもございます。
 BSEの発生を踏まえて、消費者の安心を確保すると、そして生産履歴の伝達を義務化するわけでありますが、この輸入につきましては、先ほど来答弁申し上げておりますとおり、BSE未発生国、そしていわゆる水際でのいろいろの措置、さらにはJAS法の原産国表示と、こういうような視点から、またさらには、先ほどもお話し申し上げましたとおり、SPS協定の問題あるいはTBT協定の問題等々、やはりその差別化等々につきましてはいろいろ課題もあるわけでございまして、現行の、まず国内で、そして輸入牛肉につきましては、カナダの場合も検疫措置によりまして、これは家畜伝染病や食品衛生法に基づく検疫措置によりまして直ちに停止をしたわけでありまして、現状、この輸入牛肉の安全性を水際での各種の検疫で、そして輸出国の証明と、こういうものが担保されていると、こういう視点で、またこの輸入牛肉に際しましては、先ほどもお話し申し上げましたとおり、原産国の表示、そしてさらには、このことにつきましてはEUでも域外からの輸入牛肉への個体情報の伝達は義務付けていない、こういうような状況もあるわけでありまして、まず未発生国というようなことで、先ほど来答弁しておりますとおり、今の状況ではその必要はないんではなかろうかと、このように思っております。
○紙智子君 全然答弁になっていないんですよね。それで、ここに本当に与野党を含めてみんな疑問を持っているわけですよ。答えになっていないと思うんです。
 そして、これは大臣、米国自身も言っているんですよね。米国の、米の、アメリカの会計監査院、ここが出している、国内のBSE対策の評価レポートというのを発表していますよ。この中で対策の不十分さを指摘しています。輸入時の検査の不備や、農場での死亡牛のサーベイランス対象数が少ないこと、それから保健社会福祉省食品医薬品局による飼料規制の遵守、確保が徹底されていないと、この理由を挙げているわけですね。アメリカ自身がこのBSEの発生の危険性を指摘して、だから国内では各関係省庁に対して措置の強化を求めているんですよ。しかも、二〇〇一年の七月には、アメリカの食品医薬品局、ここが発表した監察結果によりますと、多数の肉骨粉製造業者や飼料工場がBSEの防止のルールに違反しているということを指摘しているんですよ。
 これでどうして安全だからトレーサビリティー必要ないということを言えるんですか、おかしいじゃないですか、どうですか。
○政府参考人(須賀田菊仁君) ただいま提案申し上げております牛肉のトレーサビリティー法案、まず我が国において、おととしの十月十八日から全頭検査体制が整って、特別部位は除去されるということで、国産牛肉は安全なものが食卓に供されるシステムができたわけです。しかし、それでも偽装表示とかそういうのがあって消費者の不安が払拭できないと。だから、国産牛肉の生産履歴が消費者の手元まで届くシステムを、EUのようなトレーサビリティーシステムをまねしながら考えろという御指摘があったわけでございます。そこで、耳標その他をどんどん付けまして、耳標等に化体をされている個体情報が消費者の手元まで伝達されるシステムとしてこの法案を提案を申し上げているわけでございます。
 一方、BSEの発生ということにつきましては、これはもうこういう問題ではなくて、検疫で措置をしなくてはいけない問題でございます。カナダ等でBSEが発生すれば、食品衛生法に基づく検疫、動物検疫に基づく措置に基づいてきっちり輸入停止等々の措置を取らないといけない。たまたま、このカナダの場合は、一月三十一日に病気になって五月まで感染の確認が遅れたという事情あるわけでございますけれども、これはもうカナダ国内の問題でございまして、それに対してはきちっと検疫で、検疫でやらなければならないという問題だと思っております。
 この現在提案申し上げておりますトレーサビリティーは罰則による義務化をしておるわけでございまして、強制的な規格ということに国際協定上はなるわけでございます。
 例えば、豪州はBSEは発生していないわけでございます。耳標も付けておりませんし、全頭検査もしていないということでございまして、この豪州に対して例えばこの強制規格を義務化するということになりますと、それは、豪州からはこれをやらないと輸入をしないという貿易制限措置になるわけでございます。そうすると、この国際協定上のTBT協定に、正当な目的達成のために必要以上の貿易的制限を取ってはならないと、こういうふうに規定があるわけでございまして、豪州の立場からすれば、BSEから安全であるということは、発生していないんですから、豪州産という原産国表示以上のものを求められることはこれに抵触するおそれがあるだろうということで、輸入牛肉は対象にしていないということでございます。
