<第155回国会 2002年11月7日 農林水産委員会 第2号>


平成十四年十一月七日(木曜日)
   午前九時開会
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  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○農林水産に関する調査
 (WTO農業交渉に関する件)
 (米政策の総合的な見直しに関する件)
 (牛肉在庫緊急保管対策事業に関する件)
 (地球温暖化防止森林吸収源十カ年対策に関する件)
 (大島農林水産大臣前秘書官の公共事業口利き疑惑に関する件)
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○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 まず初めに、大臣の前秘書官の口利き疑惑についてお聞きします。
   〔委員長退席、理事常田享詳君着席〕
 問題は、お金を受け取ったかどうかということなんですが、この秘書官とコンサルタント会社の社長のA氏、この間で食い違いがあるわけです。それで、大臣はA氏から事情を聞いていないと。なぜ聞かないのかということについて、先般の衆議院の農水委員会で質問が出て、大臣はこれに対して、秘書に対しておまえはどうなのだとやる立場にはあるが、A氏に対してはやる立場にないというふうに答えられました。A氏には聞く立場にないということですね。私はこれはおかしいと思うんですよ。大臣として、あなたはやっぱり真実を明らかにする責任があるわけです。
 それで、A氏については、具体的に手帳を示して、いつ、どこで、どのようにして宮内秘書に渡したのかと克明に告白をしているわけです。ですから、それをきちんと聞いて、それに対して事実が違うというのであれば具体的に証拠を挙げて証明する、その責任があなたの側にあると思うんですね。ただそういうことはないんだということで宮内秘書の言い分を報告するだけで、これでは調査にならないと。
 また、この宮内秘書の自宅購入資金の出所の調査の報告もありましたけれども、それだけではお金を受け取っていないという証明にはならないんですね。A氏は週刊誌でも、私の発言がうそだと言うんだったら直接対決しても構わないと、そこまで言っているわけです。それなのに、なぜあなたはA氏から事情を聞こうとしないんですか。
○国務大臣(大島理森君) A氏の発言、そこに基づく報道が様々に出ております。そして、そのことに対して私は言わば、前秘書であったとはいえ国会議員と秘書の関係の中でなすべきことは、そう指摘されていることに彼及び彼の家族も含めて、そしてまずしっかりと問いただして、それを裏付けるできるだけの資料を集めて、そしてお答えすることが私の責務と思っております。
 そういう経過の中で、最初の問題提起、報道は、その家の原資に充てられたということであるわけですから、衆議院でもあるいは参議院でもお答えを申し上げさせていただきましたように、彼の報告と、そして彼のプライバシーである様々なその資料も取りそろえて報告をし、今それを衆議院の予算委員長にその処理をお願いしているということであるわけです。
 ですから、私の責務は、そういうふうなA氏からの度重なるそういう情報に、あるいは発信に基づく情報に対して、やはり前秘書からしっかりと厳しく問いただし、報告を受けてお答えすることが私の責務だと、このように考えております。
○紙智子君 もう同じ答えの繰り返しなんですね。今お答えになったと思っているかもしれませんけれども、今の答えを聞いて納得する人はだれもいないと思うんです。
 私は、なぜA氏に直接聞かないのかというふうに聞いたわけです。結局、そうしないというのは、事実を明らかにしようということでの姿勢そのものが私はこれ疑問視されると思うんですね。あなたがA氏から事情を聞かないということは、結局、お金を授受したとあなた自身も判断せざるを得ないところに追い込まれることを恐れるからじゃないんですか。いかがですか。
○国務大臣(大島理森君) それは違います。
○紙智子君 それであれば、納得いくようにやるべきだと思いますよ。
