<第154国会 2002年3月20日 農林水産委員会 3号>


平成十四年三月二十日(水曜日)
    午前十時開会
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  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○平成十四年度一般会計予算(内閣提出、衆議院送付)、平成十四年度特別会計予算(内閣提出、衆議院送付)、平成十四年度政府関係機関予算(内閣提出、衆議院送付)について(農林水産省所管及び農林漁業金融公庫)
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○紙智子君 私は、北海道の野幌東地区の事業と農水省の姿勢について最初に質問いたします。
 予算委員会でも問題になりましたけれども、鈴木宗男氏が北海道野幌東地区の特定農用地整備事業の採択をめぐって当時の北海道開発庁に圧力を掛けた問題です。
 国土交通省の調査報告書が、扇大臣が三月十二日ということで、これまとめて出しました。それで、この報告書ではかなりの関与を認めています。この事業主体は開発局なんですけれども、しかし農水省の農業用の予算の一環であると。
 この事業主体、その予算に対しては農水省の権限もあるということで、そこで農水省にお聞きいたしますけれども、この中で明らかにされた内部文書の中に、一番最後にこの内部文書が付いているわけですけれども、この中で、平成九年の四月二日、「農水省から局に予算執行解除の旨が伝えられた。」というところがあります。
 それで、このことというのは、農水省から、当時、平成八年ですね、この八年のときに、十二月の時点で予算を凍結していたということを農水省自身も知っていて、そして四月一日に鈴木宗男氏が、執行については農水省に任せると、開発局に任せるというふうに言ったので、農水省もすぐこれは凍結解除ということを言ったというのがその実態、事実だったんじゃないかということなんですけれども、どうでしょうか。
○政府参考人(太田信介君) 三月六日の国土交通省からの調査依頼に基づきまして、国土交通省の調査に協力するために農林水産省といたしましても調査を実施いたしました。その結果、農水省から北海道開発局に予算執行解除の旨が伝えられたとのことにつきましては、関係者に対し当時の事情を聞き取りましたが、そのような事実は確認できなかった状況にございます。その旨を既に国土交通省に回答をさしていただきまして、その結果を同省から三月十二日に公表されたと、こういう状況にございます。
○紙智子君 調査報告書は、国土交通省の求めに応じて農水省がこう答えたということになっているわけですけれども、農水省はこの文書の存在や送付を要請した事実も確認できないというふうになっているんですけれども、しかし一方で、この中身を見ますと、例えば四ページのところでは、「FAX文書については、」「見たという明確な記憶はないが、そのころであれば予算要求に関する資料の一部として送付されてきたかもしれない。」ということを言っているとか、あるいは七ページのところには、「よく覚えていないが、鈴木議員から事業の必要性や熟度について電話があったような気がする。」というふうに言っている人もいるわけですね。
 それで、やはり予算を農水省も、もし鈴木氏や開発局と一緒になってとどめていたということだったとすると、これは大変な問題だと思うんですけれども、この点、更にどうでしょうか、調査するべきじゃないでしょうか。
○国務大臣(武部勤君) 本件に関しましては、三月五日の衆議院予算委員会での議論を踏まえまして国土交通省から当省への協力依頼があったことから、農村振興局が大臣官房の協力の下に調査を行ったところでございまして、調査は、当時の関係者からの聞き取りなどにより行い、その結果を国土交通省に回答し、同省の報告書の中で公表されたところでございます。そのことで御理解をいただきたいと思います。
○紙智子君 まだはっきりしていない中身があるわけですよね。ですから、農水省としてもやはりきちっとその分からない部分も調べて報告をするべきではないかと思いますけれども、この点、どうですか。
○政府参考人(太田信介君) 正に先生御指摘の、その分からないところというのが、我々としても国土交通省からの求めに応じた部分、そして我が省としても明らかにしておかなきゃいかぬという意味で、きちっとした、正に我が局だけではなくて官房の協力も得ながらきちっと調査をいたしまして、その結果、やはり先ほども先生のお話ありましたが、担当者といいますのは全国の相当の数の地区を担当していまして、言い方がちょっと語弊があるかも分かりませんけれども、いろんな依頼をする立場と、それをこたえていただく立場の仕事のボリュームなり問題意識といいましょうか、その処理のときの記憶の状況というのは、大分そこにはずれがあるというようなことも、私もそういう実態の仕事をしておりまして時々そういうことを感じたこともありまして、いろいろ分からないと言われていることはそのとおりなんだろうというように、もちろんそれは厳しくといいますか、本当にそうなのかということをただした上で、当初申し上げたような答えになっておるということを御了解いただきたいと思います。
