<第154国会 2002年3月22日 沖縄北方特別委員会 4号>


平成十四年三月二十二日(金曜日)
    午前九時五十分開会
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  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○平成十四年度一般会計予算(内閣提出、衆議院送付)、平成十四年度特別会計予算(内閣提出、衆議院送付)、平成十四年度政府関係機関予算(内閣提出、衆議院送付)について(内閣府所管(内閣本府(沖縄振興局)、北方対策本部、沖縄総合事務局)及び沖縄振興開発金融公庫)
○沖縄振興特別措置法案(内閣提出、衆議院送付)
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○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 私は、まず最初に北方墓参の問題で質問をさせていただきます。
 今回、鈴木宗男氏の利権疑惑にまみれたこの北方四島の住民支援額ということでいいますと、ピーク時には三十億八千四百万円と、初年度の百二十倍に膨脹し、湯水のようにお金が使われたわけです。島が早く返るためだというふうに言いながら、その見通しもなく、結局はこの利権疑惑が増えるだけでした。その一方で、肝心の旧島民への支援、これは訪問経費への助成とか旧漁業者への融資程度の本当にわずかなスズメの涙の対策でしかないと思うんです。
 予算にしても、今言いましたのは一億円とか二億円というくらいですが、尾身大臣にお聞きいたします。旧島民への対策はこのような現状でいいと思われているでしょうか。
○国務大臣(尾身幸次君) この旧島民の皆様への対策につきましては、これ、議員立法でできた法律によりまして百億円の基金がございます。その基金の運用果実を元にしていろんなことをやっているわけでございますが、近年、金利低下の傾向もございまして、実際に使用できる金額が少なくなっていることも事実でございます。
 私ども、そういう中でいろんなやりくりをしながらこれを進めているわけでございますが、基本的には、議員立法でできた法律でございまして、それに基づく支援をやっているということで、政府といたしましては、その枠内でできるだけやりくりをしながら旧島民の皆様に対する支援をしているということでございます。
 これについてどう評価するかということについてはいろいろ御議論もあろうかと思うわけでございますが、私どもとしては、当面、現在のままでいろいろやりくりをしていくより仕方がないかなというふうに感じているところでございます。
○紙智子君 元島民の皆さんは──問題になりました例のはしけ、友好丸、二億円掛けているわけです。それで、色丹島には港もあるし、ああいうはしけが本当に必要なんだろうかと、それに引き換え、我々が墓参や自由訪問で行く船はもうちょっと何とかならないのかというふうな声が出ています。
 大臣、墓参に使う船ですけれども、これは官庁の漁業取締船とかあるいは訓練船ですね、元々若い人たちが訓練のために使うという、そういう造りになっているわけですけれども、高齢者の皆さんにとっては肉体的にもとても厳しいものがあります。私も居住者連盟の皆さんとお話をしたときにこの話、出ていましたけれども、チャーター船、民間のチャーター船も含めて、やっぱり狭くて、そして階段が物すごく、はしごといいますか、急で、非常にきついと。二段ベッドで非常に狭い。寝返りを打つのも大変というような状況になっていて、行きたいけれども、もう本当に元気なうちに一度は行ってお墓参りしたいとか、そういう思い、希望はあるんですけれども、やっぱり体力的なことを考えますと、これはもう断念せざるを得ないというようなことであきらめる人も増えているんですということなんです。
 今、提供している船舶がこういう状況にあるということを御存じでしょうか。
 そして、当面私は、やはり北海道の北方墓参事業への国の助成を組んで、そして少しでも快適な旅ができる船を提供すべきだというふうに思います。それをやれば、それだけじゃなくてビザなし交流や自由訪問にも使えると。国の専用の船舶を考えるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(坂巻三郎君) 恐縮でございますが、事実関係をちょっと申し上げさせていただきます。
○委員長(佐藤雄平君 端的にね、端的に。
○政府参考人(坂巻三郎君) 二つありまして、ビザなし交流は民間の船舶をチャーターしておりまして、三百トン強の船でございます。それにつきましては、居住性が良くないので、高齢化した元島民の皆様方から大型化をするようにという御要望がございます。
 もう一つ、墓参につきましては、これは北海道が事業としてやっておりまして、直接国からの予算的な支援はできないということで、私どもができるということで、国の保有船舶を内閣府の方からいろいろお願いをしまして無償で提供していただいております。
 それで、ちょっと事実関係を申しますと、例えば運輸省の航海訓練所の船を提供していただいたことがございますが、そちらの方は逆に五千トンぐらいの船でございまして、元島民の方々からは、非常に居住性はいいですが、向こうの港湾設備がありませんので、その五千トンの訓練船には北海道の方からまた伴走の形でもうちょっと中くらいの船を用意していただきまして、それでもまた高齢の方々が島には渡れないものですから、向こうの今のお話のはしけというようなものを出してもらいまして、三段階、四段階で乗船をしているということがございます。
