<第155回国会 2002年11月28日 農林水産委員会 第6号>


平成十四年十一月二十八日(木曜日)
   午前十時二分開会
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  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○農水産業協同組合貯金保険法及び農水産業協同組合の再生手続の特例等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○農薬取締法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
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○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 小泉内閣はペイオフ解禁を二年延長するということを決めました。これが、経済の立て直し政策によって景気を回復させることを目的に延長するということならば分かります。しかし、逆に、ペイオフ解禁を二年間という期限を区切って延ばすことを言わばてこにして不良債権の最終処理を徹底させることが目的だというのは、この間の小泉総理の談話などでも明らかです。
 これは地域金融や地域経済をつぶしていくものだと思います。不良債権の処理と、処理をすると言いながら、実際にはこの間逆に増えていると。先日、我が党の志位委員長の代表質問に対しての小泉総理の回答でも、平成十四年の三月期の全国銀行の不良債権については九・二兆円処理された一方で、その残額は四十三・二兆円、前年度に比べて九・六兆円増加しているというふうに答えている、認めていることでも明らかです。
 不良債権を無理してどんどん処理をしていくということが結局景気を悪化させて、新たな不良債権が発生するという悪循環に陥っているということだと思います。これだけでも小泉政権の財政政策というのは失政だと言えるんじゃないでしょうか。
 まず、大臣の御認識を伺いたいと思います。
○国務大臣(大島理森君) 失われた十年とかという言葉でよく言われます。多分、今、日本は戦後の経済構造というもので大変な成長を果たして、私見から申し上げますと、私はそこのポイントは一九八五年ぐらいが非常に大きなポイントではなかったかなと、こう思います。それはプラザ合意です。そして、そういう状況の中で、国際社会というものがどんどん、物、金、情報が自由化されていく。ある意味では、満たされた日本の中で需要の変化というものも出てきた。そして、そういう様々な変質からそういうことに対応するために構造改革というものをやらなければならない。
 小泉改革、小泉政治というのは、正に言わばそういうこの十年、十五年の構造改革のファイナルラウンドだと、こういう思いの中で思い切った構造政策をやっていく。そしてそういう中で、やっぱり改革ですから大きな変化がある。大きな変化がありますと、新しい芽もあれば、また消え去っていくものもあるのでありましょう。そういう混乱の中から需要がもう一つ喚起してこないというふうな面もあるのでありましょう。しかし、やらなければならないことというのはやはり不良債権の処理であり、そして構造改革であるということであるわけでありますから、不良債権の処理をする結果として、先ほどから様々な御質問がございましたように、セーフティーネットとして成しておく、安心を供給していくという仕事が政治にもあるであろう、であれば、そういうふうな視点からこのペイオフの延期という結論を出した、このように御理解いただければと思うんです。
 ペイオフの延期をして、延期をするから不良債権をするんではなくて、不良債権の処理、このことを成し遂げる、その結果として様々なセーフティーネットを作らなければならない。もちろん、雇用の問題もあります。需要の問題もございます。そういう観点から補正予算への取組もいたしますし、そして今、不良債権の処理のためにペイオフの問題も法案として御議論いただいているという意味で、失政であるとは私は思っておりません。
○紙智子君 不良債権を処理するなということは私たちは言っていないわけで、無理をしてどんどんやっていくということが悪循環を生み出すということを何度も申し上げているわけです。
 それで、実際に、セーフティーネットということですけれども、国民の現実から見ますと、実際には地域の金融が壊れてしまっていたり、あるいは失業、倒産が増えているという実態があるわけですから、そこのところをやはりきちっと見る必要があるというふうに思うんです。
 今回、政府の方針で金融改革として不良債権比率を半分に減らすというふうに言っています。十月三十日の金融再生プログラムで言っていますけれども、これは主要銀行の話で系統金融機関の話ではないというふうに思うわけですけれども、確認をしたいと思います。どうでしょうか。
○国務大臣(大島理森君) 先ほど日笠委員にもお答えを申し上げましたが、私どもは農協系統金融の言わばその大きな使命というものを背中に背負いながら、しかし一方において不良債権を減らしていく努力もいたさなければならぬと思っております。