 それから、もう一つ、先般の衆議院の予算委員会で我が党の佐々木憲昭議員が明らかにいたしましたが、八戸の市民病院の建設に当たって元請や下請業者など十八社から大臣は献金を受けていると。九五年のときには合わせて百六十二万円、九六年のときには一千五百四十四万円、そしてまた九七年のときには百九十三万円ということで受けているわけです。宮内秘書はこの工事で業者を紹介したということを認めているわけで、落札直後のこの九六年に一気に十倍に増えているというのは、いかにもこの口利きのお礼的な意味を想像させるものだと思うんですよ。
 大臣は、このとき佐々木議員の質問に対して、今初めて教えていただいたというふうに言いつつも、その見返りとかなんとかではないというふうにお答えになったわけですけれども、見返りでないというふうにどうして言えるんですか、その根拠は何ですか。
○国務大臣(大島理森君) 佐々木先生から御指摘をいただいて、私も調べました。九六年の資料をいただいて調べました。その二十一社のうちの指摘の九六年に献金額が増えているのは四社でありました。そして、そのことについて伺いましたら、言わば私の献金の状態を見てみますと、政治活動が活発になった日にはパーティーやその他において増えております。二〇〇〇年もやはり増えております。
 そういうふうな政治活動が活発ということは、選挙が近くなって政治活動が活発になるということでございますが、そういうことにおいて特別にそういう方々に地元でも御支援を、そういう方々というのは今までずっと御支援をいただいた方々でございますが、そういう方々にお願いをして、一九九六年だけが増えているのではなくて、そういうふうな経過がありますと。したがって、そういうことに特別に御支援をいただいたという報告で、それは法にのっとり適正に処理されたという結果であると、このように御理解をいただければと思います。
   〔理事常田享詳君退席、委員長着席〕
○紙智子君 選挙があったからということを言われるんですけれども、だからといって自動的に増えるということは、そういうことでもないと思うんですね。
 それで、この一件一件の業者数で、業者で見ますと、それまでずっとゼロだったのがいきなり九六年にどんと出て、その後またないという形もあるわけですよ。ですから、実際、工事発注の関係について、お金を受け取った方がいるわけですから、その人あるいはその業者、渡した業者からお聞きになったんですか。その上でおっしゃっているんですか。
○国務大臣(大島理森君) 御指摘をいただきましたので、この全体像についてよく調べて、今のスタッフも含めて報告しなさいという結果、確かに御指摘のいただいた通常の年に比べて増えてはおりますが、この年、選挙というものがあり、パーティーその他において特別に御支援をいただいたと。自動的にということではございません。二〇〇〇年もやはりそういうふうな状況でございます。
 日ごろ、そういうふうな中で活動が活発になれば、どなたでも、どの政党でも、やっぱりそういうふうなお願いをしながらお志をいただいて、そして活動するものと私も思います。そして、それは適正に法にのっとって処理されたことであり、そのことが今残っているということだと思います。
○紙智子君 直接お聞きになったんですか。業者や、それから受け取った方から直接聞いたんですか。
○国務大臣(大島理森君) 私は、うちのスタッフに対して、こういうふうなことについて調べなさいということを言った結果を今報告しているところでございます。
○紙智子君 結局、あなたのやり方というのは、相手に対しては聞かない、そして身内から聞いているわけですけれども、そして調査をしないと。それでいて、そんなことはないということで、証拠も示さないで結局言っているだけだと思うんですよ。そういうやり方というのは私は通用しないと思います。ここは参議院の、それこそ良識の府と言われているところでそういうやり方は通用しないと。
 鈴木宗男問題で秘書が逮捕されたときに、議員にはすべて秘書の監督責任があるというふうにあなたは言明いたしました。それは、あなた自身の責任もあいまいであってはならないと思うんですね。しかも、あなたは、予算の半分が公共事業である農水大臣の職にもあると。ですから、自分の疑惑の解明なしに農政の適正な実行ができるかという問題でもあると思うんです。自分の疑惑の解明、責任ある全面的な調査と報告ということで、是非これ、大臣に求めたいと思います。