 最後に、先生、もうちょっと船舶については考えるようにということでございますが、ほかの訓練目的の船をたまたま北方四島の方に行っていただくという形を取って無償で提供していただいているものですから、非常な制約はございますが、墓参というのは非常に人道上の重要な問題でございますので、できるだけ余り大き過ぎないような船というようなことも考えましてお願いをしてまいりたいというふうに考えております。
 事実関係でございます。失礼いたしました。
○紙智子君 要は、言いたいことは、そういう御高齢になられて、そして渡りたいという思いでいるわけで、できるだけやっぱり負担が掛からないような形でいろいろ考えていただく必要があるんじゃないかと。やはり、元々その島に住んでいたわけですから、そういう自分の島を奪われて、そして領土の問題がなかなか解決しないと。これ、地域ではどうともし難い問題ですよね、国の責任にかかわる問題なわけですから。そういう中で、せめてもの旧島民の皆さんの願いにこたえるということでは、国の支援を強めていただきたいということをお願いしたいと思います。
 それから、続きまして領土返還問題にかかわって御質問をいたします。
 今度の鈴木宗男氏の疑惑の背景にこの北方領土の返還問題が大きく関係していることが次々と明らかになりました。特に、外務省の文書でも明らかなように、鈴木氏はこういうふうに述べています。「そもそも、北方領土問題というのは、国の面子から領土返還を主張しているに過ぎず、実際には島が返還されても国として何の利益にもならない。」、もう驚くべき発言をしているわけです。その上、「戦後五十年もたって返還されないという事実を踏まえ、我が国は領土返還要求を打ち切って、四島との経済交流を進めて行くべきと考える。」というふうに言っているわけです。
 つまり、鈴木氏の本音は、領土返還問題にあるのではなくて、四島との経済交流、北方支援があって、それを自らの利権の対象にしてきたと言われても決してこれは過言じゃないというふうに思うんです。
 こういう批判が集まっていることに対して鈴木氏は、私が言っているわけじゃない、これは、返還運動をやってきている人がそう言っているのであって、それを言ったまでの話だということをおっしゃっておられるわけですけれども、しかし、これは外務省が文書で出しました。その外務省の見解でも、あの文書については、あれ以上もこれ以下もないんだということではっきり完全に否定をされているわけです。
 さらに、先日、十九日に我が党の志位委員長が会見で明らかにいたしましたけれども、鈴木議員とロシア外務次官との秘密会談記録ですね。その中で二島返還先行論と。これ、実際には二島返還先行じゃなくて、二島返還でおしまい論と、二つ返ってきたらもうそれでおしまいというような話になっているわけですけれども、いずれも、これが領土返還運動に非常に大きな困難をもたらしたというふうに言えると思うんです。
 そこで、外務省、今日は大臣はいらっしゃらないんですが、副大臣、そう思われないでしょうか。
○副大臣(杉浦正健君) まず、御指摘の西田参事官の作ったメモでございますが、あのメモについては問題点がございまして、議員の部屋へ説明に行った西田参事官に対して、北方四島、書面によれば、それについてのいろいろな意見開陳の中でのメモとして記載されておるわけであります。
 鈴木議員は、党籍、自民党を離れられる声明その他の中で、今、委員がおっしゃったように、そういう意見を持った人がいるという趣旨で紹介したと抗弁しておられるわけです。
 あのメモそのものがクロスチェックを受けていない。メモを作った際に鈴木議員のところへ持っていって、先生の御発言はこうでございましたねと確認を取った上でできたメモではない。私は弁護士なんですが、反対尋問を受けていない内容のものだという問題点はあると存じます。
 西田参事官は、参議院でしたか、予算委員会の答弁で、あれ以上のものでも以下でもないと言っておるわけですが、そういう内容のものでございますので、その点について、西田参事官はそういうことを言っておる、鈴木先生はそういうふうにおっしゃっておるというわけで、これは裁判でやって確定するかどうかという性質の問題でもないと思うんですけれども、問題点があるということは御指摘せざるを得ないと思います。その上で、あの御発言について外務省の立場でコメントするということはいかがなものかと、こう思うわけでございます。
 いずれにいたしましても、鈴木議員は一連の疑惑について政治的、道義的責任を取られまして自民党を離党されたということであることはもう申し上げるまでもないと思います。
 それから、志位委員長がプレスで発表された文書につきましては、会談があったことは事実でございますが、これは鈴木議員が一議員としてのお立場でロシア側との間で非公式に行われた意見交換の場でございますので、外務省としてあるいは政府の立場でコメントすることは適当でないと、こう思っております。文書の出どころも不明でございまして、外務省としても、その内容や存否につき確認することは差し控えさせていただくのが適当だろうというふうに思っております。
○紙智子君 今いろいろお答えになったんですけれども、志位委員長が指摘をした文書の中身でもその会議があったということは認められています。そして、その会議に外務省から東郷氏が参加をしていたと。