○紙智子君 全然やっぱり質問したことに対して答えていないですよ。質問しないことに答えておられるんですよね。
 しかし、そういう中でも、貿易の障壁になるという話をされましたけれども、要は、国民の安全が大事なのか、どっちが大事なんだということが問われているんですよ。実際にこの間、日本にも輸入牛が入っている可能性があるわけですよ、BSEの。そのことに対して、本当にずさんな事態だと言わなければならないと思うんです。
 私は大臣に質問したんですよね。大臣は水際の対応をしてきているんだという話をされました。それから、この間の答弁の中で、輸入牛肉について我が国と同じような検査しているんだと、各国、ほかの国もですね、検査証明が付いているということを言われました。しかし、これはやっぱり実際を知らない御発言だと言わざるを得ないんですね。BSEについて何が証明されているのかということを知っておっしゃっておられるのかというふうに思うわけです。
 カナダで、じゃ日本と同じように全頭検査やられているのかといったら、そうじゃありませんよね。結局、未発生国の扱いだからサーベイランスしかやっていないわけですよ。そして、我が国に輸出されてきている牛肉についていえば、一頭一頭、これはBSEかどうかということで検査をしたものが出荷されているわけじゃないですよ。輸出国からの検査証明の内容というのは、結局BSEに関しても、この肉は未発生国の牛肉であるというのが書いてあるだけの話で、中身は全然検証されていない中で入ってきているわけです。そして、これはほかの未発生国も同じですね。
 だから、大臣がこの間答えておられるような、我が国と同じなんというのは全く違うと。一体どうなっているのかと。水際の対応というふうに言うわけですけれども、安全だという何らの証明も、これ、ならないわけじゃないですか。いかがですか。
○政府参考人(須賀田菊仁君) BSEが発生すれば、検疫措置で輸入停止措置を取ると。発生していない国は、BSEフリーということは推定できますので、原産国表示、豪州産なら豪州産、米国産なら米国産という義務的表示をもって、それ以上のものを求めるというのは国際協定に抵触するおそれがあると、この間来、申し上げておるわけでございます。
○紙智子君 同じことの繰り返しをやらないでいただきたいんですよね。
 我が国の牛肉の輸入の五四%を占める部分はアメリカから来ていますね。このアメリカにはカナダから、二〇〇一年には百三十万頭、二〇〇二年には百六十八万頭と、生体で牛が入ってきているわけです。しかし、アメリカから日本に輸出されている牛肉について、それがカナダで生まれた牛なのかどうかということは、トレーサビリティーがなければ追跡は不可能ですよね。ところが、このカナダからのBSE発生が明らかになった今の時点においても、農水省からは、結局米国に対しては、原産がカナダ産と分かったものは輸出しないでほしいとお願いしているだけですよ。これでは分からないまま大量の牛肉が引き続きアメリカから輸入されることになるわけじゃないですか。
 分からないという場合は、これもストップするというのは当然だと思うんですよ。それをやっぱりやらないで進めるというのは、本当に私はいい加減だと言わざるを得ないんですね。
 アメリカからのこの輸入牛肉は、カナダと同様の危険性があるということではないんですか。その辺の御認識を、ですから、大臣。
○国務大臣(亀井善之君) 現在、米国はカナダからの生体牛、牛肉等の輸入停止措置を取っているわけでありますが、更に我が国は米国に対しまして、対日輸出にカナダ由来のものを避けるよう要請をしているところでありまして、BSEが発生なく、またカナダからの輸入を停止している米国に対して、できる限りその侵入防止対策まで求めているところでもございます。
 米国からの輸入牛肉については、特定の部位の除去の確認を行うこととしており、他の諸国でもここまでの措置を要求しているところは今のところないんではなかろうかと。関係者をカナダあるいはアメリカに出しまして、その辺のことを十分対応するように努力をしたいと、こう思っております。
○紙智子君 アメリカに要求しているから、じゃアメリカは、はい分かりましたというふうに言っているんですか。
 私は、やっぱりアメリカが一体その牛がどこから来ているのかということを追求するのは当然のことだと思うんですけれども、しかし問題は、結局どこまでトレースして追跡できるか分からないわけですよ。だから、こういう事態になるから困る、困るから、だからトレーサビリティーが必要だということになっているんじゃないんですか。