○紙智子君 今、系統金融機関でもこの不良債権処理と関連して貸し渋りや貸しはがしという事態が起きています。来年収益が上がらないそういう農家に対しては融資できないということとか、負債の多い農家に対しては離農勧告を行うというような事態があります。そういう事態が更に強まることになりますと、農林漁業の危機にもつながっていくというふうに思います。
 不良債権といいましても、先ほども議論の中で出ていましたが、農林漁業の場合は、やっぱり自然条件のリスクとか、それから政治災害というべき問題、BSEもそうでしたし、それから輸入の急増というのもそうだと思います。原因は外部からの避け難い要因というのが大きいわけです。しかし、農地やあるいは漁場があれば、時間は掛かるけれども、収入が発生していく、返済の原資も生み出すことができるわけです。
 ですから、不良債権処理でもって農家や漁業者を突き放すということではなくて、いかに経営を上向きにさせるのかと。その点での政治とやっぱり団体と関係者の努力が必要だというふうに思うわけですけれども、この点、大臣の御認識はいかがでしょうか。
○国務大臣(大島理森君) 民間金融機関、つまり系統以外の市中銀行等の中に占める不良債権と言われる割合と、系統金融の中の占める割合というのは、系統金融の方が少のうございます。しかしながら、不良債権と言われるものの中で九割はある意味では農外貸し、農業融資以外のものでございます。しかし、一割はあるじゃないかと言われればそのとおりでございますけれども、私どもはそういう中にあって、先ほども申し上げましたように、農業者が返済に支障を来すようになった場合には、農業者の経営再建が本当に可能かどうか、ここをやっぱり適切に見極める必要があるんだと思います。
 今、委員がお話しするように、そこに農地があるから、海があるから、漁港があるから、まあ五十年、六十年掛かれば何とか返せるんじゃないかと言われればそうかもしれません。だけれども、そうであってはなかなかこれは、幾らその系統金融の個性、特性があったとしても限界がやっぱり金融システムの中にあると思うんです。
 ですから、経営再建が可能かどうかということをまず適切に見極めることが重要であり、そういう再建可能であれば、償還条件の緩和だとか負債整理資金の融通を行い、農業者の再建を積極的に支援していくということを基本にしながら対応できるようにしてまいりたいと思っておりますし、負債整理基金につきましては、御承知のように、昨年、抜本的な見直しを行いました。近代化資金などの制度資金については最高十年間の償還負担を一括前倒しで融資できるようにいたしましたし、負債整理を行いつつ前向きな経営展開を図ろうとする者にも資金融通ができるように改善を図ったところでございます。
 もし経営の改善が難しい、どうしても、どう考えても再建が難しい場合には、その経営状況を更に悪化させるような、そういう追加融資を行わないでやはり土地や施設等の売却を含めた整理などを行う、そういうことが必要と考えておりまして、あくまでもしかしそれは農業者との協議が前提であると思っております。
○紙智子君 系統金融検査マニュアルの農林漁業者・中小企業融資編というのが作られています。前の武部大臣のときに質問して、私、質問をさせていただいたんですけれども、債務者の区分などに当たって、一般の金融検査マニュアルの機械的な画一的な適用にならないように農林漁業者の実態を把握してという趣旨であると思いますけれども、同時に協同組合機関としてその系統金融機関の自己査定の尊重というのは非常に大事で、前提にならなければならないというふうに思うわけです。
 そこは、このマニュアル等を実際の検査の中に本当に位置付けられているのかどうかということについてお聞きします。
○政府参考人(田原文夫君) ただいま系統金融検査マニュアルのお話でございますけれども、系統金融検査マニュアル、この中の特に検査マニュアルにより検査を行うに際しての留意事項というところでございますが、系統金融機関が自己責任の原則の下でそれぞれの規模、特性に応じまして、より詳細な自己査定等のマニュアルを自主的に作成し、また業務の健全性あるいは適切性の確保に努めることを期待するということをまず触れております。
 また、その上で、系統機関が行った自己査定がこのマニュアルの、系統金融検査マニュアルの字義どおりに行われていない場合でも、当該系統金融機関の業務の健全性あるいは適切性の確保の観点から見て、対応が合理的なものであればそれは不適切とするものではないんではないかと、かような趣旨のことをうたっておりまして、私どもといたしましては、こうした系統金融機関が行います自己査定検査結果の検証、これにつきましては、検査官が当該系統金融機関と十分意見交換を図り、系統金融機関の規模ですとか特性を踏まえまして、実態に即した検査を行うようにと、かように指導しているところでございます。
○紙智子君 貸付先の相手が破綻懸念先の債権だというふうに言われると、農協は引当金を大幅に積まなければなりません。かつ融資も規制されるということでは、農協にしても農民に、農家にしても大変大きな問題です。
