<第156回国会 2003年3月25日 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第3号>


平成十五年三月二十五日(火曜日)
   午前九時十分開会
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  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○参考人の出席要求に関する件
○沖縄及び北方問題に関しての対策樹立に関する調査 (派遣委員の報告)
 (沖縄及び北方問題に関しての施策に関する件)
○平成十五年度一般会計予算(内閣提出、衆議院送付)、平成十五年度特別会計予算(内閣提出、衆議院送付)、平成十五年度政府関係機関予算(内閣提出、衆議院送付)について(内閣府所管(内閣本府(沖縄関係経費)、北方対策本部、沖縄総合事務局)及び沖縄振興開発金融公庫)
○沖縄振興特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

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○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 最初に、北特法の改正の問題について質問いたします。
 それで、一月の委員派遣のときに、私も参加させていただきましたけれども、このとき、地元の根室などの自治体から要求された件で、自治体実施の公共事業について、この北特法七条の国庫補助率を現行のかさ上げ方式から特例方式にし、確実に補助率が引き上がるようにしてほしいと。沖縄振興法のようなスキームを願っているというようなことも出されました。
 委員会としてもこの努力が求められているわけですけれども、昨年、この問題では、私もまた小泉議員も質問いたしました。そのときに、これに対して国土交通副大臣らが、内閣府ともよく相談をしながら検討していくというふうにお答えになりました。その後の検討状況についてどうなっているのか、お聞きしたいと思います。北海道局長。
○政府参考人(村岡憲司君) 御説明いたします。
 国土交通省では、今、委員からお話のございました法律に基づきまして、北方領土の隣接地域の安定振興を積極的に講じさせていただいておりますが、現行の第四期の振興計画が本年度、平成十四年度までで、最終年度となりますことから、現在、北海道で次期の振興計画、平成十五年から平成十九年度までの計画の策定に向けた作業を行っているところでございます。
 国土交通省では、現在、一市四町が同計画に盛り込む内容につきましての検討状況を北海道から聞き取らせていただいているというところでございまして、その中で第七条の対象事業の見直しの必要性についても検討を行っているところでございます。
 また、第七条の事業のほかにも、振興計画の中で大きな事業割当てとなっておりますいわゆる国の直轄事業でございますとか北海道庁の実施します国庫補助事業につきましても、事業の連携でございますとか重点化等の検討を進めまして、安定振興に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
 以上でございます。
○紙智子君 私たちは、なぜこの地域に特別の補助率が必要なのかということについて、一つは、この地域がやはり北方領土返還運動の拠点であると。ここにやっぱり安定した発展を図るということが重要で、地域が疲弊するということはそういう運動全体にとってもマイナスになると。基幹産業の漁業でいいますと、年々規制が強化されています。地域経済にも本当に大きく影響している現状があるわけで、その意味では、必要性、切実性ということでいいますと、法律制定当時よりも一層大きくなっているということ。
 それからもう一つ。戦後、ロシアの占領によって島民の皆さんが移住を余儀なくされて、直接島民の皆さんの声もお聞きしましたけれども、多くの方がやっぱり島への復帰を本当に願っているわけですね。一方で、精神的な負担も伴いながら生活をされている。領土問題が未解決のために十分な経済活動も発展が損なわれているという事態があると。そういうことを考えても、やはり特別な助成があってしかるべきだというふうに思うわけです。
 そこで、お聞きしたいんですが、対象となるこの北特法七条の直近の年の事業費が幾らなのか、そして、仮に国の補助率を一〇%上げた場合、また二〇%上げた場合に国庫負担額が幾ら増えるかということをお聞きしたいと思います。