 私は、やっぱり改めて、今本当に与野党席同じ思いだと思うんですよ。ですから、そうである以上、本当にこの修正を、輸入牛肉も含めると、対象に入れると、衆議院では否決されましたけれども、これ農水省が邪魔しないで、きちっとやっぱりやっていただきたいということを申し上げたいと思います。
 それと、BSEの検査検討会の座長さん自身、小野寺氏も言っていますね。これまで二万頭ほどアメリカでは検査しているんだけれども、飼養頭数からいえばまだ少ないと。米国なども検査の枠を広げることになれば注視した方がいい、注視というのは注目するということですけれども、指摘しているわけです。
 それで、須賀田生産局長は、この制度をやるときに、第一の目的は消費者の安心なんだというふうに答弁されていたわけですよね。それであれば、アメリカもいつ発生するか分からないんだという立場で対応すべきじゃないですか。トレーサビリティーの適用について、消費者の安心にとってもこの問題というのはもう最低限必要だということで対応すべきじゃないですか。
○政府参考人(須賀田菊仁君) 確かに、この法律のトレーサビリティーの目的は、いまだに不安が残っている国産牛肉の生産から屠畜までの履歴を伝達するという目的でやりました。
 アメリカの牛肉につきまして、消費者の中にやはり生産履歴まで知りたいという方もおられると思います。そういう問題につきましては、現行の国際協定上、義務として求めるということはなかなか難しゅうございますので、特定JAS規格ということで任意の、相手方の同意も要りますけれども、任意に参加するシステムというのが構築可能でございますので、それをもって、特定JAS規格ということで対応していくというのが現実的であろうというふうに考える次第でございます。
○紙智子君 この法律はBSEの対応ということを目的としているわけですけれども、事態はカナダでこのBSEが発生したと。現時点で未発生だからといって将来的にも発生しない保証は全くないわけです。そのことが示されたわけですよね。輸入牛肉を対象としなければ、これ、消費者にとっては意味がないんですよね。
 疫学検討チームの座長である山内氏も、消費者の視点から見れば、屠畜場で全頭検査している日本の方がカナダの検査体制よりも現時点で安全と言えるというふうに言っています。
 ましてや、輸入牛肉には、BSEだけじゃなくてO157の問題や残留抗生物質の問題やホルモン剤の使用など、様々なリスクがあるわけですから、消費者に本当に顔を向けるということを言うのであれば、やはりこうした危害に対して商品の徹底回収や原因究明が迅速に行われるようにこのシステムを万全なものとして確立をすべきだし、そのことがやっぱり消費者から望まれているというふうに思うんです。
 そのことを申し上げまして、次の質問に移ります。
 スーパーなどにカットされてパックをされた段階で偽装などの不正が行われないようにしてほしいと、これもある消費者の願いでもあります。そこをチェックするということはシステムが機能するためにも大事だと。
 農水省の言っておられる立入検査、これDNA鑑定による追跡可能性の確保ということなんですけれども、畜産農家戸数で十三万戸、それから食肉卸売店舗で九千店、食肉小売店舗で二万店と、ここを対象に実際の立入検査は地方の農政事務所の職員によって行われるというふうにしているわけですけれども、お聞きしましたら、現在の人数で大体八百人だと。これで実際に、本当に対象が多いわけですけれども、年に何回この検査ができるんでしょうか。いかがですか。
○政府参考人(須賀田菊仁君) 年に何回というのは、まだ計画が立っていないわけでございますけれども、私どもは地方農政事務所の職員約千人でもって、生産段階と流通段階にそれぞれ届け出るべき事項をちゃんと届けているかどうか、耳標がちゃんと装着されているかどうか、それから伝えるべき情報をちゃんと伝えているかどうか、帳簿にちゃんと書いているかどうか、そのようなことを、これ、全部見に行くというわけにはいきませんので、できるだけサンプルを選びまして入っていきたいというふうに考えております。
 そして、もう偽装行為を防止するということが大事でございますので、屠畜場におきまして解体されました牛すべて、これは年間に百三十万頭解体処理されますけれども、その肉片を採取、百三十万頭分の肉片を採取しておきまして一定期間保管をしておくと。小売段階に別途ランダムに立入検査をいたしまして、牛肉を買ってきまして、そこに書かれている個体識別番号とその屠畜場で取っておきました肉片がDNA鑑定で果たして同一なものかどうかというのを照合をすることによりまして、その識別番号伝達の正当性というものをチェックしていきたいと。これは予算措置を付けましてやっておるということでございまして、そういう何重かのチェック体制を整えていきたいというふうに考えております。