○紙智子君 報告をするということですね、その結果について。
○政府参考人(太田信介君) 国土交通省の方にお答えさせていただいたものがすべてだということでございます。
○紙智子君 それはちょっと納得できないですね。分からないところがそれの上でもあるわけですから、私は、これについては農水省としてきちんと報告しなければならないことだというふうに思います。
 そして、大臣もやはり公共事業を担当する大臣なわけです。鈴木氏がこのやり取りをめぐって新聞で大きく報道されましたけれども、鈴木氏がそのとき、自民党を落としたところについては新規の予算を付けないというような党利党略的な発言をして、こういう公共事業をゆがめたということをやっているわけですけれども、このことの重大性についてどのように認識されていますか。
○国務大臣(武部勤君) 今、前段の件につきましては、新たな事実の御指摘があれば農林水産省としても適切に対処していく考えでございます。
 また、ただいまの農林水産公共事業の実施の問題でありますが、これに当たりましては、国会議員を始め各方面から様々な意見がございます。これらの意見に対して常に幅広く耳を傾けて、適切なものは取り入れ、不適切なものは排除するという態度で行政の責任を果たしていくことが大切だと考えております。
 なお、政官業の問題につきましては、毅然とした態度で臨むよう事務当局に指示しているところでございます。
○紙智子君 つい最近なんですが、マスコミにこの鈴木氏の圧力について証言をした前の南幌町の町長さんが、ゼネコンの関係者という何者かによって、鈴木氏に謝罪しないと公共事業に影響するといって一時間にわたって強要されてわび状を出させられたんですね。これも三月十二日付の北海道新聞に大きく載りました。それで、やはりこれは人権問題と思うんですけれども、この方面からも処理必要なわけですが、同時に農水省の公共事業が南幌でやられているわけです。
 確認いたしますけれども、謝罪しないと自治体の公共事業に影響するなんというばかなことといいますか、こういうことというのはないですよね。いかがですか。
○国務大臣(武部勤君) そういうことは事、農林水産省についてはないと私は確信しております。
○紙智子君 そういうことはあり得ないということなわけですけれども、当然だと思います。
 そこをちょっと確認した上で、鈴木氏の問題は、やはり行政の基準をねじ曲げてまで後援企業に仕事を回して、そして企業から政治献金を受ける、税金の還流の構造で、とんでもないことだと思います。大臣は、その鈴木氏から百万円をもらって返すというようなことなわけですけれども、献金を受けたことが間違いであったということを認めているわけですか。
○国務大臣(武部勤君) その件に関して申し上げますと、当時、総選挙のときでございまして、鈴木議員は当時、道連会長でございました。比例区候補として各選挙区支部を回った際に、平成十二年六月十九日に私どもの第十二選挙区支部にごあいさつに見えましたわけでございます。そのときに事務局が受けたものでございまして、後で調べてみますと同様のケースは他の選挙区支部にも多々ございまして、私どもは、道連から十二選挙区支部への助成金、こういう理解で受けていたということでございます。
 しかし、最近のマスコミ報道等によりまして、私が個人的に受けたかのように伝えられておりますのは全く本意でございませんので、北海道代議士会でそれぞれ協議いたしまして、道連を通じて返却したということでございます。
○紙智子君 我が党の小池議員が十八日の予算委員会でこの問題について小泉総理に質問しました。そのときに総理は、やましいところがなければ返す必要がないというふうに言ったんですね。ということは、やましいことがあったというふうに思ったわけですか。
○国務大臣(武部勤君) ただいま申し上げましたように、紙先生も北海道の事情はいろいろ詳しいと思います。私や中川昭一先生は鈴木代議士といわばライバルでございまして、私ども、これは道連からの助成金であるということで十二選挙区支部が受けたということでございますが、それが報道によりますように、私個人が受けたということは全く本意でありません。
