<第154国会 2002年3月26日 予算委員会 17号>


平成十四年三月二十六日(火曜日)
    午前十時開会
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  本日の会議に付した案件
○委嘱審査報告書に関する件
○参考人の出席要求に関する件
○平成十四年度一般会計予算(内閣提出、衆議院送付)
○平成十四年度特別会計予算(内閣提出、衆議院送付)
○平成十四年度政府関係機関予算(内閣提出、衆議院送付)
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○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今日は参考人の皆さん、本当にありがとうございます。
 それでは、早速、最初に小野寺参考人に御質問したいと思います。
 それで、九〇年当時の問題からですけれども、九〇年の二月の十四日付けにイギリスから反すう動物への肉骨粉の使用禁止を行ったということで書簡が送られてきた問題、それから、OIEの専門家会議が開かれて、そこでBSE非発生国におけるBSE防止のための勧告がされていた問題で、このBSE問題に関する調査検討委員会の委員長メモ、このスケルトンですね、この中で、九〇年当時の農水省の対応について小野寺参考人は極めて理解に苦しむということをおっしゃって指摘されているわけですけれども、そのことについてお聞きしたいと思います。具体的にお聞きしたいと思います。
○参考人(小野寺節君) 九〇年問題は、実はもう大分、BSEの調査検討委員会が大分話が進んで、もう過去の検証が終わって、その後に出てきた問題で、何か余りそれに関する資料がちょっとこちらの方に届いていないということで、委員の中でも九〇年問題は一応検証が終わったのかと言われて、いや、それに関してはいろいろ意見の分かれるところなんですね、したがって、こちらももうちょっと資料をたくさん出してくれた方がいいんじゃないかということを含めて、それに関して言ったわけです。
 それは、やっぱり九〇年問題はいろいろ、OIEの問題が、一応BSEに関してはいろいろもう少なくとも一九八〇年代の後半にもう日本に随分情報が入っていましたから、それに関する農水の対処、九〇年の農水の対処をもうちょっと知りたかったなと、そういうことでそういう書き方にしましたけれども。
○紙智子君 じゃ、続きまして、九六年当時の問題ですけれども、WHO勧告をまともに受け止めていたならばやはり当然肉骨粉は法的禁止をすべきだったのではないかというふうに思うわけですけれども、この点まずどうですか。
○参考人(小野寺節君) 九六年問題は、したがって、あそこの恐らくあの原案にある行政責任の問題ですね、「失政」という言葉が使ってありますけれども、それに関して何ゆえに失政であるかということに関しては、やっぱり調査検討委員会で一応いろいろ議論がありまして、それに関しては、やっぱり失政ということの一応根拠は、やっぱり肉骨粉を禁止しなかったことだということを恐らく委員の人は全員そこに関しては意見が一致しているので、その九六年問題はあくまでも肉骨粉を禁止しなかったということに尽きると思いますけれども。
○紙智子君 WHOの勧告を受けた検討会を行いながら法規制を行わずに行政指導にとどめた問題で、農水省は、海綿状脳症に関する検討委員会で専門家の意見を聞いて行政指導を行ったということで、説明を続けてきたわけです。
 しかし、検討委員会の議事録読ませていただきましたけれども、専門家の中からも法的禁止をすべきだということが繰り返し出されていたわけです。ところが、農水省がまとめた会議の発言要旨、この中にはそのことが紹介されていないんですね。そして、農水省がまとめた、紹介されていなくて、結論として国内の反すう動物の内臓等については国内の反すう動物の飼料として利用されることがないように指導することが重要だということで結論付けているということなわけです。
 検討委員会のその発言要旨ということの中で、そういう形で違った結論となっていると。検討委員会の意見を本当に尊重するならば、当然これは法的禁止の措置が取られてよかったと思うんですけれども、その結論は行政指導なんだということが言えるのかどうかということなんですね。
 この点で、実際に検討委員会に参加をされていた委員のお一人として御意見を伺いたいと思います。
