<第154国会 2002年6月6日 農林水産委員会 第13号>


第154回国会 農林水産委員会 第13号
平成十四年六月六日(木曜日)
   午後一時開会
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  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○牛海綿状脳症対策特別措置法案(衆議院提出)
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○紙智子君 それでは、JAS法の質問に先立ちまして、生ジャガイモの輸入解禁問題についてお聞きしたいと思います。
 生のジャガイモは六一年に輸入自由化をされていますが、病害虫の侵入防止のために植物防疫法によって事実上輸入禁止状態にあります。しかし、二〇〇二年のアメリカ貿易障壁報告に取り上げられましたが、アメリカを始め各国からの輸入解禁要請が強まっているということで産地は危機感を強めています。
 現在、輸入解禁の要請が出されている国はどこで、そしてそれぞれの手続の進行状況がどうなっているかをお聞きします。
○政府参考人(須賀田菊仁君) 現在、生鮮のジャガイモにつきまして、今言われた輸入解禁要請が出されているのは四か国ございます。アメリカ合衆国とオランダ、チリ、ハンガリーでございます。
 この植防上の輸入解禁のためにいかなる手続、段階を踏むかということでございます。
 まず最初に、その要請国、相手国が試験調査計画というのを作成するわけでございます。害虫の殺虫でございますとか、一定の地域を無発生エリアにするための検疫措置の確立を目的にいたしました調査でございますとか、そういう試験調査計画を作成をいたしまして、次にそれに基づきまして実際の試験調査をする、病害虫の殺虫試験でございますとかをやると。そして、その試験結果を我が方において評価をします。評価をした上で、我が国が現地確認に行きまして、現地確認が終えましたら、関係者による公聴会を開く、しかる後に解禁手続と、手続的には以上のような段階を踏むわけでございます。
 この四か国、どの段階にあるかということでございますけれども、チリのみが試験調査計画の作成段階、第一段階の作成段階でございまして、その余の三か国につきましては、要請の表明があったのみという段階にとどまっているわけでございます。
 いずれにしても、これ我が方、非常に重い病害虫でございますので、病害虫の我が国への侵入を阻止するための検疫措置ということが確立されない限り、輸入解禁は行わないという立場を取っているところでございます。
○紙智子君 アメリカは我が国の検疫制度を貿易障壁だということでねらい撃ちにしていると。
 昨年の十一月に米国政府が生バレイショを国内メーカーに直接搬入することで検疫措置を免除するように求めてきたということですけれども、これは事実でしょうか。事実経過はどうでしょうか。
○政府参考人(須賀田菊仁君) 米国との関係を申し上げますと、米国の植物検疫当局から平成十二年の十一月二十八日付けの書簡によりまして、生鮮のジャガイモを我が国加工工場に直接搬入することにより植物検疫措置を免除するよう要請があったわけでございます。
 これは具体的には、向こうの生鮮ジャガイモをコンテナに入れて封印をして日本の加工工場に直接搬入することにより免除してほしいという要請だったわけでございますけれども、我が国が最も警戒をしております病害虫でありますジャガイモシストセンチュウとジャガイモがん腫病菌に対しまして、我が国への輸入前に国内において消毒措置等のリスク管理措置を取っているわけじゃございません。単にコンテナに詰めて封印してこっちに送るだけでございますので、アメリカの主張ではちゃんとした検疫措置、病害虫の侵入防止措置が取られているわけではございませんので、平成十三年の十一月にサンフランシスコで開催されました十九回日米植物検疫定期協議におきまして、我が方から、輸入解禁措置は、病害虫の侵入防止の万全を期すため、リスク管理の観点から、輸入前までに、輸入の前までに米国内で実施される措置でないといけないと、したがってあなた方の主張は採用できないという回答をしているところでございます。
○紙智子君 要請されたというのは実際事実だったということなわけですけれども、このようなことが我が国にとってはやはり植物検疫制度を無視することだと、そして空洞化していくものだということでは今後も絶対に許されないというように思いますが、大臣の認識はいかがでしょうか。
○国務大臣(武部勤君) 植物検疫上の輸入に関しましては、生鮮ジャガイモの輸入を含めまして、病害虫に関するリスク分析を行いまして、病害虫の我が国への侵入を阻止するための検疫措置が確立されない限り、解禁しないということとしているわけであります。
 なお、我が国の植物検疫制度は、国内農業生産の安全を確保するという観点から不可欠なものでありまして、今後とも、植物の病害虫の侵入・蔓延防止を図るために植物検疫の厳正な実施を徹底してまいる決意でございます。