 したがいまして、私個人が受ける理由はありませんので、しかもそのことについてはほかの選挙区支部長、つまり北海道の各代議士でございますが、いろいろ聞いてみますと同様なケースが多々あったということでございますので、みんなで相談しまして、道連を通じて返却したということでございますので、やましいから返したということでも何でもありません。私は個人としては受ける立場にないということでございますので、誤解を与えないようにきちっとさせていただいたということでございます。
○紙智子君 鈴木氏の一連の疑惑というのは、改めて企業献金が腐敗の温床になるということを示したものだと思います。特に、公共事業を行っている企業からの献金は、そもそもの出どころは税金です。そして、税金の還流システムです。企業は利益のためにやはり献金する、公共事業の仕事を取ってほしいということの期待でもあります。それがやはり行政をゆがめる元凶になるというふうに思うんですね。
 企業献金、特に税金の還流である公共事業の受注業者からはやめるべきだというふうに思うわけですけれども、大臣が支部長をされている北海道の第十二選挙区の支部も建設業者から多額の献金を受けています。
 例として、一番地元で公共事業をやっているのが西村組というところですけれども、この企業から二〇〇〇年には百九十八万円、献金を受けていますし、この業者は農水関係でも、平成十年で見ますと開発建設部からサロマ湖の漁港、それから斜里地区の排水路の工事などの発注を受けている。補助事業としても多くの漁港や農道の工事も受けている。それからまた、菊池組、五十嵐建設という企業からも、それぞれ二百八十万、百九十八万円と、それぞれもらっているわけですが、この会社は林野庁の北海道森林開発局北見分局というところから多額の発注を受けている。
 大臣、農林水産大臣になってからもこういうところから、企業から献金を受けているんでしょうか。
○国務大臣(武部勤君) 企業・団体献金の在り方、政治活動を行うためにどのように資金を調達するかにつきましては、現在いろいろ議論がなされていることは私も承知しておりますが、公共事業を実施する企業からの献金の問題についても、法に照らして適正に処理されている限りは直ちに問題となるわけではないと、私はかように思っております。
 こうした議論の進展を見ながら判断していかなければならないと、このように考えている次第でございます。
紙智子君 関連企業からの政治献金に関してはこれまでもいろいろ議論になっていまして、例えば、九六年に今の小泉総理が厚生大臣だったときにやはり同じことの質問を受けたときに、小泉当時の厚生大臣の回答というのは、私は大臣在任中は関連業者の献金は受けないことにしていますというふうに答えていますし、そのほかに亀井静香建設大臣も同じ趣旨の発言をしています。
 ですから、やっぱりそういう問題については、手続上やっているから別に問題ないということではなくて、現に鈴木氏の問題のようにそういう形で温床となってきたということがあるわけですから、ここはせめて大臣の間のときはもらわないということをきっちりやっていただきたいというふうに思うんです。
○国務大臣(武部勤君) それはそのとおりだと思います。大臣在任中は私は誤解のないようにきちっとすべきだと、こう思っておりますので、大臣在任中は公共事業を営んでいる業者からの献金はいただかない方がいいと、こう思いまして、私の秘書に既に指示いたしております。
○紙智子君 それでは次に、北海道の農業公共事業の問題で質問いたします。
 それで、北海道では今五十一の大規模な国営かんがい排水事業が行われています。その中で、水田から水需要が少ない畑地に今重点が移ってきていると。元々は水田に水を使うということだったわけですけれども、今はそれが畑になってきていると。それで、ダムから水路を引いて畑かんがいに、かんがい施設を造っていこうということでその工事が進められるわけですけれども、畑地かんがい施設を造って初めてその効果が出るわけです。
 ところが、昨日からも議論になっているように、農業経営が非常に悪化してきているという中で、かんがい施設はもう要らないとか、あるいはやめたいと、そういう農家が急増してきています。
 それで、私は、道庁の農政部の農村計画課が作成した十三の畑地かんがい地区の農家意向調査というのをやっているんですね、この意向調査の結果についていただきました。このもらった調査を見てみますと、北見にもなるんですけれども、雄武、ありますね、雄武の中央では畑かんの面積が、八千ヘクタールのうち、この国営の事業で末端かんがい施設を希望している面積というのは七百三十一ヘクタールですから、八千の七百三十一ですから、一割もないんですね、希望しているところが。この国営事業で末端かんがい施設を、そのほかにも札内川の第二、それから空知中央、安平川など六地区が希望を取っているわけですけれども、一〇%もいないという状況になっているんです。