○政府参考人(村岡憲司君) 平成十三年度に、当該隣接地域でございます一市四町が実施をいたしました第七条のかさ上げの対象となります国庫補助事業の事業費は、一市四町の総額でございますが、三十五億千八百万円ということになってございます。内容といたしましては、雪寒地域の道路でございますとか、下水道あるいは公営住宅などが含まれているわけでございます。また、国庫補助額は、北海道特例等もございまして、十八億八千二百万円ということでございます。
 今御質問のございました、補助率を一律に一〇%又は二〇%上げた場合ということでございますので、先ほどの総額の三十五億千八百万円に対して一〇%を掛けるあるいは二〇%を掛けるということでございますので、三億五千百万円あるいは七億三百万円というような数字になります。
 以上でございます。
○紙智子君 今、一〇%上げだと三億数千万、あと、二〇%、七億幾らということで言われたんですけれども、財政的に非常に大変だという話がされるわけですけれども、国土交通省の北海道開発予算全体は八千百七十二億円ということで見ますと、それに占める割合でいうと、わずか〇・〇五%から一・〇%の範囲なわけですね。
 ですから、先般、私、予算委員会で、この北海道の予算の中で、自然破壊や無駄な事業だということで日高横断道路の問題を取り上げさせていただいたんです。国の開発道路部分だけでも今年三十億円、この分野に使っているということで、実はこれ、国も道も見直しを掛けようということになっているわけですけれども、この日高道路ということでいえば、一つの例なわけですけれども、こういう既存の事業の見直しをする中で財源というのは捻出できるんじゃないだろうかと思うわけですけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(村岡憲司君) 今御指摘がございましたように、補助の対象をどうするかということは、大変国の財政も厳しいという面もございますが、あわせて各地方自治体の財政も厳しいという面もございます。また、そういう意味で、国庫補助金・負担金の全体の見直しが議論されているということでございますので、これを見直すということは、当然それぞれの事業の緊急性でございますとか必要性というものをそれぞれに精査をしていくということが必要であろうかというふうに考えておるわけでございます。特に、当該地域の社会資本の整備の状況というようなものも十分に勘案しながら検討を求められているというふうに認識しているところでございます。
○紙智子君 もう一つ、この地域から上がっている要求の中で、基金の運用益の問題がありました。
 それで、目減りをしてきていて現地は大変苦労しているというお話があったわけですが、地域のために何ができるかということで、その役立つ中身、予算の中で盛り込まれて、どういうことが盛り込まれているのかということを北方審議官の方にお聞きしたいと思います。
○政府参考人(坂巻三郎君) ちょっと今、部内の者と話をしておりましたので正確にお答えになるかどうか分かりませんけれども。
 先生御指摘のように、根室支庁管内の一市四町は、北方領土問題が未解決であることから、地域社会として望ましい発展を阻害している地域であるという基本的認識は北特法の趣旨でもございますし、それから、地元から御要望で、先生御質問の七条関係の補助率のかさ上げの関係も御要望が出て、北海道局中心になって、いろいろ問題点も含めて……(「違うよ、そんなこと聞いていないよ」と呼ぶ者あり)申し訳ありません。
 北方基金については、最近の低金利もございまして、一番多かったときの果実が半分ぐらいになっているということで、従来できていた事業もできなくなっているということでございます。
 ただ、基金の目減り対策にはいろいろ私どもも勉強してみましたけれども、直接その対策というのはなかなかございませんということもありまして、先ほどから御議論に出ておりますように、少なくとも地元の啓発で従来できなかった部分を何らか支援ができるようにということで、十五年度予算では二千百万円の予算でございますけれども、それを使いまして、地元での啓発、従来できなくなっているもの、あるいはこういった状況の中でより積極的に地元啓発をするための新しいアイデアに対して支援をさせていただきたいということで、補てんそのものではございませんけれども、総体的に考えまして、地元の啓発に資するようなアイデアを出すという趣旨から二千百万円の予算を計上したところでございます。