○紙智子君 万が一に我が国に未発生の病害虫の侵入を許すということになりますと、天敵がいないということも手伝って爆発的に増殖するというふうに言われています。そして生態系にダメージを与える可能性もあると。それが大きいからこそ、植物検疫でこの輸入禁止措置を取ってきたわけです。
 ジャガイモの場合は、国内未発生のジャガイモシストセンチュウ、それからジャガイモがん腫病というのもありますけれども、非常に重大な病害の侵入のおそれがあると。いったん侵入を許せば撲滅が困難だというふうに言われています。シストセンチュウでは、例えばダンシャクイモの場合は収穫が半分以下に落ちてしまうと言われているわけです。それで、抵抗性の品種の開発も進められているわけですけれども、続けて栽培すれば今度は抵抗性を破るセンチュウが発生するおそれがあるということも指摘されていると。
 侵入を許さないために輸入解禁には絶対応じるべきでないというふうに思いますが、再度、大臣の決意を伺いたいと思います。
○国務大臣(武部勤君) ただいま申し上げましたように、植物検疫の厳正な実施を徹底してまいる決意でございます。
○紙智子君 今、主産国北海道でバレイショというのは本当に重要な位置占めているんですけれども、輪作にとっても重要な作物だと。
 それで、がん腫病も、この病原菌というのは長いもので三十年にわたって生き続けるわけですね。土壌の中で生存すると。シストセンチュウのシストも、土の中で何か硬い殻のようになって十年もつというふうにも言われているわけですけれども、現在発生が見られない地域でも、土の中で眠っている状態で病原菌の胞子が生き続ける可能性も否定できないと。だから、発生した農地では、それの影響を受けるジャガイモを輪作体系の中に入れることができなくなりますし、もし侵入を許せば、ジャガイモだけでなくて他の作物も含めた輪作体系全体、ひいては北海道の作物、畑作全体にも影響を与えるということになります。
 たとえ輸出国の産地に対する検疫条件を付けたとしても、現地の検査が万能でないということは明らかで、そして、先ほどもお話ありましたけれども、輸入時の検査というのも抽出といいますか、サンプルの検査ですよね。ですから、侵入を完全に防ぐ保障はないというふうに思うんです。ですから、関係者はやっぱり水際で防ぐしかないというふうに言っていますし、病害虫を絶対に入れないという断固とした対応を取ってほしいというふうに言っているんですけれども、いかがですか。
○国務大臣(武部勤君) 私は、シストセンチュウでえらい苦労した一人でございます。紙先生、未発生と言いましたけれども、北海道、私の地元では、今から二十年ほど前にシストセンチュウが発生しまして、大変な苦労をいたしました。これを撲滅するには七、八年から十年掛かるということも経験してきておりまして、その恐ろしさというものを身をもって体験しておりますので、断固とした決意で対応してまいりたいと思います。
○紙智子君 以前、七〇年代に真狩村で発見されて確かにあるんですけれども、今私が言った未発生というのは、五種類ぐらいあるんですよね、もっとありましたっけ、そのうちの一種類は既にあるんだけれども、ほかのまだ未発生のものがそのほかにも種類があるという意味で、まだ未発生のが入ってきちゃいけないという意味で言いました。
 それで、大臣、今、北海道馬鈴しょ生産・流通対策検討委員会というのができていて、輸入を解禁した場合の経済的な影響の予測というのを発表しているんですけれども、これは御存じでしょうか。
 バレイショの輸入による価格の低下次第では、生食用のバレイショは全滅の危機にさらされることになるというふうに指摘しています。そして、北海道の地域経済社会にも甚大なマイナスの影響を与える可能性が非常に大きいんだと。ジャガイモというのは、農家にとっては重要な就業の場でもあると。そして、土地利用で輪作体系の不可欠の作物で、もしそれを失った場合にはそれに代わるものがあるのかということでは非常に重大な、単に一農作物にとどまらない、そういう問題として指摘をし、そして経済面でも、外国の安い価格のイモが入ってくることによってどういうダメージを受けるのかということでは慎重の上にも慎重に検討し判断されなければならないということを提言をしています。繰り返し大臣の答弁の中でも断固としての決意ということを述べられたので、是非その方向で頑張っていただきたいということを最初に話をしておきたいと思います。
 次に、JAS法について質問いたします。
 監視体制の問題ですけれども、偽装表示それから不正表示、この横行を防ぐということ、表示に対する消費者の信頼を回復するために罰則強化ということでの今回のこのJAS法の改正というのは評価できると思うんです。
 しかし、表示が担保されるためには、点検・監視体制の強化が必要だというふうに思います。立入検査にかかわる検査員を、先ほどのやり取りの中でも千五百人から三千人に増員したというふうにおっしゃいましたけれども、これは消費技術センターや地方農政局の職員に立入検査のための身分証明書を持たせたということですね。立入検査できる人が増えたというのはこれは大事だというふうに思うんです。