 それで、施設設置の意向が少ないのに強行するというのはやっぱり問題だと思いますが、いかがですか。どうするつもりなのかということです。
○政府参考人(太田信介君) 先生御指摘のとおり、国営かんがい排水事業の推進に当たりましては、地元の意向を適時的確に把握しながら事業にこれを反映させていくということが非常に重要であるというように考えております。このために、畑地かんがい事業への参加意向が減少したような地区におきましては、これまでも水源施設については複数地区での共用化、二つの水源を一つにまとめるとか、あるいは小規模な調整池への切替え等を行いながら事業規模を縮小する等の事業計画の見直しを行ってまいったところでございます。
 今後とも、事業の再評価制度、五年ごとに見直しを行うというルールを平成十年から導入しておりますが、こういった制度も活用しながら、地元意向を的確に把握し、また不断の見直しを行いながら事業を推進するとともに、特に末端施設の整備を行う、北海道の場合は道になりますけれども、あるいは市町村等との連絡調整を図りながら効果の早期発現に努めていくということで実施してまいりたいということでございます。
○紙智子君 やはり本当にいろいろな形で調整ということなんですけれども、農家の意向を踏まえた事業にしなければ、結局実際には使われないで負担だけが増えていくということになってしまうと思うんですね。
 そこで、ちょっと例として、大臣の地元の斜里地区などの事業についても聞いていますので質問しますが、これから変更計画の同意を取ることになるわけです。それで、末端かんがい施設の整備まで実際に、ですからかなり広大な地域ですよね。広大な地域でかんがい施設を造るためには、一番幹になる太い用水路を造らなきゃいけないわけです。そこから枝葉のようにというか造って、そしてかんがいの施設を造るわけなんだけれども、その最終的なところまで含めて確認をしているわけじゃなくて、本当に軒下に、言ってみれば給水栓というんですかね、農家の一戸一戸に給水栓、一戸につき一つの給水栓を付けさせてほしいということでの確認だけで、将来的にはどうなるかということを抜きに同意をずっと取っていっているというような事態があるんですね。
 現場では、それでもいいからとにかく確認してほしいと、オーケーしてほしいということで迫っているわけですけれども、これではかんがいの効果は実際には出てこないわけで、とにかく工事をやってしまって、後から畑に水路を通して施設を造るということでは本当に見通しが付かないわけで、その意味では、ちゃんと施設を造って、水を農家一戸一戸が使うんだということで確認をするようにすべきじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(太田信介君) 先ほど申し上げました、例えば二つのダムを一つにまとめるとかいった、縮小しておると申し上げましたが、今、先生の事例に引かれました斜里地区、これにつきましては、正に斜里地区単独の水源として実施する予定でございました海別ダム、これの建設を取りやめて、隣接する国営事業で小清水地区というのがございます。ここの水源として建設しております緑ダム、これを使うという方に振り替える、こういった作業をして、しかも地域の営農状況の変化あるいは受益農家の意向、これを十分踏まえながら、この事業規模を大幅に縮小する変更計画案の取りまとめを現在しておるという状況にございます。
 それで、地元の最終的な意向確認、受益農家に対しまして国による基幹施設の整備内容、これはもう当然でございますけれども、末端施設の整備計画につきましてもいろんな手法がございます。リールマシンといって自動でかなり大きな規模をやれるような、そういう機械もございますし、あるいは多孔管といってパイプできめ細かにやっていくものもございます。そういったもののコストも含めて散水方法の選択肢を示しながら、あるいは最終的にはまた維持管理の問題も出てまいります。そういったことも含めた受益農家の負担金、これがどうなるのだということを説明し、事業参加の意思を個別農家ごとに確認しておるというところでございます。
○紙智子君 現在、百戸近い農家が希望していると言っているわけですけれども、先ほど言いましたように、これはかんがい施設を必要ということでの合意ではないわけですね。それで、実際には対象の三百戸のうち三分の二近くが要らないということで異論を唱えている事業なんですね。ですから、やっぱり一戸一戸地元の農家に対して意向を酌むべきだというふうに思うんです。
 大臣の地元なので、大臣からも一言答弁いただきたいと思います。