○紙智子君 これについてはこれからということなので、必要な人員と予算をちゃんと確保するということが決定的だというふうに思います。
 それから、北海道のホクレンなどでは、この系列の店舗でトレーサビリティーを既にモデルケースでやっているんですね。ここでは飼料履歴も開示しています。北海道のモデル事業の支援を受けて、道が二分の一の助成をやって、昨年の十二月から始まって三月まで集計しているわけですけれども、一千六百万円の予算で行ったということです。ここで、早速アクセスがあって、消費者へのアンケートも行っていると。消費者も初めは興味を持って開くわけですけれども、事故が起こらない、安全だということで信頼するともうそんなに開かなくなるという面があって、最初は増えたんだけれども、今少し減ったという話もしていました。
 それで、こういう形で自主的にモデルでやっているところでさえも、お話を聞きますと、やっぱりコストの商品への転嫁というのは実際にはできないというふうに言っているんです。これは全体に義務付けるということを言っているわけですから、そうなると、経営状況の厳しい中小零細の業者に対して、助成を含めて何らかの対応策、財政政策というのは必要だと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(須賀田菊仁君) 確かに、このシステムを導入をいたしますとコストが掛かるわけでございます。私どもとしては、こういうシステムが導入されると、国産牛肉の、安心な国産牛肉ということで信頼性が向上をして差別化みたいなものが図られないかなということは期待しておったわけでございます。今後もそこは期待しているわけでございます。
 ただ、コストの面におきましては、まず事業者のコスト負担を考えまして、ロット番号、複数の頭数、ロット番号による表示、あるいは簡易なパネルボード、店にパネルで番号を表示する、そういう活用もできますということでコストの負担軽減ということを進めてございます。また、流通段階で、八十万とか五百万とかいうそういうラベルを張る機械等、あるいはソフト開発につきましては、政府系金融機関の低利融資、あるいはリース事業、こういうもので支援をしていきまして、初期の経費の軽減ということに努めていきたいというふうに考えているところでございます。
○紙智子君 これも、この後、状況を見ながら、本当に必要な対策を打っていただきたいと思います。
 それから、登録の際にエラーが多いということは、視察に行ったときにも現場で、家畜改良センターの視察の際に、全国から送られるファクスが一日平均で二万から三万と、その中でエラーが一割ぐらいあるということですから、大体二千から三千件ということになりますね。
 それで、実際の理由ということでは、送られてくる、書き間違いがあったり白紙であったりというようなことなどいろいろ言われていたんですけれども、これに対する解決策というのもありますし、それから、なぜそういう間違いが多いのかということとも関連すると思うんですけれども、生産現場の話を聞きますと、今まで例えば子牛の番号というのは六けただったということなんですね。それで、これは北海道の話なんですけれども、まだ覚えやすく管理もしやすかったんだけれども、十けたということで非常に多いと。しかも、番号がばらばらなものですから覚えにくく間違いやすい。耳標番号を申請するんだけれども、まだ間に合っていなくて、付けないで耳の裏に書いて印を付けているということなんかも含めてぎくしゃくしている状況があると。
 それから、肉牛の生産者の場合に、子供が生まれた場合、出生報告を家畜改良センターに送ると。それからもう一方で、同時に子牛登録証、登録協会に、本部が何か京都だって聞きましたけれども、に申請しなきゃならないと。それから、市場に販売に出す場合には、異動報告をその都度書いて出さなくちゃいけないということで、それぞれのところに書類を書いて出すということがやらなきゃいけないということで、たくさんの頭数を飼っているところなんかはそれを一回一回やらなくちゃいけなくて実務が煩雑になって、一人でやらなきゃいけないというところなんかはもう本当に大変だということが言われていて、こういう農家の事務手続の煩雑さが緩和されるように改善してほしいということも出ているんですね。