 私は、ある組合長さんとお話をしていろいろ伺ったんですけれども、さっき大臣がお答えになったことともかかわるんですけれども、いかに再建できるのかということを判断しなきゃならないというふうにおっしゃったわけですけれども、なぜやっぱり今経営状態が大変になっているかということの要因としては、様々なやっぱり外部からの避け難い要因も絡んでなっているという事態があるというふうに言いました。
 それで、私、その組合長さんがお話しされた中で、今大変になっている組合員の状況というのは、例えば九二年のときですか、新政策というのが出されて、九四年のときからですかね、実際に規模ですとか、二十ヘクタールぐらいの農家をどのぐらい作るとか、それから担い手の政策ということで五年間とか十年間とか、そういった形で計画がそのとき示されて、これは米を本当に推進していくための政策なんだということで、それであればということでその計画を進めてきたと。言ってみれば、そのときにもう本当に積極的に前向きに、じゃそれに沿って規模を更に拡大していきましょうということで、意欲を持って取り組んできた農業者の人たちが今一番大変な状況になっているんだということなんですよ。
 結局、その後どうなったかというと、価格が御承知のようにどんと下がってきたわけですよね。そして、価格が下がるだけじゃなくて土地の値段も下がると。そうすると、資産評価というのがやっぱりどんどん下がってきているわけですね。そうすると、実際にこの資産評価で今五千万とかいう場合では、買戻しするといったときには七千万とか、赤字になってしまうと。それについては、今これは破綻懸念先だということで評価されるわけですよね。
 そうすると、これまでの一連の経過を知っている農協としては、本当に積極的に前向きに頑張って国の方針に沿ってやってきたことがこういう事態になっているわけですから、そこに対してやっぱりお金を積んで、何とかこれから先頑張ってやれる農家なんだ、ここはという立場で、今必死にやっているわけですけれども、一方からは厳しくそれはもう破綻懸念先でどうなんだということで言われて、もうそのやり取りでもって、口を酸っぱくして説明してもなかなか理解してもらえないというふうな事態があるんだということが言われているわけですよ。
 一番その実態を知っている当該の農協などがこの農協経営に責任を持っている役員の判断と、ここを尊重するということがやっぱり前提だと思うんですよ。そこをやっぱり重視すべきだということをむしろ農水省として明らかにしていくということが必要じゃないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(田原文夫君) ただいまの御指摘でございますけれども、確かに余り一律にやるという趣旨のものではないという意味におきまして、先ほどもお答えさせてもらいましたけれども、系統金融検査マニュアル、こういったものにおきましてはそうした実態等も十分踏まえた上で対応するようにと、少なくとも機械的、画一的な運用にならないようにというふうな、実態に即した検査の実施ということは求めているところでございます。
 ただ、他方、金融機関でございますので、当然のことながら貸出し先という相手もございますが、その資金を出していただいておられます貯金者、こういった立場もございまして、そこは、野方図になるということによりまして金融機関としての農協、これが揺らぐことは他方問題でございまして、そこはそうした両方の兼ね合いを取っていただきながらやっていただくことがまた必要であるという面もあろうかというふうに考えております。
 いずれにいたしましても、私どもといたしましては、こうした系統金融検査マニュアル、これの具体的な適用に際しましては、業種等の特性を踏まえまして債務者の実態把握、これを十分にやっていただきたいということ、そして農林漁業の経営の実態に即しました適正な検査の実施、こういったことに努めているところでございます。
○紙智子君 この問題については、大臣についてもちょっと伺っておきたいんです。今の問題について大臣の認識、農水省としてやっぱり明らかに打ち出すべきじゃないのかと。
○国務大臣(大島理森君) 金融検査マニュアルは金融庁が作成した、そういうものとある意味では基本的に同一内容に基づいて実施をするというのは、いわゆる先ほど来何回も申し上げますように、金融という世界においての同一的機能性という観点から、私はそこはまず一つの基本であろうと思います。
 しかし、その中にも、系統金融機関の規模や特性を踏まえ、機械的、画一的な運用に陥らないように配慮することが明記されているわけでございまして、検査の運用事例集を公表するということをしているわけでございますが、基本的に委員がお話しされたように、本当に再建できるのであれば、一生懸命頑張ってこのぐらいの年数で再建計画が見える、本人もそういう意欲がある、そういうものはやはりそれぞれの事例に即して判断して、できるだけそういう方向に向かわせるようにしながら系統金融機関の特性を生かせるようにしなきゃならぬと思っております。