○国務大臣(武部勤君) 畑地かんがい事業を含めまして、土地改良事業は受益農家の申請に基づき実施されるものでありまして、その推進に当たりましては地元の意向を適時的確に把握して事業に反映することが大切だと、かように考えております。
 このため、各事業地区において毎年度受益農家や関係機関に予算措置や工事計画を説明するとともに、地元の意向を把握し、できる限り事業に反映するよう努めているところでございまして、斜里地区のことにつきましても、私ども、地元の町長からもいろいろな要請をいただいておりますその償還についての問題についても、いろいろ相談を受けたりしているわけでございますが、今具体的なお話がありましたことについては、私、事細かに承知しておりません。したがいまして、それは確かめなければならないと、こう思いますが、私どもの聞いているのは、町長、地元の町長から聞いていることについては、いろいろ要望ございますけれども、今お話しのようなことは直接耳にしておりません。
 しかし、今申し上げましたように、これは事業をやる場合に、それは情勢によっていろいろ変化がありますから、途中で嫌になったということだとか、もっと規模を小さくしてもいいとか、もう自分はやめてしまうんだからとか、いろんな人がいると思うんですね。しかし、その都度、次から次と変わっていって、その話を一部始終全部聞き入れるというようなことは、事業の円滑な実施の上でなかなか難しい問題があるんだろうと、こう思います。
 いずれにしましても、今そういうお話を聞きまして、確かめてみようとは思いますけれども、どういうことが可能でどういうことが可能でないのかと。私も、地元のことでございますから、でき得れば皆さん方に理解し納得し、希望を持ってやってもらうということが大事だと、こう思いますので、その点については調べさせていただきたいと思います。
○紙智子君 なぜこのことを言うかといいますと、つまり変更計画の同意を取り付けるそのやり方として、賛成しなければ、今までは地下水を使っていたとかというのもあるわけですけれども、そういうところを使えなくなるんだとか、あるいは排水路に水を流させないとか、それから今までは川から水を引いていたというのもあるんですけれども、水源にダムができるから今ある川の水もただでは使えなくなるんだとか、そういったことを地元でいろいろ言って、一面では脅しみたいな形で、だから賛成してもらおうというようなことも行われているわけなんですね。このようなやっぱり論は正しくないわけです。
 それからまた、今お話に出てきましたように、お隣は国営の土地改良で、小清水地域ですけれども、ここでも、少しここの場合は早くやっていたと思うんですけれども、償還の利子が軽減される担い手支援事業が適用されることになっているわけですよね。ところが、これをめぐっても、十六年度の完成が条件だよということを言って、だから同意手続を早くしてくれというようなことで急がしているということがあるんですけれども、既にこの地域でいえば十二年度に認定されているわけで、完了、完成が遅くなろうと、認定されているものはちゃんと適用されることですよね。そこのところはちょっと確認したいと思うんですけれどもね。いかがでしょうか。
○政府参考人(太田信介君) 一定のルールにつきまして、この担い手支援事業等を実施しておりますが、現地の方でそのような説明がされておるとすれば、少し、それは事実を確認の上、また先生の方にもお話をしたいと思います。
○紙智子君 いずれにしても、やはり理不尽なやり方でしゃにむに急いでやらせるというのは問題だというふうに思います。
 農家負担に対して、結局これまでの説明では、これを作れば農家の所得がこれだけ増える、だからその中から償還していけばいいんですよということで説明してきた経過があると思うんです。その根拠になっているこの事業をやると、例えばバレイショやビートは四割増になるんですと、この事業をすることによってね。そういうことでもって説明してきたと思うんですけれども、地元ではそんなに増えないよという話が出ているんですね。四割も増えないということです。
 それで、農水省から、一体その説明について何を根拠にしてなっているのか、その試験や調査のデータを先日いただいて見たんですけれども、斜里では十アール当たり七トンというふうに言われているわけですけれども、そんなに取っているところは実際にないわけです。そして、調査では、かんがいをしてないところに比べてかんがいをしている地域もせいぜい二割から三割ぐらいしかすぎないんですね。
 調査ではそのぐらいしかないということなんだけれども、てん菜の場合も同じで、しかもその調査したときが、ずっと見てみますと、この資料の調査段階が昭和四十二年から五十一年ということで、三十年前のものなんですよ。だから、この古いデータを使って四割増えるというふうに説明してきたわけですけれども、本当にそういうことで言えるのかどうかということですね。どうでしょうか。