 こういうことなどを含めて、改善策というんでしょうか、そのところはどうでしょうか。
○政府参考人(須賀田菊仁君) 確かに、これまで耳標を付ける事業をやっていたわけでございますけれども、先生おっしゃるように、番号の書き間違いでございますとか、何というか、記入漏れというんでしょうか、白紙と言われましたけれども、記入漏れ。それから、二重報告、もう既に報告したのにもう一回報告する。それから、先生言われました、確かに登録の制度、別途ありますし、いろいろな事業であって三つか四つ耳標が付いておるというようなこともございまして、なかなか農家の方が大変でエラー報告は一割を超えているというような状況でございます。
   〔委員長退席、理事田中直紀君着席〕
 そこで、私ども、農家の負担軽減、特に出生、異動の届出が面倒くさいという声がございます。そこで、ファクスでも電話でもインターネットでもいいからという複数の報告方法を農家に示しておりますし、場合によっては、農協が複数農家の報告を取りまとめて一括して報告するというようなことも可能にしたいと。子牛生産者補給金制度ありますので、そういうものとの業務の連携というようなことにも努めていきたい。そういうようなことで農家の負担の軽減というのを図っていきたいと思います。
 特に、七月一日以降、地方農政事務所というのが発足いたしますので、その職員を通じまして、県、農協等の協力を得て、現場での監視・指導というものを徹底をいたしましてエラーの防止に努めていきたいと考えております。
○紙智子君 では、続きまして、遺伝子組換えの食品へのトレーサビリティーの問題について質問します。
 牛肉以外の食品へのトレーサビリティーの導入について、農水省は食品全般に導入し、生産、加工、流通等のフードチェーンの各段階で食品等その情報について追跡し、遡及できるようにするということでガイドラインと実証事例を発表しました。
 現時点で、ほかにトレーサビリティーの義務付けを考えている品目というのはないんでしょうか。
○政府参考人(西藤久三君) 現在、先ほど来御論議ありますように、牛肉についてのいろんな、BSE発生等を背景に、個体識別情報の伝達を義務付けるということで現在御審議をお願いしている状況にございます。
 一方、私ども、米、野菜あるいは牛肉以外の食肉、食品に関するトレーサビリティーシステムということで、現在、自主的な取組を支援するという形で対応しておりますが、義務化ということで考えますと、各品目、牛肉のような状況にないというようなこと、あるいは食品の特性、あるいは流通経路等、それぞれ品目によって、野菜とお米でも違います。そういう区々の状況にございます。そういう点で、非常に技術的な課題もあるというようなこと、あるいは義務化に関する関係者のニーズの状況というところもなかなか現時点で品目によって不透明だというような状況もございます。
 そういう点を総合的に勘案して、現在、各品目について生産者、食品事業者による自主的な取組を推進していくということが基本だろうということで、そういう自主的な取組に対して支援措置を講じていると、そういう状況にございます。
○紙智子君 今必要だと思うのは、遺伝子組換え食品への導入を検討することだと思います。このシステムが導入されると、遺伝子組換え食品について原料の栽培地や栽培方法などの履歴がたどれるようになります。
 そこで、厚生労働省にお聞きしますけれども、この問題ではコーデックス委員会でバイオテクノロジー応用食品特別部会で議論をされて一定の結論が出ていると思うんですけれども、それがどのようなものか、御報告をお願いします。
○政府参考人(遠藤明君) 昨年三月に開催をされましたコーデックス委員会バイオテクノロジー応用食品特別部会第三回会議において合意をいたしましたバイオテクノロジー応用食品のリスク分析のための原則案におきましては、トレーサビリティーという用語は用いられておらず、遺伝子組換え食品の安全性に問題が生じた場合の製品回収、市場流通後のモニタリングを目的とした製品の追跡、ザ・トレーシング・オブ・プロダクツがリスク管理の一つの有用な手法であるという一般的な考え方のみが合意をされて、同原則案に記載されているところでございます。
○紙智子君 ありがとうございました。ほかのところと掛け持ちだということで、もう結構でございます。
 今、お答えをいただきましたコーデックス委員会のバイオテクノロジー応用食品特別部会で、今お話がありましたけれども、リスク管理の手法としてこのトレーサビリティーの概念、表現は今おっしゃったようにトレースということで改めたということなんですけれども、これを取り入れることができるということを各国が最終合意をしたということです。トレーサビリティーを導入すれば、遺伝子組換え食品によってもし事故が起こった場合に、この予見されない健康やあるいは環境への影響が生じた場合に、回収や原因究明に役立つわけですね。表示の監督や検証にも使えると。