 そして、併せて委員長に要求いたしますけれども、先ほども出ていましたけれども、当委員会としても疑惑の積極的な解明ということで宮内前秘書とコンサルタント会社A氏の参考人招致を求めたいと思います。御検討ください。
○委員長(三浦一水君) ただいまの件につきましては、後日理事会において協議いたします。
○紙智子君 次の質問に移ります。タマネギの廃棄の問題です。
 今年の四月にタマネギの十三年度産の大量廃棄が行われました。今年の収穫が終わろうというときになってまたしても廃棄処分ということで、北海道でいいますと、四月七千五百トン、これ廃棄したわけですけれども、今度、六倍に当たる四万八千トンを市場に出す前に処分するということで、もう価格の調整をせざるを得ないという事態になりました。これに対する対応で重要野菜の緊急需要調整事業というのがありますが、これについてお聞きします。
 それで、これは、指定野菜の価格安定対策事業における平均価格の四割相当を交付する、そのうち半分を国が補助するということですけれども、目的ということでは、この需給調整で廃棄して、その後、次年度も再生産できるということを考慮するということでよろしいんですね、確認の意味で。
○政府参考人(須賀田菊仁君) おっしゃるとおりでございまして、野菜というのは、需要が固定的、貯蔵が利かないということで、作柄が変動すると価格乱高下しやすい。すなわち、豊作のときは暴落するということでございます。暴落いたしますと、作付け転換が容易でございますので、ほかの品目にいくと。そうすると、次期作におきまして作付けが減少して、消費者の望む新鮮でおいしいようなタマネギが供給されなくなるということで、需給調整をいたしまして八方手を尽くした後に、最後の手段として産地廃棄をするということでございます。
○紙智子君 次年度も作付けしてできるようにということなわけですけれども、そうであるならば、やはり必要な、その再生産に必要な生産費ということでいいますと、タマネギが一キログラム当たり約五十円程度と。これは実は北海道の統計調査事務所が行った九四年段階の計算なんですね。だから、実際にはもうそれ以上経費も高くなっていますし、もっと上がっていると思うんですけれども、現場でこの交付金が一キロ当たり三十円ということになっていて、しかし実際、その半分は積立てに回すわけです。そうしますと、実質的には十五円ということになるわけで、実際には廃棄の経費にも足らないというのが現場の実態なんですね。
 それで、次年度も再生産できるようにということであれば、私は、この交付金の算定について見直すべきでないかというふうに思うんです。特に、この十四年度の産について言いますと、十三年度産の結果に基づいて生産局が作付け指標を示しているわけですよね。その示したことに基づいて生産者が努力した結果がこうなっているわけですから、生産者の負担はこれ以上無理ということの中で、ここの、この基金の積立ての国の割合ですね、ここのところをやっぱり増やすべきでないかという地元からの要求も上がっているわけです。その点、いかがでしょうか。
○政府参考人(須賀田菊仁君) 御質問が二つあったように思います。
 まず、その産地廃棄にどれだけの単価が適切であるのかということでございます。
 やはり、圃場で生産された最終段階ですき込むという、廃棄をするということでございますので、私どもとしては、それまでの生産に要した費用に相当する額を交付金単価として交付するというのが適切であろうというふうに思っておりまして、それが先生言われました平均価格の約四割ということで、それが生産コストに相当する額ということでございます。この行為自体が全体の市況の回復に資するんだということに御理解を賜ればというふうに思っている次第でございます。
 そして、価格安定のための資金、これが地元負担が大変だというお話、実は北海道から昨年以来聞いております。
 確かに、価格対象を、価格安定対策の対象を増やすというようなことがございます。地方財政が非常に厳しいという事情を承知をしておりますけれども、私どもとしては、その地元の負担分については地方交付税措置の対象としておりまして、今度拡充した部分も地方交付税措置の対象とするというようなこととしておりますので、そういうようなことを用いられて、何とか負担部分も負担を願って、農家の価格安定の事業が円滑に進むようお願いをしておるという状況でございます。