○参考人(小野寺節君) これも恐らく調査検討委員会の傍聴の記録の中に恐らく現れると思うんですけれども、検討会、一九九六年の検討会ですね、それに関しては、委員の方は皆さん、指導というのはかなり禁止に近いものだと理解していたけれども、行政の方は指導というのは行政指導であると。ですから、日本語の指導というのと行政指導というの、意味は随分内容が違うんじゃないかというようなことで、その辺の意味の取り違えが多少はあったのかなということは、何か恐らくそれは、あれです、皆さん、恐らく昨日かおととい辺りの調査検討委員会の中の議事録にもそういうことは書いてありますけれども。
○紙智子君 専門家の皆さんの意見を本当に受け止めてやるということでは、そうならない結論にしてしまったということを私、やっぱり農水省の責任、この点がとても重大だというふうに思うんですけれども、その点はどうでしょうか。なかなか言いづらいと思いますけれども。
○参考人(小野寺節君) 結局、そこは一番最初に言いましたように、九六年問題はもう一にも二にも肉骨粉を禁止しなかったのが一応一番問題であるということになりますが、結局、そこに結局尽きると思うんですね。
 ですから、指導ということを我々はどっちかといえば要するに禁止に近い方に考えていたけれども、聞いた方は行政指導ということに取ったという、その辺の問題がいろいろ恐らくお互いの意見の要するに聞き違えもあるのかなと僕は思っていますけれども。
○紙智子君 次に、農水省それから厚生労働省の行政対応を検討する、第五回BSE問題に関する調査検討委員会ということがやられていて、そこに報告されている農水省それから厚生労働省のその関連、関係者の方がいろいろアンケートに答えて書いておられて、この調査票というのが集められています。
 この中身を見ますと、農水省の何人もの担当者の方が当時どうして法的規制に行かなかったんだろうかということの中で、外側からも内側からも圧力が掛けられている状態だった、あるいは規制緩和の強い流れがあって、これは家畜衛生の分野にも同様に押し寄せていて、これに逆らって新たな規制を行うことは大変難しいという証言などもされているんですね。
 これを受けて、何か思うところがあれば。
○参考人(小野寺節君) 規制緩和の流れは、それはもう流通の側での規制緩和はあるかもしらぬけれども、言わば病気の問題の規制緩和というんですか、要するにこれに対する、病気に対するコントロールというのは、年々難しい病気が増えていますから、それに関しては、かなり国が要するに全力投球をしなきゃいかぬと僕は思うわけですね。
 したがって、そういう流通の側の規制緩和と、病気の要するに撲滅ですか、予防の側の規制緩和というのはまた別問題だと思いますけれども。
○紙智子君 それから、肉骨粉についてなんですけれども、当時、肉骨粉の牛用配合飼料への使用状況というのが九五年度で二百四十七トン、配合率で一%から二%ということなんですけれども、三月から四月で、禁止する前の段階ですけれども、そのところで四十二トン、八トンそれぞれ使われていて、大体このとき、一%ぐらいの配合率ということになりますと、飼料としては五千トンぐらい製造されていたことになるんですね。
 それで、先日、テレビの報道で、農水省が行政指導を出したのが四月十六日、当時、なんですけれども、その十六日以前に業界に相談をしているというか、そして、在庫を回収せずに使用禁止になることを知らせたということが駆け込みでその後ぐっと広がったんじゃないかということなどが報道されているんですけれども、このあたりの経緯なんかは調査検討委員会では報告されていたでしょうか。
○参考人(小野寺節君) 使用禁止の前のそういう細かいことは、恐らくまだ、調査検討委員会もちょっと回数が、今まで十回ぐらいやったんですけれども、そういう過去の検証はそのうちの大体五回ぐらいですから、それで、一回に用いる時間も、二時間と最初は予定されても延長がありますから二時間半か三時間ぐらいになりますけれども、恐らく、その時間で果たしてどれだけ全部網羅できたのかなということは、やっぱり将来の問題としてかなり残っていると思います。
 そういうことはまだ聞いておりません。
○紙智子君 次に、EUのステータス評価をめぐる問題ですけれども、この問題をめぐって、ほぼそこで言われていた評価が日本の対応の問題点などを的確に指摘されていたんじゃないかというふうに思うわけですけれども、政府がそのとおりに受け入れて対策を取っていたら発生時の混乱は避けられたんじゃないかと思いますが、その点についての見解をお述べください。