 しかし、立入検査というのは、通報が来て、消費者などから通報が来て、こういうことで違反のものがあるといって、その違反の疑いが明らかになって初めて出動できるということだと思うんです。実態は、ですから、そんなしょっちゅうあちこちから来るというわけではない事態なわけで、やはり大事なのは日常的なモニタリングだというふうに思うんですね。日常的に監視するということも大事だと思うんです。
 それをやる消費技術センターの表示担当職員は一体何人いるのか、現在、そして年間の実際買い上げる調査ですね、検査ですね、この買上げの件数がどうなっているのかということについてお答え願います。
○政府参考人(西藤久三君) 消費技術センターにおきまして表示を担当している職員ということで、実は農林水産消費技術センター、昨年から独立行政法人化に移行するに際しまして、表示問題の重要性にかんがみ表示関係の課を独立させるという対応をいたしてきております。現在、表示担当の職員ということでは、百二十三名という状況になっております。
 また、消費技術センターでは、加工食品につきまして、流通している加工食品を買い上げまして、その表示と内容が一致しているかどうかの検査も併せて実施いたしております。表示制度の拡充強化に併せまして、平成十三年度はこの買上げ件数、従前より大幅に増強させまして約五千弱、十三年度の実績では四千九百三十九件の買上げを実施しております。これは、十二年度が二千七百件余でございましたので、大幅に強化をしてきている状況にございます。
○紙智子君 前回のこの法改正で表示制度は拡大したわけですけれども、それに見合ったモニタリング体制の充実が必要だと思うんです。前回の法改正後、買上げ件数は確かに増えているというふうに思うんですけれども、今後生鮮食品の表示が正しいかどうか、そういう意味では科学的な分析も必要になってくるというふうに思うんですね。
 買上げの件数は、消費技術センターの中期目標というのをお決めになっていますよね。その中で、例えば生鮮食品の原産地の表示の調査店舗数ですか、これが各事業年度で六千店以上とか、買上げ件数三百件以上とか、加工食品の場合は五千件以上とかということで、そういう目標を決められてそれに基づいてやっていると思うんですけれども、この目標自体を更に引き上げるべきではないでしょうか。
 そして、技術センターの職員も、表示制度を拡大後、実際には増えるどころか減ってきているという実態があるわけで、表示担当職員、今百二十三名というふうにおっしゃいましたけれども、やっぱり思い切ったここの増強が必要じゃないかというふうに思うんですけれども、これどこまで引き上げられるんでしょうか。
○政府参考人(西藤久三君) 農林水産消費技術センター、表示の適正化の指導、監視する役割を担っているわけでございます。その体制の充実強化は私どもも重要な課題であるというふうに思っております。
 センターの職員数そのものは行政改革の中で減少する状況で推移いたしておりますが、その中で正に業務を担当する部門、こういう表示を含め業務を担当する部門の強化を図ってきているところでございますし、先ほど申し上げましたが、十三年度から表示の担当部門を独立させると、そういうことで充実強化を図ってきているところでございます。
 さらに、本年、食品の原産地を偽るなどの事案が次々に明らかになってくる、そういう状況の中で食品表示の監視体制の強化が求められている、そういうことを踏まえまして、他の部署からも要員を動員するなど体制の強化を図っております。
 今後、青果物、水産物についての表示の全国的な実態調査、この間、食肉について実施してきておりますが、更に青果物、水産物等について全国的な実態調査を行っていくなどして、センターの役割の重要性を十分踏まえながらその監視体制の強化に努めていくと、そのことを通じて食品の表示に関する信頼回復に向けて全力で取り組んでいきたいと。
 中期業務目標につきましても、先生御指摘のところでございますが、当面それを十分実施しながら状況を見ていきたいというふうに思っております。
○紙智子君 先ほども出てまいりましたけれども、食品ウオッチャーということで、各県にも要請してという話がありましたけれども、このウオッチャーは量販店や小売店、ここで実際に日常買物をする中で、そういうおそれがある表示を、違反のおそれのある表示を見付けた場合に食品表示一一〇番などに通報してくるということになると思います。
 そういう意味では、これも広く情報を収集するということでは、そのきっかけにはなると思うんですけれども、しかしながら、JAS法に基づく権限ということでは、通報してこうだと言うことはできますけれども、それ以上のことはできないということなんですね。千百五十人の都道府県のウオッチャーということで、十八県ですか、ということでさっき御紹介がありましたけれども、これも十八県、まだ十八県しかいないのかなというふうに私なんかは思うわけで、やっぱり全国に配置をしていく必要があるんじゃないかと思います。