 済みません。話がちょっとあれでしたので、申し訳ございません。
○紙智子君 今の二千百万円という啓発の分野というのは、前回私も質問をしている中身でもあって、これは、付いたというのはよかったと思いますけれども、そのほかのできないかという、いろいろ勉強されているという話もありましたけれども、この間、私どもの現地の事務所で、いろいろ回って、あそこの羅臼の漁協の方とお話をしたときに出されていたもので、基金による事業がいろいろやられているんですけれども、例えば昆布の藻場の造成なんかもやっていて、それで、そういうことに使えるということはとても喜んでいるんですけれども、しかし、この幅が狭まっているために、手は挙げているんだけれどもなかなか満遍なく行き渡らない、待っていなきゃいけないということになっていまして、これをもう少し何とかならないだろうかという声も出ていて、これはどこにお聞きするかということで悩んでいたんですけれども、ちょっと質問通告はしていなかったので申し訳ないんですけれども、ちょっと水産にかかわる問題なので、副大臣、お見えですのでお答えいただければ。何らかの対策をということなんですけれども。
○副大臣(太田豊秋君) 今、紙先生からいろいろずっと、今回の基金の問題の一連の御質問をずっとお聞かせいただきまして、やはり北方領土という日本の、私は、固有の領土であるというふうな考え方の中で、そこを今どういう形になっていくのかという非常に日本の国土として、国民としても大事な問題、しかし、そこに生きてきた人たちの生活、そういったことをもしっかりと守っていくというのもまた政府としての役割なんだろうと、こんなふうに考えましたときに、確かにその基金のいろいろな使い方、あるいは基金そのものの配分とか、そういったものが減ってきている中で、海にとって大変重要な藻場、干潟の造成というふうなことは、これはこれからの海を守っていく、また再生可能な資源としての海産物を守っていくということにおいては重要なことでございます。
 そういった中で、私どもは、今、御承知のように、平成十四年からやっております五か年計画、十八年度まででありますが、おおむね五千ヘクタールの藻場の造成をしようということで位置付けてやらさせていただいております。
 そういったことで、今後とも、地元漁業者とかあるいは地方公共団体等の要望を踏まえつつ、水産資源の増大のため、藻場などの漁場整備に対しましても積極的に支援をしてまいりたいと、このように考えております。
 ただ、今回、例えば今、北海道にかかわる問題としても、今までの沿整事業の中でやってきておりましたものは、別海町の場合には約八億円、それから、同じように別海町でやっております七・五ヘクタールで例えば一億五千万、それから、キラク漁場などでは二ヘクタールで一億八千万円、こんなようなことで沿整事業で水産庁そのものの予算の中でもやらさせていただいておりますが、今後、例えば減ってきている中でも、小さな事業などにつきましては、これは九百六十万円あるいは九百十万円とかというふうな形で今、昆布の漁場整備なども、これはいわゆる北海道の、北方四島の基金の方からさせていただいておりまして、両方のお金を使いながら北海道の関係につきましては資金をつぎ込んでおりますから、今度、先ほど国土交通省からお話がございましたように、第四期が今終わろうとしておりますから、第五期のときに切替えをして、沿整の方の中の事業としてこれを入れ替えていったらどうだろうとか、そういったことが御要望がありますれば、そのことについてもまた地元の漁業の皆様方あるいは地方自治体の方々と御相談を申し上げまして、そしてそのような事業にも積極的に取り組んでいきたいと、このように考えております。
○紙智子君 私どもは、この七条対象事業の補助率の特例方式の問題、それから十条の基金対策では、目減りの対策が保証されるように、例えば条文に所要の財政措置を取るというようなことなども含めて意見を持っているわけです。法改正すべきだというふうに思っているわけですけれども。
 そこで、委員長も一緒に現地に行かれて要望を聞いたわけですけれども、この委員会として是非積極的にこの問題、取り組んでいきたいということを御提案をしたいと思います。
○委員長(本田良一君) これも、理事会で協議をしましてお答えいたします。
○紙智子君 次に、北洋漁業の問題について質問いたします。
 この地域は、基幹産業である漁業、特にロシアとの関係における北洋漁業の維持安定という問題が本当に重要な課題です。しかし、水産外交の努力はあるんですけれども、実態としては年々厳しくなるばかりと。