○参考人(小野寺節君) EU委員会のいろいろ提案ですね。いろいろ、何となくEU委員会のステータス評価の問題は、文章だけ見ると、日本がカテゴリー2か3かと、その辺の方に話が行ってしまって、どうもその全文に書かれているいろんな勧告案が結局皆さん忘れられてしまっていると、僕もついそう言っておるんですけれども。
 そういうことで、割合こういうのは、自分の国が自分を見るよりもよその国に自分を見てもらった方がよく分かるという側面もあるものですから、やはりそれに関しては、こちらとしてもある程度少し聞いた方がいいんじゃないかということはあって、したがって、それに関して、全面的には実行できなかったんですけれども、ある程度あれですが、サーベイランスをやりましょうと、これは農水省に関しても厚生省に関しても。あと、えさの規制もちょっともう少し法律的にやりましょうと。
 そういうことは少しずつ準備をしていたことは準備をしていたんですが、しかしながら、もう我々が予想するより早くBSEが出てしまったということで、かなりそういう、予想より早かったということで多少の混乱はあったかもしれませんけれども、できるだけ混乱がないように、少なくとも半年ぐらいの準備期間は我々としてはあったのかなと。半年の準備期間はちょっと若干足りなかったかなという気もしますけれども。
○紙智子君 農水省は、我が国が未発生国であるということで、OIEとの基準が違うことをEUステータス評価の拒否の理由にしてきたんですね、EUの方が厳しいというか。だけれども、そもそもその基準が違うと思うんですけれども、評価を断る理由にしてきたというのは妥当なものと言えるのかなということなんですけれども。
○参考人(小野寺節君) OIEの基準とEU委員会のSSCの基準がちょっといろいろ、多少違うと。それに関しては、実際これもこちらの調査検討委員会の方でいろいろ発言していたんですけれども、OIEというときは動物の病気ということを予防するということであります。ところが、EU委員会の場合の、特にSSC、化学運営委員会は、やっぱり予防原則といって人の病気を予防するという側面が非常に強いということがあるわけですね。
 したがって、多少EU委員会のSSCの方が、かなり細かいというか、かなり条件がきついということはあるわけですけれども、今回、問題はEU委員会とのやり取りの方がずっといろいろ問題になっていたみたいですから、小生の考えとしては、やはり予防原則に立った方がよかったのかなと僕は思っていますけれども。
○紙智子君 指摘されている中で、これから日本で改善が必要だと思われること、いろいろあると思うんですけれども、特にこういう点が大事だということについてお聞かせいただきます。
○参考人(小野寺節君) 指摘されることでこれが大切だということで、例えばEU委員会で一番問題になるのはやっぱりえさの一応はいろんな品質の問題ですね。食品に関する品質に対しては、特定危険部位をあそこで外していると、一応屠畜場で外しているということがありますけれども、まだえさに関しては、まだいろいろ、いろんな規制とか、あとえさの品質管理とか、例えば今あるえさに例えば牛の材料が入っているか入っていないかという、そういうサーベイランス問題、そういう問題はまだまだ特に残っていると思うんですね。ですから、それに関してはこれからも更に強くやらなければいけないと思っています。
○紙智子君 調査検討委員会の報告要旨の中でも、政策決定過程が非常に不透明だという指摘がされています。
 それで、この調査検討委員会のメンバーとして、九〇年代の当時の対応、それから九六年当時の農水省の対応、それからEUのステータス評価に対する対応と、その政策決定過程や責任の所在や経緯、調査検討委員会に対して農水省が十分明らかにしたというふうに思われますか。
参考人(小野寺節君) 調査検討委員会、現在、あと七月の二日に答申書を出す調査検討委員会のことですね。
 あれに関しては、やっぱりまだ、一応それで十回、あといろんな懇談会を入れれば十数回やっているわけですけれども、これからまたいろいろ問題も、いろいろ新しい問題も出てくる可能性もありますし、まだまだ結構持続的にやった方がいいと僕は個人的には思っていますけれども。
○紙智子君 ありがとうございました。
 それじゃ、次、堀参考人にお願いいたします。
 まず一つは、偽装問題についてなんですけれども、今回の。
 この偽装問題というのが、いきなりぱっと出てきたというよりは、やっぱり恒常的になされていたのではないかと。通常、産直で欠品が出るような場合は、どのような対応をすることになっていたでしょうか。
