<第154国会 2002年4月4日 予算委員会 第19号>


平成十四年4月4日(木曜日)
    午後一時三十分開会
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  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○参考人の出席要求に関する件
○予算の執行状況に関する調査
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○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 高橋参考人、山内参考人、このたびは本当に御苦労さまでした。
 最初にお聞きします。
 高橋参考人、EUのステータス評価を拒否をした問題で、なぜ政策判断の間違いだったということになったんでしょうか。できれば簡潔にお願いいたします。
○参考人(高橋正郎君) また二十一ページの件でございますが、EUのステータス評価について政策判断に間違いがあったという点でございますが、繰り返し申し上げていますように、ここでは選択肢があったと。EUの基準を取るのかOIEの基準を取るのかというところの選択肢があって、行政当局はOIEの基準を取ろうと。それから、EU自身もOIEの基準に変えていこうという動きがございました。そういうことで、選択肢がある中で対応したと。
 ただ、そのときに、EUがいろんな情報を出してくれています。その情報で日本はこういうふうに危険な状況ですよということを適切に言ってくれていたわけなんですが、その情報をもっと素直に見て、受けて、そして、もしか、ここで起きるかもしれぬと、起きた場合にどうするかというような対応がなぜできなかったのかというようなことについて問題視をした次第でございます。
○紙智子君 大臣、このEUのステータス評価を断ったのは、あなたが大臣に就任した、就任中のことですね。
○国務大臣(武部勤君) そのとおりです。
○紙智子君 EUの評価を断った責任者は、武部大臣、あなたです。──まだ質問終わっていません。それが調査検討委員会の報告でも政策判断の間違いというふうに指摘されているわけです。
 あなたは問題の解決に全力を尽くすことで責任を果たすんだというふうに言っていますけれども、間違いを起こした本人が問題の解決を言う資格があるんでしょうか。責任の重大性を認めているのであれば、これ以上大臣の職にとどまるべきではないと、やはりお辞めになることが最も最良の責任の取り方ではないでしょうか。
○国務大臣(武部勤君) 職責を全うすることも責任の取り方だと思っております。
○紙智子君 大臣の責任については議論の余地がないと、明確だと思うんです。問われているのはやはり小泉内閣の責任の取り方と。
 それで、官房長官が残念ながらいなくなりましたので副官房長官にお尋ねしますが、小泉内閣としては、この調査報告が指摘した問題点は過去の問題で、武部農水大臣には責任はないということなんでしょうか。
○内閣官房副長官(上野公成君) 官房長官がおりませんので、代わってお答えさせていただきます。
 この本報告では、農林水産省の体質そのもの、それから農林水産行政に対して大変厳しい御指摘を受けているわけでございます。
 小泉総理からも両大臣に、しっかりと法律の整備でありますとかそれから組織について取り組むような指示もされているわけでございまして、今後、やはり政府としましては、内閣としましては、本報告の指摘を厳粛に受け止めてこの問題に当たっていくということ、そのために武部大臣に引き続き職にとどまってしっかりとこの仕事をやり遂げていただく、責任、それが責任を全うするということだというふうに考えております。
○紙智子君 この報告書が政策判断の間違いとしたのは、言わば小泉内閣の下での対応です。総理大臣自身がやはり武部大臣をかばって、内閣としての誤りを明らかにすることを避け続けるということ自身、小泉首相そのものの責任を問われる問題です。小泉総理が農水大臣の辞任を受け入れないというのは、これは結局政権運営の求心力を失いかねない危機感からじゃないですか。国民の命や健康あるいは食品の安全ということよりも、政権の延命を優先させるということじゃありませんか。こういうことに対して、国民は決して納得をしませんよ。
 さらに、大臣にお聞きしますが、EUの指摘というのは正確なものでした。そして、それにもかかわらず大臣は、その内容も見ずに、EUの指摘していた意味も分からずに、事務局の言うままに、事務方の言うままにステータス評価を断った。食の安全や命の、生命にかかわる問題だという自覚も危機感もなく、間違った政策判断を行った大臣に、どうして食の安全の抜本的な見直しができるんですか。
○国務大臣(武部勤君) EUのステータス評価については、委員長の御報告のとおり、このステータス評価を中断したからBSEが侵入したということではございません。EUから様々な情報を与えられていて、それを公開して、それに基づいて危機対応マニュアルを作っていなかったということが私は一番大きな問題だと思います。
 私が就任して、六月に事務方から話を聞いたときには、EUもOIEの基準に照らした新しい評価を行うと、基準を作ると。現に、七月にはEUはOIEの新しい基準に準拠した評価を行っている、基準を作っているわけですね。そのことを確認したわけでございまして、私がそれを最終的に了といたしましたが、一番大きいことは、二〇〇〇年十一月からいろいろ指摘されたことについて、しっかりそれを受け止めた対応をしていなかったということが問題だと、このように思っております。
 いろいろ厳しい御指摘がございましたが、それを謙虚に受け止めたいと思います。そして、しっかり対応したいと思います。大変僣越な言い方でございますが、私も就任時と違いまして、この半年余りBSEの問題についてはかなりの知恵の蓄積もございます。問題意識もございます。それに対する対策についてももう既に対応に努めている次第でございまして、これをしっかりやり抜くということが結果的に国民の皆さん方の信頼をいずれ確立できる、こういうことを信じて頑張りたいと思っております。
