<第155回国会 2002年12月10日 農林水産委員会 第9号>


平成十四年十二月十日(火曜日)
   午前十時開会
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  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○農林水産に関する調査
 (米の需要拡大策に関する件)
 (担い手経営安定対策に関する件)
 (循環型農業の推進に関する件)
 (森林の整備及び地域材の利用促進に関する件)
○農水産業協同組合貯金保険法及び農水産業協同組合の再生手続の特例等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
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○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 五日の農水委員会で米の政策の見直しについて質問させていただきましたが、それに関連して確認をまずしておきたいと思います。
 それで、五日の質疑で、大綱で示されていました担い手経営安定対策について、農水省の案で北海道十ヘクタール、都道府県四ヘクタール以上の対象となる認定農業者数はどれだけですかというふうに聞いたときに、北海道は一万、都府県が八万というふうなお答えでしたね。
 それで、二〇〇〇年センサス、農水省で出しているこの認定農業者がいる農家に関する統計で見ますと、北海道は水田経営をやっている認定農家は全体でも六千二百四十三戸しかないんですね。だから、どうしてそれが、北海道で対象となるのが一万になるのかというのを質問したいんですけれども、まずお願いします。
○政府参考人(川村秀三郎君) 先般の本委員会におきまして、平成十二年のセンサスを基に、個別経営体につきまして、幾つか要件はありますが、規模要件に着目して試算をしたということでございます。そして、その規模要件に基づいて一定の試算をいたしますと北海道で約一万戸ということになります。
 今、先生御指摘のとおり、確かに北海道の認定農業者数というのは六千四百余でございます。今回、そういうことでセンサスに基づく最大限の数値を申し上げたわけでございますが、これに認定農業者でありますとか生産調整実施者であるという要件も加わります。
 ちょっと付言いたしますと、こういう数値的な基準を設けまして目標を設けた、それからまた政策的にも明確な位置付けをした、それから認定農業者の運用についても今後改善を行っていく、それからまた集落段階で地域ごとに担い手を明確化していくということで、非常に精力的に系統でもこういった問題に取り組まれるということを聞いておりますので、最大限の数値として申し上げたわけでございます。
○紙智子君 最大限の数値というふうに言われるんですけれども、実際、規模で見ても、この同じセンサスで例えば経営耕地面積が十ヘクタール以上は、十ヘクタール以上ということで見ますと、これは四千八百四十六戸ですから、そうしますと農水省が挙げた数字の半分程度なんですね。四千八百戸ということになると北海道の稲作販売農家の一八%と。この前お聞きしたときには四四%ぐらいということだったんですけれども、そんなに膨らむのかなというふうに、いろんなことを勘案すると言うんですけれども、最初にやっぱりお聞きしたときに、農水省から資料として、これが今度の担い手安定対策に一番近い数値なんだというふうに言って紹介されたわけで、その意味では実際にはそういうふうに相当の開きがあると。
 同様に、都府県では三万三千戸、これだと一・九%ですから、農水省が出したその対策の案から見ても、農水省で出している案も認定農業者に限定しているわけですよね。
 だから、現時点で推計すると、全国で九万戸ということが数字が出ているわけだけれども、四万戸にも満たないんじゃないかと。結局、対象となるのは、そうすると全稲作販売農家の二%にしかならないということになるんじゃないですか、いかがですか。
○政府参考人(川村秀三郎君) 先ほども申し上げましたとおり、このセンサスに基づいて規模要件のみでお答えをしたところでございます。それに加えまして、認定農業者でありますとか生産調整実施者であるといったような要件が確かに加わるわけでございますが、今申し上げましたように、個別経営体でまいりましても、制度の改善、それから集落でのお話合い等を通じてその拡大を図っていただきたいと思っておりますし、またこの個別経営体のほかにも集落型経営体というのを今回は明確に位置付けておりますし、その集落での取組ということで相当の戸数が対象になり得るんではないかというふうに考えているところであります。