 それから、表示の適合性、実際にウオッチャーでお店に行って見るわけだけれども、外から見ただけじゃ分からないということはあるわけですよね。国産牛と輸入牛が一目では分からないように、そういう言ってみれば目だけで分からないものは買い上げて、そして消費技術センターが実際に買い上げて科学的な検査をしなければ担保できないということだと思うんですが、食品の表示はやはり消費者にとってみますと、安全性の確保、それから健康の維持、品質の確認、それから選択の保障ということで消費者の権利にかかわる非常に大事な意味を持っているというふうに思うんです。
 適合性確保のための体制強化ということでは、現状のところで推移を見ながらということなんですけれども、是非、体制強化ということを強力に要求をしたいと思います。いかがでしょうか。
○政府参考人(西藤久三君) まず、食品表示ウオッチャーということで、都道府県段階千百五十名、十八県という形になっております。一方で、私ども中央といいますか、全国段階であれしております状況を見ますと二百名余でございますが、ほぼ全国にいていただくという状況でございまして、中央段階、県段階合わせて民間のそういうお力をかりていきたいというふうに思っております。
 それと、製品の買上げ・分析を通ずる確認行為でございますが、これは例えば有機食品あるいは遺伝子組換え食品含めて、先ほどの加工食品の買上げの中でそういう分析をしながら、遺伝子組換え食品であれば、遺伝子組換えでないというものについての中身の分析を通じて、これは科学的にかなり検証できるまで来ております。そういう取組も加工食品の買上げ事業の中で充実強化を図っている状況でございますし、さらに我々、そういう科学的分析手法の開発という点でも、例えばDNA分析を通じて表示の確認ができるような、一部もう既に実用化されておりますけれども、そういう技術開発も関係部局と連携しながら進め、実用化に図っていくと。
 そういうことを通じて、表示に対する信頼性、実効性、またその担保力を図っていきたいというふうに思っております。
○紙智子君 やっぱり実効性のあるものにするためのかぎを握る部分だと思うので、よろしくお願いしたいと思います。
 次に、有機JASの問題についてお聞きします。
 有機JASの認証制度が昨年の四月からスタートをいたしましたが、現在、認証件数はどうなっているでしょうか。
○政府参考人(西藤久三君) 有機JASの認定事業者の認定件数、私ども本年の五月十四日までのデータを整理させていただいておりますが、国内において生産行程管理者は、実際にその農産物の生産行程を管理し、又は状況を把握している者で、有機農産物でいえば、それを作っている生産者、農家や生産組合がこれに該当しますが、生産行程管理者は千三百五十二件、これは今申しましたようにグループを含みますので、農家数で見ますと三千六百七十戸という状況になっております。
 また、有機農産物の加工食品の製造業者は六百三十三件、有機農産物等の流通にかかわるいわゆる小分け業者は三百六十一件、輸入業者は八十二件という状況になっております。
 また、有機JASは外国においても生産行程管理者等の認定を行っておりますが、生産行程管理者は百三十五件、製造業者は百四十件、小分け業者は三十三件という状況になっております。
 認定状況という点では以上の状況でございます。
○紙智子君 この有機農法でもってやる場合に、非常に手間暇が掛かるというふうにいろんなところで御苦労をお聞きするわけですけれども、認証にかかわる費用、これはどれくらいの負担をしているのか、農水省、把握されているでしょうか。
○政府参考人(西藤久三君) 有機JASの認定手数料は、認定業務の適正な実施に要する費用の範囲内で各登録認定機関、今は六十余の登録認定機関があると思いますが、定めることとされておりまして、この登録認定機関、御案内のとおりNPO法人あるいは営利企業も含まれ、あるいは地方公共団体も含まれる状況でございます。その活動の状況、区々でございまして、言わば有機生産者の負担になります認定手数料も、認定機関の規模や人件費の差異を反映してかなり相違が見られる状況にございますが、具体的に申し上げれば十万円以下の機関が全体の七割を占めるという状況でございます。一方、二十万円を超える機関も約一割存在するという状況でございます。
 私ども、これらの状況は、登録認定業者の情報にかかわる情報を提供し、個々の生産者の利活用といいますか、に資するという形で運用している状況にございます。
○紙智子君 認定機関に支払う認定料、それから認証機関から出向く検査員の交通費や農産物に張るシールや包装代や、認証料だけで今お話があったように十万とか高いところでは二十万とかという話も、聞くところでは三十万以上という話も聞きますけれども、更に二年目以降は監査料も必要になりますね。