○紙智子君 真摯に受け止めて反省すると言われますけれども、しかしながら、確かに言われるように、EUのステータス評価の問題でそのことがBSEの侵入を許したわけじゃないというふうに言われていますけれども、そうかもしれません。しかしながら、このステータスの評価をちゃんと受け止めて、その時点でマニュアルを作るとか対応策をしていたら、やっぱりあれだけの混乱は避けられたわけじゃないですか。しかも、二千億とか三千億とか大変な損害を与えるような事態は避けられたわけじゃないですか。そのこと自体が本当に重大だし、罷免に値すると私は思うんですよ。
 続けて聞きますけれども、調査検討委員会で重大な失政と断罪をした、九六年の当時の畜産局長でありました、そしてEUのステータス評価を断った、その両方の当事者の事務次官だった熊澤氏についても、これ罷免していないと。そして、私たちが繰り返し繰り返し、当時のことをよく知っているわけですから、何度も委員会に来ていただいてそして事実経過を話してもらおうということを要求しました。ところが、一貫して与党はこれを拒否してきたと。今日もそうですよ。今日だって要求したのに来ていないですよ。
 そこで武部大臣、こういう形で国会で呼ぶことができないということであれば、大臣の責任で直接熊澤さんに話を聞いて、その事態について国民に明らかにすべきじゃありませんか。それはやるんですか。
○国務大臣(武部勤君) 私も、熊澤前次官が在任中に厳しく叱正もしましたし、いろいろと過去のことも尋ねました。しかし、法令に照らして不祥事という、刑事事件等という、そういうことでありませんので、私はあのような措置を取ったわけでございます。
 そして、結論として申し上げますと、とにかくだれか特定の個人が責任者としてすべての責任を取るという根拠ということについては、私の手元ではそういう判断はでき得ませんでした。したがいまして、第三者である調査検討委員会によって、そこで客観的に科学的に御検討いただくということにも一つの私どもの関心があったわけでございます。
 この調査検討委員会の御報告におきましても、そういう特定のことを、調査権がありませんから、委員長のお話ですと、そういったことはでき得ないという、そういうお話もございましたが、私どもやはり今度の報告書を見て感ずるのは、農林水産省全体の責任だと、組織全体に危機管理意識の希薄さがあったと、こう考えて、さような、それに対応した措置を取った次第でございます。
○紙智子君 結局、最も真相究明に対しても大事なかぎを握る人物ですよ。そういう人に対して、やはり本当にこの真相を明らかにするということでは、そのことすらやっぱりできないと、追及する姿勢ではないというあなたが本当に今行政の組織の見直しを図ると言っているわけですけれども、それができるのかというふうに思うんですね。
 私は、やはり多くの国民が見守っている中で、今回の事態というのは、結局早く辞めさせてしまって、そしてそういう真相の解明もできない状態にしてしまっていると、そういうふうに見ていますよ、目は。ですから、私は、そういうことでは決して、これから先頑張って行政の改革もするんだと、見直しをするんだと言っていますけれども、これは結局できないと思いますよ。
 さらに、もう一つ言いたいのは、やはりBSEの発生によって、責任が全くない生産者や業者、本当に大きな打撃を受けていますよ。本来は、重大な失政と指摘されているわけですから、政府は当然その被害補償をすべきだ。それを拒否し続けているじゃありませんか。そういう姿勢でこの先、大臣を続けても、本当に窮地に追いやられた方々の経営を立て直すことができるんですか。
○国務大臣(武部勤君) もう、紙先生にも何回となく同じような御質問をいただきまして、その都度、つらい、厳しい、そういう思いでございます。しかし、私はただ辞めるだけが責任を果たすことだとは、そのように思っておりません。それは今後の対応、今後の我々の努力を見ていただきたいと思います。私は、全責任を持って職責を全うし、改革に全力を尽くしたいと思います。
 いろいろ関連する皆さん方、数々痛手を受けていることは十二分に承知しております。それだけにしっかりした対応に努めたいと、このように決意を新たにしている次第でございます。
○紙智子君 補償はやるんですか。直ちにやるべきだと思いますけれども、いかがですか。
○国務大臣(武部勤君) 私どもは、今度の問題に対して、真摯に受け止め、しっかり対応することによって国民の皆さん、関係ある方々の御理解を求めていこうと、このように考えているわけでございます。
○紙智子君 結局、おやりになるということをはっきり言わないと、そのことが失政が今も続いているということですよ。
 もう一つ言います。日本農業新聞のアンケートで、どうして牛肉を食べないんですかという質問に対して、第一位は農水省の対応が信じられない、これ四割ですよ。国民の信頼回復のためにも、やっぱり重大な責任を持っている農水大臣がやっぱりここはお辞めになるということが回復のためにも大きな力になると思います。いかがですか。
○国務大臣(武部勤君) しっかりやり抜くことが私の責任だと、こう思っております。
○紙智子君 信頼回復ということでは、政府の対応、政府の責任の取り方もよく見ているということでもあります。
 私は、紹介したい手紙があるんですね。これは猿払のBSEの発生農家のお父さんの手紙です。今、この発生農家の若夫婦は営農を続けられなくなって、残念ながらふるさとを出ました。途中、省略して言います。
 私たちの大切な生活の糧である六十二頭の牛に代わって申し上げます。殺された牛は、一日二日で築き上げたのではなく、こつこつと三代前の亡き父母の汗と涙と知恵で育て上げたものです。ミルクが原因なのか、配合飼料が原因なのか、一日も早く調べて解決していただきたい。私どもは、もう愛する牛も、かわいい孫、大切な心の宝もみんな国に奪われました。こんな仕打ちに泣き寝入りするだけでは気が狂いますと、こう言っているんです。
 国会の、国の責任で被害を受けて、大きな傷を負って、それだけじゃありません。今、不安を抱えている生産者がたくさんいて、このままでは離農が増えます。政府に求められるのは、まず、武部農水大臣を罷免する、そして生産者を始め消費者への信頼を取り戻す第一歩である、きちんと法的にも国の責任と補償を位置付けている野党四党のBSEの緊急措置法案を成立させることだ、そのことを申し上げまして、私の質問を終わります。