○紙智子君 そういうふうにおっしゃるんですけれども、実際には増やしていくというよりは、むしろもっと選別するという方向が出されているんじゃないですか。現状で農水省が出しているので言うと、認定農業者を選別する方向について、地域の農業の担い手としてふさわしい農家を認定する運用ガイドラインを作る方針というのを出していますよね。これは関係者から意見を聞いて、経営改善の意欲が見られない場合はその認定を取り消すことも促すというふうなことも、先日、十二月八日付けの農業新聞に書いてありましたけれども、実際には絞り込んでいくということになるんじゃないですか。
 そこのところが私は、本当に数字の出し方が漠然としているといいますか、実際にはやっぱり、今御議論している、検討している大事なときに、リアルにやっぱり数字そのものを示す必要があると思うんです。その点いかがですか。
○政府参考人(川村秀三郎君) 今、認定農業者の見直しの関係でのお尋ねでしたが、既に認定農業者制度が発足してある程度の期間がたっております。その中で、市町村ごとに認定にばらつきがあるとか、それから経営改善計画のフォローアップを行う必要がある等の御指摘もございます。
 そういう実態を踏まえまして、できるだけこの認定農業者制度の趣旨を改めて周知をいたしまして、地域において水田営農を担っている農業者につきましては認定農業者として認定をして、重点的に農地の利用集積の取組を行うということを今後指導していきたいと思っておりますし、また経営体の目標として平成二十二年の構造展望があるわけでございますが、その数値をやはりにらんだ上での展開というものを考えていきたいというふうに思っております。
○紙智子君 いずれにしましても、今そういうふうに言われたわけですけれども、実際に、この前お示しされました全体で九万というのは、そこまでの規模にはならないですよね。実際はもっと少なくなるんじゃないですか、そういういろいろなことを勘案したとしても。どうですか、そこは。
○国務大臣(大島理森君) 今、紙委員と局長の議論の中で数字の姿が議論されております。これは、今の時点での私どもの想定としてそういうことがあるであろうということですが、大事なことは、要するに担い手と言われる人たちに、集落でもあるいは個人でもあるいは法人でも、そういう方々に米生産の中核になってもらおうという思想が私はこの政策の一番大事なところだと思うんです。
 先般も愛知県に行きまして、いわゆる受委託で百ヘクタールやっていますという人たちがいる。ところが、私が、今ずっと議論した中でこの受委託農家をどう位置付けるか、なるほどこの問題もちょっとまだ議論があるなということを考えますと、九万が多いとか少ないとかということではなくて、九万というのは私どもの目標あるいは想定される数であろうと思いますが、要はそういう方々に生産の中核を担ってもらおうというそういう考え方、ここが一番この議論の大事なところだということをあえて申し上げさせていただきたいと思っております。
○紙智子君 ちょっと今の説明でも納得いかないんですけれども、いずれにしても、漠とした数字を出してそしてやっぱりやるのではなくて、リアルに示してやる必要があると思うんです。今までも農水省としてはいろいろ青写真を作って、そして認定農業者を将来はここまでにするというようなことをやってきたわけですけれども、それが実際には実現しないできたわけで、そういう意味ではちゃんとリアルに事態を示しながらやっていくということが不可欠な問題だというふうに申し上げておきたいと思います。
 それから、ちょっともう一つ聞きたいので移りますけれども、MA米について質問いたします。
 それで今回、生産調整に関する研究会で、心理的影響はあるけれどもこのMA米の影響はないんだという結論を付けています。それであれば、なぜ今度の交渉で市場アクセスに関する改善を求めるのか、この程度のミニマムアクセス米の認識で説得力を持って交渉に当たれるのかということについて、大臣、いかがですか。
○国務大臣(大島理森君) お言葉でございますが、前段のリアルに考えて数字を出せと、こういうお話、これもなるほどそれもあるかもしれませんが、一方、政策には目標というものも必要でございます。そういう観点から御理解いただきたいと思います。
 ミニマムアクセスの、どういうふうにおまえたちは考えてこれから議論しているんだと、議論していくんだと、交渉に対してどうなんだということでございますが、米の重要性というものについて今更私が、何回も申し上げておりますが、日本農政の基礎であり基本でございますと、そしてそういう観点から多面的機能も非常に担っておりますという意味で、私どもは、米の需給と価格の安定に支障を及ぼさないように現在の総合的な国境措置、輸入管理体制を維持するということがまず基本でございます。
 具体的には、高水準の枠外税率の堅持、高水準のマークアップの堅持、用途と国内供給量を限定できる一元的国家貿易体制の堅持、そして不公平なミニマムアクセス制度の是正を目標とし、我が国として受入れ可能な交渉の枠組みの実現に向け交渉に臨んでいるところでございます。
 昨日、北村副大臣をジュネーブに派遣し、議長の概観ペーパーが出る前にやはりこのことを改めて、また私が十月に出張しそして強く要請、意見を申し入れ、と同時に、さらに日本時間の昨日、スパチャイWTO事務局長、ハービンソンWTO農業委員会の特別会合議長に対して私どもの今のような方針をきちっと申し上げております。
