<第154国会 2002年4月5日 参議院本会議 第15号>


平成十四年4月5日(金曜日)
    午前十一時一分開議
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  本日の会議に付した案件
一、農林水産大臣武部勤君問責決議案(角田義一君外六名発議)(委員会審査省略要求事件)
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○紙智子君 私は、日本共産党を代表して、ただいま提案をされました武部農林水産大臣に対する問責決議案に対して、賛成の討論を行います。
 賛成の第一の理由は、BSE問題での政策判断の間違いを犯した人が正に武部大臣その人であるからです。
 武部大臣は、昨年の六月、BSE発生の危険を警告したEUのステータス(危険度)評価を途中で断りました。このことは、先日出されたBSE問題に関する調査検討委員会の報告で、政策判断の間違いとして厳しく指摘をされたところです。
 EUは、日本にもBSE発生の危険性が高いとし、肉骨粉の給餌禁止、特定危険部位の排除、調査検査体制の強化などを勧告していました。ところが、大臣は、BSEが発生していない国であってもBSEの牛がいる可能性が高いと指摘をした昨年五月のEU委員会による大臣あての書簡すら無視し、我が国の評価を拒否する回答をしたのであります。しかも、一連のEUとのやり取り一切を国民に公表していませんでした。
 もし、EUの評価を受け入れて、こうした内容があらかじめ国民に知らされ、対策が取られていたら、報告が言うように、今回の発生時に起きた大きな社会混乱は防げた可能性が高いことは明らかです。報告は、農水省の危険意識の欠如を指摘し、そのため本格的な危機対応マニュアルがなく、BSE発生時に対応が混乱した原因の一つと述べているのであります。
 昨年九月からのBSE発生に伴う大きな混乱は、正にこのとき大臣の取った態度にこそ起因するのです。事の経過は、武部大臣が、食の安全や人の生命にかかわる問題だという自覚も危機感も、また、大臣としての指導性もなかったということを如実に示しています。
 大臣は、BSE発生を許した農水省職員の危機意識の欠如に唖然としたなどと言いますが、まず、大臣自身の危機意識のなさこそ恥じるべきであります。大臣は、辞任を要求されると、職責を全うして責任を果たすと居直っていますが、政策判断の誤りを犯した張本人である大臣にその職責に当たる資格も能力もないということは明らかではありませんか。
 賛成の第二の理由は、BSE発生を機に国民に食への不信、不安が広がり、生産者、流通・販売業者が大きな打撃を受け、計り知れない被害を与えながら、この事態に無責任な対応に終始しているからです。
 生産者、関連業者、消費者に耐え難い苦しみを与えて、発生後半年を過ぎてもその事態は改善されてもいません。もし自分のところで発生したら、自分だけではなくて地域全体に大きな被害を与える、不安で牛を出荷できない生産者、借金を新たに抱え、途方に暮れ、夜も眠れない状態です。日本の畜産は正に存亡の際に立たされています。店を畳まざるを得ないところに業者も追い込まれています。
 さきの検討委員会報告は、一九九六年、世界保健機構から肉骨粉禁止勧告を受けながら、課長通達による行政指導に済ませたことを重大な失政であったと断じています。正にBSE被害は国の失政そのものの責任であることがはっきりした以上、国は当然被害補償をすべきです。
 ところが、大臣はその要求には全く背を向けているのであります。一刻も早い原因究明を願う生産者に、感染源の究明はそんなに重大かとか、自らの責任を棚上げにして、行政指導を知らないことは恥ずかしいと思わないかなどと暴言したことは、大臣の無責任な姿勢を典型的に露呈したものです。重大な失政は過去のことではなく、武部大臣の無責任な対策の下でいまだに続いているのであります。
 第三の賛成の理由は、武部大臣がBSE発生の行政責任の真相究明に背を向けてきたことであります。
 重大な失政であった一九九六年当時の経緯について、調査検討委員会でも解明に努力をしました。しかし、その報告では、行政指導にとどめたこの意思決定は、農林水産省のどの部署で、いかなる人が、どんな協議を行って決定したのか、役所側からの説明はほとんどなく、局議の記録も存在しないとされ、極めて不透明であるとしています。一九九六年当時の畜産局長であった熊澤英昭事務次官から経過の一切を明らかにさせなかったからこそ、このような不透明な結果に終わったのではありませんか。
 しかも、野党が予算委員会や農林水産委員会で熊澤氏の参考人招致を繰り返し要求しましたが、与党はそれを一貫して拒否してきました。そして、武部大臣は、この重大な失政の責任を負うべき熊澤氏を罷免するどころか、だれの責任とかいうことでなく農水省全体の責任であるとして熊澤氏をかばい続け、逆に高額の割増し退職金を支給するなど優遇したのであります。問責は当然と言うべきです。
 討論を終わるに当たって、私は、食の安全と安心という国民の命よりも自分の政権の延命を優先させるために、一内閣一閣僚という看板にしがみつき、失政の責任が明確な武部大臣を辞任させないという最悪の党利党略的な態度に終始した小泉首相の態度についても糾弾せざるを得ません。
 あわせて、指摘せざるを得ないのは、連立与党の一員である公明党の態度です。党首が武部大臣も含めてけじめを付けるべきと述べたのですから、本問責決議案に賛成するのが当然です。ところが、ごらんのとおり欠席しております。こうした態度は国民の厳しい批判を浴びるであろうことを警告をしたいと思います。農水大臣の辞任を求めながらこの本会議に欠席し、結果として本問責決議案否決に手をかすというのは、国会はもちろん、国民から見ても理解し難い態度ではないでしょうか。
 国民は、今、食の不安と不信の下、農水省の対応に強い批判を持っています。このような中で、重大な責任を免れない武部大臣を居座らせるならば、国民的批判の高まりは必至です。小泉内閣への国民の支持は一層離反することになると思い知るべきです。
 今、政府に求められることは、武部農水大臣を罷免することです。そして、BSE発生に至った農政を深く謝罪し、野党四党が共同で提案をしている緊急措置法を制定し、生産者始め関係者への十分な補償と徹底した原因究明と安全対策を取ることであります。そのことが生産者や消費者の政治への信頼や食への信頼を取り戻していく第一歩であるということを申し上げまして、私の賛成討論といたします。(拍手)