 そのほかにも、有機農業に取り組む農家というのは小さい農家も多いわけですけれども、この小規模の農家が認証を得るために大変な作業をやっているわけです。年間通して圃場ごとの作業記録と、それから使用した資材の投入量の記録などを含め、厳しい規格に厳格に沿ってということでたくさんの記録をやらなきゃいけない、そういう作業をやらなきゃいけないと。大変手が掛かって、このほかにコスト面も、今言ったほかにもまだ様々な面で費用が掛かるわけです。
 そこで、大臣、この認証費用の負担の重さ、これが有機農業の普及や振興の阻害要因になっているというふうに思わないでしょうか。大臣の認識を伺いたいと思います。
○国務大臣(武部勤君) 阻害要因がこれだけかどうかということについては私もよく承知していませんけれども、有機農業について高度な栽培基準の遵守等が求められている生産手法でありますので、有機JASの認定費用の負担が、有機農業を振興するためにできる限り負担を軽減することが望ましいと、このように考えております。
○紙智子君 有機農産物に対する消費者のアンケートがありますけれども、ここでは、価格にこだわらずに購入したいというふうに回答している人が一〇・三%、それから、一割アップまでだったら購入するというのが大体六割ですね、五九・〇%と、二割アップまでだったら購入するというのが一五・一%というふうに答えているんです。
 だから、せいぜい一割アップぐらいまでかなということだと思うんですね。だから、有機農法で安心できるというのは確かに要望は強いんだけれども、余り高過ぎちゃうと、これはやっぱり手が出ないというのが実態だと思うんです。有機農業によるコストアップというのは、この認証の費用だけではなくて認証費用等そのほかにもいろいろ掛かるわけですけれども、そのコストアップ分が価格に転嫁するということにしてもこれ限界があると。せめて認証費用のこの負担軽減の措置というのは必要ではないかと思うんです。
 先日、野菜の方の質問でも大臣にいたしましたけれども、野菜の構造改革の推進方向ということで高付加価値タイプの有機農法も挙げられています。それで関連予算も大幅に増額しているということもあるわけで、有機認証費用に対する助成を野菜の構造改革の促進対策予算のメニューに加えることも検討すべきではないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(西藤久三君) まず、事務的に答弁させていただきますが、私ども、大臣先ほど御答弁がありましたように、できる限り負担を軽減していくことがやっぱり望ましいというふうに考えております。
 そういう中で、私ども、有機JASの認定を受けようとする農業者を支援するという観点から、実地講習会の開催を通じて必要な手続等について情報提供を行う、あるいは先ほど認定手数料についての多寡の御論議ございました、私どものホームページを通じて登録認定機関に関する情報を提供しております。そのことを通じて生産者は言わば選択、登録認定機関も選択できるという状況でございます。そういうことを通じて農業者への支援ということを考えておりますが、なかなか直接的な、認定手数料にかかわる直接的な支援というのはなかなか難しいというふうに思っております。
 また、有機、JASの中で有機農産物を取り上げてきた経緯を考えますと、ガイドラインとして有機農産物の取扱いをしていたわけですけれども、生産サイドからも消費サイドからも、消費者からすれば、有機がはんらんしているけれども、本当にこれがどういう形で生産されたものかというのは必ずしも確認できないと。あるいは、本当に有機生産に取り組む生産者からは、自分たちの努力が必ずしも十分報われないということで、言わばこういう第三者の認証ということを通じて生産者にも消費者にも確実なものを提供していくという取組でございます。
 そういう点では、一定のコストについてはやはり生産者、消費者の双方の理解の中で解決していくということが基本だと思いますが、私ども、側面からの今申し上げたような支援は継続実施していくことが必要だろうというふうに思っております。
○紙智子君 もう時間になると思うんですけれども、直接やはり生産者にこうした助成ということで付けてやらないと、やっぱりいろんな困難を乗り越えてやっていくということでは、踏み込んでというふうにできないというふうに思うんです。
 それで、やっぱりアメリカは日本に対してはいろいろと厳しいことを言ってくるわけですけれども、アメリカでは小規模農家に対する優遇措置もされていると。十五の州で農家が支払う認証料の七割を補助する経済援助を打ち出していますし、直接支払の対象とする形で支援をしている国もあると。そして、偽造のものが出回らない努力と、それから軽減するということをやってきているわけで、我が国の場合は、法律は作ったんだけれども、この経済的な直接の支援は皆無ということではやっぱり不足だということでは、今後是非検討していただいて、この対処もやっていただきたいということを述べまして、質問を終わらせていただきます。