 EUはこの遺伝子組換え食品にトレーサビリティーを義務付ける新たな規則を合意しているわけですけれども、我が国でも検討すべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(西藤久三君) 現在、我が国遺伝子組換え食品につきましては、もう先生御案内のところでございますが、JAS法に基づく品質表示基準を定めております。その中で、言葉としては分別生産流通管理という形で、生産段階から遺伝子組換えあるいは大豆であるとかトウモロコシである、あるいはその実際は逆をやっているわけですが、遺伝子組換えでない大豆、遺伝子組換えでないトウモロコシということで、分別した生産流通管理が行われ、各段階で遺伝子組換え農産物の混入が起こらないように管理されたことが書類等で証明されている場合には、遺伝子組換えでないという旨の任意表示ができる、そういう分別流通管理というものを実施している状況にございます。
 これはトレーサビリティーという言葉を使っておりませんし、生産情報を正確にあれするという目的でもございませんが、遺伝子組換えの大豆であるのか、あるいはトウモロコシであるのか、そうでないのかということが継続して把握できる状況になっております。そういう点で、私ども、任意の仕組みとしてこういう形のものは既に導入をして実行してきている状況にございます。
 遺伝子組換え食品にトレーサビリティー全体導入するということにつきましては、言わば義務的に導入することにつきましては、コストの問題、技術的な問題等、いろいろ更に検証すべき課題が多いと。そういう点では、正に私ども、現在自主的に実施、取り組んでいると、そういう形のものが適当ではないかというふうに思っております。
 それと、先生の方の御指摘で、EUにおいて、トレーサビリティーについて、遺伝子組換え食品のトレーサビリティーについての方向が出されていることは私ども承知をいたしておりますが、その具体的な仕組みについてはまだその中身が私ども承知する状況にございません。どういう形でということが更に具体的な形で整理をされてくると、そういうことを踏まえて、今後、そのとき、そういう状況を見ながらということになろうかと思いますが、一般的に現状の状況でそこまで整理をするという状況にはないというふうに考えております。
○紙智子君 今、分別のやり方でもって一部やってきているというお話もありましたけれども、やっぱりこのトレーサビリティーを遺伝子組換え全体に義務付けるということでは、これはやっぱり幅広く消費者の皆さんの中にも関心、まあ不安もあるわけで、これは本当にきちっと確立をしてやっていくということが必要だと。まあ検討、今後検討していくということでもあるんですけれども、これやっぱりやるべきだというふうに思うんですね。
 国際的にもリスク管理の手法として認められているということでもあるわけで、様々な理由ということで、例えば流通の方法でいろいろ大変な問題があるということなんかも聞きましたけれども、やっぱりコーデックスで合意を得ているわけですから、我が国が追跡用システムを作ってきちっと進める必要があるんだというふうに思うんです。
 厚生労働省の監視安全課の宮川さんという方がここに書いていますけれども、この中でも、我が国が遺伝子組換え食品に対して、健康影響が明らかになった場合に備え、製品の由来などを求める措置を規定することは可能となったというふうに書いております。これはしっかり検討していただきたいというふうに思います。
 それからもう一つですね、大豆油、コーン油、それからしょうゆですね、こういう食品中に組換え遺伝子やそれが作るたんぱく質が残らないために、現在、表示義務が掛からないものに対する表示についてお聞きしたいと思います。
   〔理事田中直紀君退席、委員長着席〕
 総務省が行ったアンケートでも、表示してほしいと答えた人が七六%に及んでいますね。トレーサビリティーが導入されれば検証は可能になると、導入可能だということなんですが、大豆やトウモロコシ、菜種の栽培情報が加工段階、流通経路を経て消費者の手元に届くまで流れるようにすれば、この表示の検証は可能になると、消費者が求めている油やしょうゆなどの表示が可能になるんじゃないでしょうか、いかがですか。
○政府参考人(西藤久三君) 遺伝子組換え食品の表示についての御論議でございます。