○紙智子君 私、今回聞いた岩見沢のタマネギ農家の方は、十三年度も廃棄して、そして十四年度は作付けを減らしているわけですね。それでなおかつ廃棄しなきゃいけないとなったと。本当に廃棄して価格が戻る、回復できる保証があるのかというと、保証できますということは何もないわけですね。そういう中で、赤字だけが増えていくと。だから、このままもう続けることができないという状態に置かれているわけで、そこをやっぱり踏まえていただいて、県段階もいろいろ努力をしていますけれども、そこが十分じゃないということだからこうやって国に対して要請が上がっているわけですから、そこは是非検討いただきたいということを強く要求して、次に、輸入タマネギの問題について質問します。
 価格の下落について、前回聞いたときには、豊作が原因だということを言われたんですけれども、本当に輸入タマネギの影響がないのかということで、これまた本当に生産者のところでは強い疑問というのが広がっています。
 タマネギの輸入は、生鮮で見ると、九七年のときに十七万五千トン、九八年になりますと二十万トン超えて、九九年になると二十二万三千トン、二〇〇〇年、二〇〇一年と二十六万トンということでどんどん増えていったわけですね。当然それに価格がしたがって下がってきたと。
 今年に入って輸入量は減ったというふうに言われたんですけれども、今六割程度ということなんですけれども、国内で実際にこうやって廃棄している状況なわけですから、当然のことながら生鮮の輸入は規制するということと併せて、これ以外にも統計に表れない形で入ってきているものがある、加工ですね。カットしてソテーして輸入されているというものもあるわけですけれども、これについては実態をつかんでおられるんでしょうか。
○政府参考人(須賀田菊仁君) 輸入の問題でございます。
 一つはカット野菜の問題でございまして、タマネギでいいますとむきタマ、いわゆるむきタマネギの輸入が商社に聞きますと結構あるということでございます。ただ、このむきタマネギの場合は貿易統計上は生鮮の中に含まれるということでございます。
 私ども、あと地元から聞いております、また先生からもこの前お聞きをしたんですけれども、いわゆる調製品、ソテー等の調製品で入っているのではないかということでございまして、これは貿易統計に独立した分類はございません。独立した分類がございませんで、恐らく冷凍調製品、その他冷凍以外調製品、両方に含まれているんではないかというふうに思っておりまして、そういうことで正確な数値の把握が困難でございますけれども、今後、業者からの聞き取りでございますとか中国の現地の情報収集でございますとか、いま少し輸入実態の把握に努めていきたいというふうに思っております。
○紙智子君 これから把握していくということなんですけれども、タマネギと関連して、最近中国産のカット野菜の輸入も業務用として入っていると。それで、ジェトロの資料でも書いてありますし、中国ビジネスレポートの中で、今後上海や山東省青島から輸出する、二〇〇三年の五月の売上げで予測を今期の二倍にするという見通しを持っているということも書いているわけですね。ですから、こういうのを無制限に認めてしまいますと、幾ら産地で生産調整しても農家に更に追い打ちを掛けることになるということでは、こういうものも実態を把握していただきたいということを併せてお願いしたいと思います。
 ちょっと時間の関係もありますので、次に移らさせていただきます。構造改革の特区の問題です。
 それで、農業生産法人以外の法人の農業参入を認めるということについて質問します。
 農村は今高齢化や担い手不足で耕作放棄に悩んでいる、地域崩壊も危ぶむということまで言われているわけですが、今度の特区に対して確かに農村地帯の期待もあるのも事実だと思います。しかし、問題はその期待に本当にこたえて農地と地域農業を守るものなのかどうなのかということになりますと、私は非常に危ういものがあると言わざるを得ないと思うんです。