 そして、ミニマムアクセスだけのことについて言いますと、制度上の問題として四点挙げております。一つは輸出入国間の権利義務のバランスの確保、品目ごとの柔軟性の確保、三点目として最新の消費量を勘案した基準の見直し、そして四点目として特別措置を関税化した場合の加重アクセス数量の改善を主張しているところでございます。
 しかし、このミニマムアクセスのところだけにおける我々の主張に対する同調者は非常に少のうございます。少のうございますが、アメリカやケアンズ諸国のようにすべての関税を一律二五%未満にすべきだというような非常に野心的な、あるいは率直に言えば会合を本当にまとめる気があるのかないのかと疑わしいようなそういう主張に対しては、私どもは先般モダリティーの提案をして、そういうことではこの会合まとまらぬよということも含めて、私どもの主張を厳しくそして強く今主張し、多くの国々に理解を求める努力をしておりますので、どうかこの交渉につきましては、米改革、米の政策改革も今大綱を発表したところでございますので、国民の理解と、与野党を乗り越えて私どもに対するバックアップをしていただきながら全力を尽くして、先ほど申し上げたような主張をモダリティーに反映させるよう全力を尽くしてまいりたいと、こう思っております。
○紙智子君 ちょっと時間がもう本当にわずかしかないので、短くお願いします。
 それで、現に今七十七万トンのミニマムアクセス米が入ってきています。それで、この七十七万トンというのは、北海道でいいますと十三年度産がもう総生産量が六十四万トンですから、それを大幅に超えるだけのミニマムアクセス米が入ってきていて影響がないわけがないというのがみんなの声なんですね。それで、やはり米地帯である東北や北海道、北陸の十一道県、ここから農協中央会の連名で、ミニマムアクセス米については、過去最大規模の生産調整に取り組んでいる中で到底納得できるものじゃないと、この米の廃止ですね、最大限の努力をすべきだということを文書として要求を出されているわけですよ。
 それで、農水省は、この今の現状の、今の提案で言いますと、今、頑張るんだという話をされているんですけれども、次期交渉でMA米の削減を求めることによってどの程度の削減を見込んでおられるんでしょうか。
○政府参考人(石原葵君) 今、交渉でどの程度の削減を見込んでいるかという御質問でございますけれども、我々がミニマムアクセスで主張しておりますのは、先ほど大臣が申し上げたとおり四点ございます。その中での二つの点が、特に削減量に直結いたします。一つは、最新の消費量を勘案した基準の見直しというのでございますし、もう一つが特例措置を関税化した場合の加重アクセス数量を改善すると、この二つでございます。これでやりますと、現在ミニマムアクセス水準は七・二%でございますけれども、これが五%ということになります。
 ただ、五%ということになるわけでございますけれども、その場合に幾らになるかというのにつきましては、このミニマムアクセス水準そのものを拡大する提案が輸出国から厳しく出されているということ、それからもう一つは、基準年をいつに置くかということにつきましても具体的な姿が見えておりません。そういうこともございまして、現段階で具体的な削減量幾らということを申し上げるのは適当ではないんではないかと考えているところでございます。
○紙智子君 いずれにしても、今数字を聞いてもわずかなものだと思うんですよ。それで、本当に強気で交渉に臨んでいるアメリカやケアンズ、こういうところに対して削減を求めていくわけだけれども、納得させていくと、やっぱり説得していくということで言いますと、本当に日本が弱腰でいたんじゃ駄目だというふうに思うんです。それで、初めからやっぱり遠慮した姿勢じゃなくて、これこそ日本農業の根幹にかかわる、米の存亡にかかわる問題なんだということを強く主張し、そして深刻な事態を示してMA米は削減というよりはやっぱり撤廃を求めるべきだというふうに私は思うんです。
 それで、本当に日本の主食を守るということで言いますと、確かに、日本国民にできるだけ安く米を供給できるようにしようという、それは必要だと思います。
 しかし、全く条件の違う輸入米との競争で、生産費を勘案しないとか、農家の労賃も無視する価格を押し付けるというのは、国内生産のやっぱり農業を破壊することにつながるというふうに思うんですね。
 ですから、その意味でも、今は、それと、WTO協定以来、穀物メジャーなどが買いたたきなどで国際穀物価格が暴落をしているということの中で、アメリカ政府もいったん廃止した価格保証を復活させるとか、そういうことに出てきているわけですから、ここは本当に、農業者に押し付けていくんじゃなくて、国として農業を切り捨てるようにしないで、本当に真正面から立ち向かっていくということが必要だというふうに思うんです。
 そのことを強く申し上げまして、時間になりましたので、質問を終わらせていただきます。