 それで、四島周辺安全操業についても、割当て量が捕れないわけですけれども、それでも協力金や機材の供与の費用は払っていかなきゃならないと。経費を引くと赤字なんですね。その上、敷設している漁具の被害に遭っても補償は一銭もないと。それで、貝殻島昆布漁についても、水揚げのうちの二割もの採取料を払わなきゃいけないというふうになっています。ロシア側の水域への入漁の漁獲量も十年間で五分の一に減っている。
 そこで質問なんですけれども、当然のことですけれども、この領土問題が解決すれば、もっともっと広い漁場で、豊かな漁場で我が国の主権をもって操業できるわけですけれども、それができないでいることからくる今のこの漁業の困難だと思うんです。そういう特殊事情にあるわけで、そういう中で直接、漁業の経営に対する助成とか支援策が、他の地域に比べて特別なものがあるのかないのかということについて、まずお願いします。
○政府参考人(海野洋君) お答えいたします。
 北方四島はロシアによって不法に占拠されておりまして、このため、関係者におかれては前浜の漁場が十分利用できないという特殊な状況にあるというふうに考えております。
 現在、北方四島周辺水域で操業する漁業者、これをのみ対象として直接的な経営支援をするというふうなことは行っておりませんが、平成十年に、今お話のありました北方四島周辺水域における日本漁船の操業枠組み協定というのをロシアとの間で結びまして、関係漁業者の操業の確保と経営の安定に努めております。
 そういった操業の確保ということの中から漁業者を支援するという方策を取っているということで御理解いただきたいと思います。
○紙智子君 もう一つ、サケ・マスの国庫支援というのがあるわけですけれども、率はずっと変わっていないわけですね。水揚げが減っている中で率は同じということでは、これをもっと上げるべきだというように思うんです。
 今、小型船の十トン未満の協力金は、一隻につき大体三百六十万円なんですね。それで、一隻数百万円の水揚げからそれを支払って給料を払うということになると、赤字になってしまう。このまま出漁できないということで、このことが地域の維持や活性化にもかかわる問題になっているわけです。
 それで、協力金の水準は十年前とずっともう変わらない同じ水準で来ているわけですけれども、その間、もうマスやサケの魚価というのは二分の一になっています。この協力金ではやっぱりやっていけないということでは、ここへの国の助成を強めるべきだというように思うんですけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(海野洋君) サケ・マスは遡河性の魚種でございまして、国際的に母川国主義が認められております。今お話のあります協力金、これは我が国のEZの中で捕獲するロシア系のサケ・マスでございますけれども、今申し上げましたような原則がございまして、その再生産に協力するという観点からロシア側に漁業協力費を支払っているものでございます。
 協力費の支払に当たりましては、本件の協力を日ロ間の漁業協力、その全体の中の一環であるというふうにまず位置付けまして、また、今お話のありましたサケ・マスの漁業の安定的な継続を図っていくという意味で必要であろうということから政府が一定の補助を行っているところでございます。平成十四年には、漁業協力費総額、これは五・五億円でございまして、政府がそのうち二・一億円の補助をしているところでございます。
 今年のサケ・マス交渉、昨日から始まりましたけれども、この交渉、ロシア側との交渉を通じて、水産庁としてはできるだけ漁業協力費の支払の軽減にまず努める、それから漁獲全体の枠の確保を図るということに努力をするということと、あわせて、引き続きまして、政府から支援ができるように、継続できるということで努力をしてまいりたいと考えております。
○紙智子君 ちょっと時間にもなってきましたので、最後にお聞きしますけれども、領土問題の未解決という特殊な事情からして、この北特法と同じようにこの地域の漁業経営の特別な助成を考えるべきだというふうに思います。そうでなければ、地域が疲弊し、安定した地域の維持ができない、返還運動にとってもこれは影響していくということで、これは北方隣接地域の振興にもかかわる問題なので、大臣の見解を求めて、終わりたいと思います。
○国務大臣(細田博之君) 政府としても、関係省庁とよく協議をしてまいりたいと思っております。