○紙智子君 それにかかわって、もう一つ軽種馬の問題についてもお聞きしたいんですけれども、私が訪ねたサラブレッド、日高は、北海道の日高というところはサラブレッドの産地でもあるんですけれども、この農協の組合長さんは、今まで銀行の資金を借りていた生産者も銀行の貸付けが厳しくなって、今貸さないという状況になっていると。農家の土地資産価値も下がって担保価値も下がって大変だというふうに言っています。単純に数字だけで見ると債務超過だということで切り捨てるということもできないということで、非常に苦労して独自に、系統内部の貸付けの厳しい審査もあるわけですけれども、そういう中で何とかしてやってきているわけです。
 地域の経済もこの軽種馬生産に支えられていて、この地域は農業粗生産の八割が軽種馬なんですね。だから、それが、馬のところがつぶれてしまうと、本当にこの地域自身が成り立たないという状況になるわけですけれども、今のままでいくと本当に立ち行かないと。一律の押し付けをやるべきじゃないということが言われているわけですけれども、農協もやはり限度があると。それで、本当に農協自身も力がだんだんやっぱり大変になってきている中で、このままの状況では本当に日本の馬の生産という、産地そのものが成り立たない状況になると。
 せめて、この中央競馬会の益金を直接生産者に融資するとか、転業の対策なんかと併せて農水省として対策を取ってほしいという要求出されているんですけれども、これ、大臣、是非お答えいただきたいと思います。
○国務大臣(大島理森君) 青森県も、かつてのような主産地ではございませんが、主産地の一部になっております。
 今、委員がお話しされたのは、金融という問題の部分ももちろんその中にありますけれども、その軽種馬生産農家というものに対して、特にそこにどおんと依存している日高とかそういうところに対しての政策、対策をどう考えているかという総合的なお話のように私は伺いました。
 そういう状況から、地方競馬は今大変赤字が続いておりまして、中津、新潟、宇都宮、益田、こういうところからの撤退を表明するなど非常にマーケットが狭まっております。したがって、軽種馬生産の状況も非常に悪くなってきているのは事実でございますので、金融マニュアルというのは、先ほども申し上げましたように、ある業種には甘くてある業種には厳しいという、そういうふうなことはある意味ではできない分野ではあろうかと思います。
   〔委員長退席、理事田中直紀君着席〕
 いずれにしても、そういう状況は私どもも大変危惧しておりますので、生産地に派遣をしてみまして、生産者から直接状況を聞きながら今後の軽種馬生産対策を検討してまいりたいと、このように思っております。
○紙智子君 次の質問に移らせていただきます。
 不良債権の発生に対して、これを解消していく農産物価格の安定など、政治の努力が必要なわけですけれども、同時に、いかにして借金を返せるかと。
 一つは負債整理資金の活用の問題です。この点で、昨年から新しく公庫資金でできた負債整理資金についてなんですけれども、北海道のある農協では二十五件申請をしたと。第一次審査を通ったのが十一件だったと。
 はねられた理由は何かというと、一つは、本人と農協で作った経営改善計画について、平成十七年以降の転作奨励金の収入が認められないということではねられたというんですね。お米から経営を、米だけじゃ大変だということでハウス栽培とか花卉栽培に切り替えると。それで、負債整理のために、こういう新たな作物の収入と、それが定着する上でも転作奨励金を収入に入れるというのはこれは当たり前だと、経営改善計画を立てるのは当然だというふうに思うわけですが、そこでお聞きしたいんですけれども、農水省はその収入を認めないというような指導をされているんでしょうか。
○政府参考人(川村秀三郎君) 負債整理資金の関係でございますが、経営改善計画を作成するという、その中にいろんな償還計画等も入るわけでございますが、一般論で申し上げまして、水田農業経営確立補助金等の補助金も、その交付を受けることが確実であれば当然収入として計上することは可能でございますし、御指摘のような指導をしているわけではございません。
 それから、更に申し上げれば、その融資審査に当たりまして、当該農業者が生産する作物の需給でありますとかあるいは価格動向がある程度変動しても償還が可能な、余裕を持ったものになっているかどうかということもやはり判断に当たっては必要なことだと考えております。
○紙智子君 実態としてそういうことがあるということなので、そこはきちっとつかんで指導していただきたいというふうに思うんです。
 それから、従来の負債整理資金、M資金と言われているものですけれども、これを借りた人の場合、その返済状況がどうだったのかということも一つの審査条件になります。
 ところが、先ほど来お話ししていますように、四年、五年前からの米価の下落で返済計画が滞って、逆に負債を増やしていると。これは言わば農家の責任じゃないですね、こういう事態というのは。やむを得ないと。この点を配慮して改善計画の審査に当たるべきだと思うんですけれども、農水省も都道府県や公庫に対してその点指導すべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(川村秀三郎君) やはり、負債整理資金等の借入れ申込みに当たりましては、その計画あるいはこれまで来られた経営の状況等はやはり十分踏まえた上でやらなくちゃいけないと思っております。