 遺伝子組換え食品の表示について、先ほどトレーサビリティーについてのコーデックスでの議論の状況ございましたが、遺伝子組換え食品についての言わば国際的議論の状況を御紹介しておきますと、コーデックスの食品表示部会において、表示について現在も論議が行われております。その中で、現在、三つのオプションが示されている状況にございます。
 一つは、産品の組成、遺伝子組換えでできた製品の、産品の組成なり用途なり栄養価等に重大な変更がある場合、この場合は表示をすべきだと。同じ大豆でも中身ががらりと違ってくる、そういうような高オレイン酸大豆等が現在既に作製されておりますが、そういう言わば用途、栄養価に重大な変更がある場合は表示する。二つ目は、今申し上げましたものに加えまして、遺伝子組換え由来のDNAなりたんぱく質の存在が確認できる場合、これも表示の対象にするというのが二つ目の考えでございます。三つ目は、遺伝子組換え技術で得られたDNA等が存在しない場合も表示すべきと、言わばすべての場合表示すべきと。この三つの考えが現在コーデックス食品表示部会で御論議がされている状況でございます。しかも、その論議の状況を申し上げれば、ステップスリーという段階で、まだ国際的には論議の状況が大変途上にあるという状況は御理解いただけるかと思います。
 そういう中で、私ども、遺伝子組換え食品、我が国では輸入大豆あるいは輸入トウモロコシ、輸入菜種が遺伝子組換え食品の割合が高いというふうに思っておりますが、そういう状況の中で、私ども、平成九年から十一年にわたりまして関係者全部入っていただきまして、最近では通常そういう形態取られますが、当時としては非常に斬新な形で関係者オープンにして、公開の場で関係者の御論議をいただきました。
 そういう点で、表示の信頼性、実行可能性ということで、現在、先ほどコーデックスの議論の場でいえば第二の段階、組成が違うもの、それとDNAなりたんぱく質が残存していることが確認できるものについて義務的な表示をするということで一つの論議の集約も得て実行しているところでございます。たんぱく質あるいはDNAが製造過程で消滅し残存しない、先生御指摘の言わば食用油なりしょうゆについては義務表示の対象外となっている状況でございます。
 ただ、私ども、表示義務の、義務表示の対象品目につきましては、言わばその辺りの技術的な観点というのは年々進歩する状況にございます。そういう点で、毎年検出方法等の進歩等に関する新たな知見、そういうことを踏まえて毎年見直しをしてきている状況にございます。見直しの過程で追加も実施してきております。現在三十品目について、たしか加工食品であっても遺伝子組換えの表示をお願いしておりますけれども、私ども、先ほど申しましたような基本的な考え方の下で運用していきたいというふうに考えております。
○紙智子君 ちょっと時間がもうなくなってしまったんですけれども、しょうゆそれから油を表示義務から外したために、アメリカから輸入される大豆やトウモロコシ、これは作付けの三割が遺伝子組換えだというふうに言われているわけですけれども、その九割は表示対象から外れることになるわけですよね。これでは表示制度として消費者が納得できないわけです。EUの新規則は、これまで表示が義務付けられていなかった高度に精製された油のような加工品についても、消費者と農民に食品や飼料の正確な性質と特徴を知らせるために、DNAやたんぱく質が検出できるか否かにかかわらず、すべてのGM食品・飼料に表示義務を拡大することになっています。
 私は、やっぱり我が国もこれ全面的に表示すべきだというふうに思います。いかがでしょうか。
○政府参考人(西藤久三君) 私ども、先ほど申し上げましたような考えに基づいて整理をさせていただいておりますが、先生御指摘のとおり、EUにおいては、先ほどコーデックス委員会の議論の中でも、三番目の分類、要はDNAの存在、たんぱくの存在の可否にかかわらず表示を義務付けるという方向が出されているのはそのとおりでございますが、現在、またそのチェックシステム、実効性を含めて具体的な方向については明示されていない状況にございます。私ども、そういう実行状況も見ながら、あるいは国内での技術的な進歩の状況も見ながら、今後の検討課題だというふうに考えております。
○紙智子君 ちょっと時間が来ました。
 それで、産地からのトレーサビリティーが導入される前でも、輸入時に非組換えかどうかの表示を原材料にして、それが加工業者にまで届いて製品に原材料として表示されれば可能になるというふうに思います。
 そのことを申し上げまして、時間ですので終わらせていただきます。