 まず、農水省は、農業基本法の論議の際にも、家族経営が日本農業の基本だというふうにしてきたと思います。二〇〇〇年の農地法の改正で株式会社形態の農業法人を認めたときにも、この株式会社の形態の農業生産法人も家族経営の発展の一形態だというふうに述べられました。この家族農業経営の発展という方針を堅持してきたんじゃないかと思うんですね、これまで。今回、一部の地域であれ企業を農業の担い手というふうにすることは、これまでのその方針とも反するんじゃないのか、農水省としての方針を変えたのかということにもなると思うんですけれども、いかがでしょうか。大臣にまずお聞きします。
○国務大臣(大島理森君) 基本方針を変えたわけではございません。農業の主体、これは私どもは、依然として家族農業経営というものが大宗を担っていただいていかなきゃならぬということは基本であろうと思います。
 そういう中にあって、しかし多様な法人形態の在り方、法人としてみんなで寄り集まって、そしてやっていくというのも、私は一つのこれからの在り方であろうと、こう思いますし、また今度の特区については、今、委員が御指摘いただいたような問題提起もある意味ではありつつ、したがってそこは農地の貸し借りの世界で、株式会社の皆さんに一定の要件を設けてやってもらおうというふうにしたわけでございます。
 以上です。
○紙智子君 しかし、実際に特区で企業の農業参入ということが行われれば家族経営が脅かされることになるんじゃないかと私はやっぱり非常に危惧するわけです。
 具体的な問題についてお聞きしたいんですけれども、五日に法案が提出されましたね。それで、その中で農業法人以外の法人の農業参入の特区を認めるのは「現に耕作の目的に供されておらず、かつ、引き続き耕作の目的に供されないと見込まれる農地その他その効率的な利用を図る必要がある農地が相当程度存在する」区域ということで、要件を明らかにしています。実際、企業への貸付けの対象となる農地というのはどのような農地になるのか。農水省として条件を付けるつもりがあるのか。既に耕作されていない農地に限定するとか、そういうことがあるんでしょうか。いかがでしょうか、局長。
○政府参考人(川村秀三郎君) 構造改革特区の中で、農業法人、農業生産法人以外の株式会社等の法人の農業参入を可能とする構造改革特区でございますが、今、委員が御指摘をされましたように、特区法案の十六条においてその対象地域が決められております。それで、その対象地域につきましては、今申されたように、耕作放棄地あるいは低利用農地が地区の相当程度存在すると認められる地域の中で、その中にある農地は対象になるわけでございます。
 したがいまして、その要件としまして耕作放棄地等が相当程度あるわけでございますが、具体的な貸付対象農地は、耕作放棄地に限定されるわけではなく、その地域の遊休農地の解消あるいは効率的利用の観点から判断されるべきものと考えております。
○紙智子君 今耕作されていない農地に限定するというわけでもないということですね。そうしますと、耕作されている農地でも企業が借りられるということになりますと、優良農地を地域の担い手が取得することが困難になっていくんじゃないかと思うんです。
 営利を目的とする企業が農業に参入する場合に、その賃借対象となる農地というのは、やっぱり平地で一定のまとまっているところで耕作条件が良くて経済性も追求できる、そういう農地への参入を条件というふうにするのが当然だと思うんですね。採算に合わない条件の悪い農地は使わないわけです。そうなった場合に、結局地域の優良農地が企業に集中していくという事態になるんじゃないのかなと。企業を誘致したい自治体が優良農地を集めて企業に貸し出すということも可能になるんじゃないでしょうか。そういうことを歯止めするというのが何かあるんでしょうか。
○政府参考人(川村秀三郎君) 今回の特区の仕組みでございますけれども、特区におきまして農業に参入する企業等に農地を貸し付けるということができる主体といたしましては、一つは地域農政の推進主体でございます地方公共団体、それから担い手への農地集積等農地保有の合理化を行う農地合理化法人という、こういう言わば地域におきます農業の担い手の育成に責任を有しております公的主体に限定をした仕組みということでございます。したがいまして、具体的な農地の貸付けに当たりましては、こうした公的主体が地域の実情に応じて、また特区の趣旨を踏まえまして適切に対応されるものというふうに考えております。