 これ、私的な立場でというふうにおっしゃいますけれども、外務省の人間が、しかも来ている相手の方は正式な立場で来ているわけですから、そういうことはやっぱり言い逃れになるんじゃないかと。やっぱり多くの人たちがそのことについても大きな疑惑を抱いているわけで、これについてもきちんと責任を持った対応が必要だというふうに思います。
 ちょっと時間がありますので、そのことも含めてお考えいただきたいということで、次の方に移らせていただきます。
 それで、友好の家の入札資格の疑惑をめぐる問題です。
 この問題は既に予算委員会で我が党の筆坂秀世参議院議員が取り上げました。入札説明会に参加したのは、受注した渡辺建設及び犬飼工務店を含む他の四社です。そのうち入札資格がなかったのは、大和工商リース、これ本社が大阪にある、それから山九、これは東京に本社がある、それから第一土建工業、これは施工実績が不足という三社で、残りの村井建設だけが参加資格があったというふうにしています。
 そこでお聞きしますけれども、この入札参加資格では、「根室管内において施工実績を十分有する者であること。」というふうになっていますが、とてもこれ、抽象的なんですね。さっぱりよく分からない。施工実績を十分有しているという基準があるはずですけれども、具体的にどうなっているでしょうか。
○政府参考人(齋藤泰雄君) お答えいたします。
 村井建設の根室管内における実績でございますが、同社に照会いたしましたところ、平成三年十二月から平成九年十月に掛けまして二件の民間会社の支店を建設したほか、五件の公共事業を元請で担当しておりまして、こういったことから、もし同社が仮に資格審査書類を提出していれば、入札参加資格ありと認定されたであろうと思われます。
○紙智子君 具体的な施工場所、受注額、ジョイントの状況ですとか、具体的にちょっと答えていただけますか。
○政府参考人(齋藤泰雄君) 請負金額については御容赦いただきたいと思いますが、平成四年、根室市道営住宅、元請、単体でございます。平成六年二月、標津、標津特別借受け宿舎、元請、単体でございます。平成七年、中標津、北海道根釧地区高等養護学校、元請、ジョイントベンチャーでございます。平成九年、根室、根室警察署庁舎新築工事、元請、ジョイントベンチャー。以上でございます。
 そのほか、二件の民間会社でございます。
○紙智子君 受注額は幾らですか。
○政府参考人(齋藤泰雄君) 公共事業の部分について御説明いたします。
 平成四年の根室市道営住宅でございますが、一億一千五百六十五万円、六年の標津特別借受け宿舎、一億六千九百五十万円、平成七年の北海道根釧地区高等養護学校、一億五千百五十一万円、平成九年の根室警察署庁舎新築工事、二億五百八十万円でございます。
○紙智子君 最後、もう一回、何とおっしゃいました。
○委員長(佐藤雄平君) 齋藤局長、はっきり。
○政府参考人(齋藤泰雄君) 根室警察署庁舎新築工事でございます。
○紙智子君 その村井建設の事業について、この間、私たちもずっと聞いてきたわけです。それで、実際に七件あるというふうに最初、お答えになりました。それで、その七件の中で調べていきますと、結局、最初の言われていた三件については根室管内じゃないところだったわけですよね。その後、また今言われたことが出てきたわけですか。
○政府参考人(齋藤泰雄君) 村井建設に照会したところは、先ほど申し上げたとおり、場所につきましては、根室であったり中標津であったり、あと標津でございますか、この三か所七件でございます。
○紙智子君 当初私たちが聞いていたところでは、最初に言われていた三件というのは、阿寒ですとか、それから根室管内の外に作っているのが三件紹介されて、それ以外はまだ分からないという話だったわけですね。そのほかに今言われたところがあるということなんですか。
○政府参考人(齋藤泰雄君) この案件につきましては、入札参加資格の中に根室管内というふうに明記されているところでございまして、具体的には根室市、別海町、中標津町、標津町及び羅臼町、こうなっているわけでございますが、村井建設にこの管内において施工した工事で実績として何がありますかというふうに照会したことに対して私どもが得た回答がただいま申し上げたところでございます。
○紙智子君 それは間違いないですね。
○委員長(佐藤雄平君) 齋藤局長、時間が迫っておりますので、端的に。
○政府参考人(齋藤泰雄君) 村井建設に照会したところを御紹介した次第でございます。
○紙智子君 この間、いろいろやり取りしてきましたけれども、非常にそういう点では、外務省の方からの回答が、疑惑が本当に大きくなるような回答しかされなかったわけです。
 それで、元々、同種または類似工事ということで、友好の家との関係でもそういう入札資格というふうになったわけですけれども、私たちは、やはり本当にこの入札そのものが形式的で、そして偽装的なものではないかと。結局、自動的に渡辺建設に受注されるということが初めからあって、そういう中でこの事態がなかなか明らかにされないできたのではないかということでは、今聞いたことを私たちも更に調べますけれども……
○委員長(佐藤雄平君) 質問時間が過ぎておりますから。
○紙智子君 はい。
 引き続き追及するということを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。