 先ほども言いましたように、既往負債の償還に支障があるという農業者の方でありましても、その経営状況でありますとか計画の実行可能性あるいは融資返済の可能性等をチェックいたしまして、再建が可能かどうかということを十分審査しなければならないというふうに考えております。
○紙智子君 輸入や不況やそういう農政の失政の結果として借金が増えると。その返済のための負債整理資金を借りようと思っても借りられない。こういう矛盾はなくしていかなければいけないと思うんです。
 しかも、この負債整理資金は、もう申請の段階から、最も大変な、北海道ではD階層というふうに言われているんだそうですけれども、利子、元金、これが払えない、いわゆる破綻先というんでしょうか、こういうところがはねられると。北海道でも道からそういう指導が来ているというふうに言っているわけですけれども、農水省はそういう破綻先の階層ならすべて駄目という立場を取っていないと思うんですけれども、これいかがですか。
○政府参考人(川村秀三郎君) 正に負債の状況というのは、その実態は区々であろうと思います。個々の状況をよく判断することが必要だろうと思っておりますので、画一的に排除するとか採用するとかという指導はしておりません。
○紙智子君 次に、公金の問題についてお聞きします。
 ペイオフ解禁の延長は今の状況で言うと当然だと思いますが、いわゆる公金について、決済性預金以外の公金についてお聞きします。
 全国で農協を指定金融機関にしている市町村の数というのはどれだけあるでしょうか。
○政府参考人(川村秀三郎君) お答えいたします。
 市町村のうち農協を指定金融機関としているところは、平成十四年六月末現在で七百十七市町村でございます。これは全市町村中約二二%となっております。また、このほか農協を指定代理金融機関としている市町村が五百八市町村で、全市町村中約一六%。それから、収納代理金融機関としている市町村は二千七十一市町村で、全市町村中約六四%と、こういう状況でございます。
   〔理事田中直紀君退席、委員長着席〕
○紙智子君 今お話しいただきましたように、この指定金融機関になっていないところも含めて、農協が公金を扱い、その他の地域の金融機関同様の、地域の経済にとって果たしている役割というのは大きいと思うんです。全国には銀行や信用組合や信用金庫の本支店、出張所がない町村数が、九九年ってちょっと古いデータですけれども、五百二十九町村と。その中で農協は大事な役割があるわけですけれども、その農協も支所をカバーしているわけで、本所のない町村が三百八十七あるわけです。
 本院にも、このペイオフ全面解禁の延期と地方公共団体の公金預金をペイオフ対象から除外して全額保護を求める意見書が提出されています。今年三月からの意見書で百四十一と。北海道からも百十七件寄せられているんですけれども、この抜本対策というのは、やはり要望にあるとおり、全額保護する措置を取る以外にないと思うんです。
 これは金融庁にお聞きしたいんですけれども、公金に限って実施する考えはありませんか。いかがでしょう。
○副大臣(伊藤達也君) お答えをさせていただきたいと思います。
 地方自治体の公金の取扱いについては二つの局面がございます。
 一つは、収納代理金融機関から指定金融機関への収納金の移転、そして二つ目の局面が、指定金融機関による歳計現金の保管、出納という局面でございます。
 まず第一の局面でありますが、代理金融機関から指定金融機関までの収納金の移転につきましては、今回の処置により、仕掛かり中の決済資金として全額保護の対象となっております。
 そして、二つ目の局面でありますが、指定金融機関による歳計現金については、当座預金に預け入れられているものは決済預金として全額保護されることになり、普通預金に預け入れられている場合でも、当座預金又は金利の付されていない普通預金への預け替えを行うことにより全額保護の対象となっております。
○紙智子君 日本では、外郭団体など法人格のあるものは別として、市立であれば病院や学校も同じ一つの市に名寄せされるわけです。
 アメリカの例ですけれども、例えばコミュニティー銀行では、公務員や代理人がその職務に基づいて開設している預金は、当該公務員や代理人を独立した預金者として十万ドルまで保護していると、一千二百万程度ということですけれども。本来の意味の地方公共団体である郡や市町村に限らず、連邦や州の預金も含めて等しく保護の対象で、まだ十万ドルでは不十分だという批判も出されていると。こういう点、御存じだと思うので、是非、最初から駄目ということじゃなくて、よく検討していただきたいと。
 ペイオフ二年延期ということで、農林漁業者にとって農林業が撤退することになりかねない、そうならないようにしていただきたいという、最後、決意を大臣の方からお願いいたします。
○国務大臣(大島理森君) 本当にやる気があって再建可能な農業者に対してしっかりと対応できる、そういうことも重要な要素として取り組んでまいりたいと、こう思っております。