○紙智子君 結局、そうしますと、その農業主体ということは、地域、自治体なんかも入るわけですよね。そういうところが判断すればそこが優先した方向になってしまうということだと思うんですけれども、全国農業会議所が非常に早い段階で「農地制度の見直しに対する強い懸念の表明と慎重な検討に関する申し入れ」というのを出しています。株式会社一般の農業参入に対して、これまでの経過からいえば余りにも唐突だと、農村現場に不安と混乱を招くということで指摘をしていますし、株式会社に一般の農業参入を認めることになれば農業の担い手政策の基本を変えることになる、農村現場の農政に対する信頼が揺らぐことになる懸念があるというふうに言っているわけです。その懸念のとおりに、結果的に家族経営を圧迫し経営が追いやられることになる危険があるというふうに思うんですね。
 私、最大の問題は、今農村が悩んでいる人手不足、耕作放棄の解消がこの特区でもってできるのかどうかということなんですね。現在耕作継続が困難になっている地域というのは、飛び地や条件不利な農地が多くを占めているわけです。地域の担い手の農家や農協や自治体が設立したこの受け止める組織が採算を度外視して地域農業維持のために耕作しているという実態です。
 例えば、財団法人の農政調査委員会が公的機関による農地の管理の実態をまとめているものを出しているわけですけれども、地域で耕作が困難となった農地の取りあえずの受け手となっている農地保有合理化法人資格を有する市町村の農業公社の実績ということの中で見ても、公社が借り入れたんだけれども貸手が見付からないということで、そのままで抱えてずっと滞留している状況がその中で克明に示されているんですね。
 ですから、今、そういう公社への貸付けを希望する農地所有者が、一方では相手がいないんですね。しかし、貸したいという人たちが多くいると。そういう中で、公社が農地の最後の受皿にならざるを得ないという状況なわけですけれども、これが本当に今度のこの特区の導入で解消するのかどうかと、そういう見通しがあるのかということについてどのように考えていますか。
○国務大臣(大島理森君) 紙委員も御承知だとは思いますが、農地の流動化のその形状を考えますと、八割が今賃貸借に移っております。そういう現状をしかと踏まえながら、私どもは、一方、農業者の様々な不安を考えながら今の特区の構想の案を作らせていただきました。
 じゃ、特区の構想は耕作放棄地を解消できるのかという御指摘でございますが、広い目的の一つとしてそういうこともございますけれども、それをやることによって全部解消できるかというと、それはなかなか困難かもしれません。しかし、そういうところにも、例えば市民農園というふうなそういう開設者の範囲を拡大して利用していただくようなアイデアを持っているところもございます。そういうふうな意味で、この耕作放棄地という問題は、ある意味じゃ今の日本の農政の象徴的な問題の一つであるかもしれません。貸したいけれども借りてくれる人がいない。ある意味じゃ、売りたいけれども買ってくれる人がいない。
 先生は、家族経営で農地を拡大することに企業が邪魔する結果にならないだろうかという御指摘もいたしました。しかし、家族経営で今農地を買える、そして規模拡大をしていくという農家はどのぐらいいるんでございましょうか。逆に言うと、総合的にそういう農地の流動化というものをどう考えるかという意味で、私はもう一度農地法そのものの在り方というものを勉強してみたい、ゾーニングの在り方が今までのようでいいのか、そういう中で勉強してみたいということで、農地法の問題についても農林省の中で今勉強会を立ち上がらせました。
 そういうふうなことの中で、特区のこの構想を描き、そしてそういう中でまた農業の在り方を我々も更に研究しながら努力していきたいと、こう思っております。
○紙智子君 時間になってしまったのでちょっと後、続けられないんですけれども、要するに言いたいことは、いろんなやっぱり可能性があるわけですよね、その導入することによって。それで、やっぱりそういう可能性をいろんな角度から慎重に検討しなければならないという、そうでなければ後に禍根を残すということも含めて非常に大事な問題だと思うだけに、そのことを最後に強調して、質問を終わりたいと思います。