○参考人(堀喬君) 欠品の場合は、お得意さんによって欠品を許していただけるところと、欠品はまかりならぬというやはり二通りがあるんではなかろうかと思っています。当然、農産物でございますので欠品が発生するのは当たり前なのでということでお許しをいただくという、そういうこともありますし、また欠品が、いわゆる生協の場合は特に購買、いわゆる組織購買といいますか、そういった形で注文を取っておるので、欠品については、一遍約束したものについて欠品があるという場合は駄目だということがあるので、その場合はやはり多めの、多めの在庫を持って、それを回転させていくという、そういう方法を取らないとどうしてもそういった需要の変動に対応できない、そういうことでございますので、少し多めの在庫を持って対応しているというのが通常でございます。
○紙智子君 牛肉の在庫緊急保管事業の検品の中で、全農分から対象外のものが二・二トン出たわけですけれども、事業者側に作為が認められなかったということで、事業者名の公表についてはやらないということなんですけれども、対象外だった牛肉というのはどういうものだったんでしょうか。
○参考人(堀喬君) 一つには、賞味期限が切れたものがあったということで報告を受けております。
○紙智子君 十月十七日以前に賞味期限が切れたものが結局紛れ込んでいたと。事業の趣旨からいって、それが本当に作為がなかった、意図的ではなかったというふうに言えるのかなというふうに思うわけですけれども、いかがでしょうか。
○参考人(堀喬君) 当時は、非常にBSEが発生して市場が混乱しているさなかでございました。したがって、こういった十七日以前の肉の扱いをどうするかということを農林当局といろいろやり取りがあって、我々としては元々安全だという前提で、これは買戻し付きといいますか、そういう条件で買い入れたということでございまして、当時非常に混乱をしていて、本来なら一つ一つ検品をしてやるのが筋だったかと思いますが、いずれにしても、要領ができて申請するまで十日というそういうせっぱ詰まった中での作業であったということでございますので、それが悪意であったということは思っておりませんし、当局の方もそういう認定をしていただいているということでございます。
○紙智子君 関係者の間からも、やっぱり何よりも売上げ第一の成果主義の中で、欠品となれば昇給や昇格にも影響するから正直なことが言えないような状況もあったんだというような指摘もあるわけですけれども、食の安全、安心よりも売上げ第一とか成績主義がなかったのかどうかと、そういう点では、協同組合の原点を忘れてしまったために起こった問題じゃないのかということもあるわけで、その点についてどうなのか、そして今後どうする必要があるのかということについてお聞かせください。
○参考人(堀喬君) 御指摘の点、全く否定するものではございません。やはり現場で働いている人間はそれなりのやはり何といいますか、欠品に対する何といいますか、恐怖心といいますか、そういったものがやはりあったということは否定できないと思います。
 したがって、これは現場の個々のそういった担当者にゆだねるのではなくて、それについてはちゃんと役員がそれを受けてどうするか、そこをきちっとやっていないためにこういった不祥事が私は発生したと思っておりますので、これは会社それぞれの在り方につながるわけでございますが、ここはやはり全農として、販売事業に対する姿勢、これをもう一遍これ反省し直して、我々の関連会社である、子会社であるそういった第一線に浸透させていかなきゃいかぬだろう、こういうふうに考えております。
○紙智子君 ちょっと時間がなくなってしまって、最後、中村参考人に質問しようと思っていたんですけれども、一言だけ、BSEについてイギリスを始めとして各国を取材されて、やはり今本当に日本が教訓として生かさなきゃいけないというふうにお考えの点、ひとつお願いいたします。
○参考人(中村靖彦君) なかなか一言では言いにくいのでございますけれども、やはりEUそれから特にイギリスですね、そのイギリスからドイツ、フランス、それぞれ大混乱の中でいろんな規制をしてきました。そのマニュアル的なものを私は日本でやっぱり、本当はもうちょっと早めに準備をしておくべきであったというふうに思います。ただ、不幸にしてそれがうまくできなかったということで、これから先はやっぱり日本におけるBSE対策のマニュアルを、それこそ農場から食卓までという中で作っていくことが非常に大事ではないかというふうに考えております。
○紙智子君 どうもありがとうございました。