○政府参考人(太田信介君) まず、斜里地区の事業計画におけますバレイショ、てん菜の単位面積当たりの増収割合でございますけれども、これは一般の地区でも同様でございますが、畑地かんがいモデル圃場あるいは農業試験場における調査データを基に決定しているものでございます。
 この地区の、具体的に申し上げますと、バレイショの畑地かんがいによる増収割合につきましては、女満別町ほか二町におけます六か所のモデル圃場におきまして、畑地かんがいを行う圃場、そして行わない圃場、同じ気象条件での両方の対比をいたしまして、その収量差のデータに基づき設定していくということ。あるいは、排水改良につきましては、同じように紋別市等の六か所におきまして、排水が良好な圃場とそうでない圃場、この収量差のデータに基づき設定するといったことをそれぞれ行っておりまして、てん菜の増収割合につきましても、畑地かんがいについては七か所、排水改良については四か所のデータを基にバレイショと同様の手法により設定したものでございまして、また、こういうものは時間的な変化とともにということございますけれども、基本的に作物のことでございますので、気象条件、土壌条件、そういったものが変わらなければ、そこはそう大きな差はないということもございます。
 ただ、いろんな検証ということが必要だということから、後ほどそういうところの事例地区、更に追加の事例地区についても追加的な調査等は行うということもしながら、事業計画の万全を期していきたいということでございます。
○紙智子君 かなり古い調査ですよね、もう三十年前なんですけれども、価格も変わっているし、本当に科学的な根拠としてそういうふうに、所得は増えるんだというふうに言えるんでしょうか。そこのところはもう一度、どうでしょうか。
○政府参考人(太田信介君) 今申し上げましたように、てん菜は北海道を代表する基幹的な作物でございます。そういう意味で、過去の試験あるいは調査データの蓄積が相当ございます。そういったもののデータを基に設定したものでございまして、古いからといってその信頼度が低いということにはならないというふうに考えております。
○紙智子君 北海道の農家所得、北海道だけじゃないですけれども、非常に激減しているわけです。所得が増えてその一部で償還できるということで、これまで事業を進めてくる論理になっていたわけですけれども、この論理自身がもう破綻している状況だと思うんですね。
 やはり変更計画の審査でも、増加所得の四割の範囲で償還が収まる、これが農水省が計画を承認する条件であるというのは間違いないですね。
○政府参考人(太田信介君) 御指摘のとおりでございます。
○紙智子君 そうであるならば、多少やはり利子を軽減するとか平準化というような形でやる、償還期間を延ばすとかという、そういう程度のものではなくて、もっとやっぱり思い切った対策を私、提案したいと思うんです。やはり増加所得がない場合は償還自体を延ばす、あっても一部にとどめると、こういう対策を取らないと、農家の方々は本当に不安で、先行きも見通しが持てないということですし、現に工事が完成したら離農が増えるというのはこの地域だけじゃないんですね。ほかのところも、例えば富良野なんかも、あそこは白金地区ということでやっていますけれども、そのほかにもいろんなところでそういう声が出されているんです。
 ですから、是非そういうことでもって検討していただきたいということで提案したいと思いますが、それについての見解をお願いできますでしょうか。
○国務大臣(武部勤君) 私は斜里生まれでありますので、しかも二十九歳から道会議員をやっておりまして、今振り返ってみますと、道議会の農務委員長などもやっておりましたけれども、私どものところはもう風害で随分悩んだところなんですね。それで、干ばつの被害で泣いたところでもあるんです。そういうようなことから、当時としては畑地かんがいについての強い要望があったということも事実ですし、その後、基盤整備が完了してから喜んでいる生産者もたくさんいるわけでございます。
 しかし、今、委員御指摘のように、農業情勢また農業経済情勢、いろいろ変化がございます。そんな中で、この金利負担ということも、今日のような低金利の時代とは違いまして、償還を迎えることになりますと、これはもう、当時はそれは契約でそうであったとしても、何でこの低金利時代にこれだけの金利負担をしなきゃならぬのだろう、ならぬのかというような御不満なり、また要請もあります。
 そこで、これまでも受益者負担については、情勢の変化に対応しつつ、償還金に係る利息相当分の一部を助成する担い手育成支援事業、今、委員お話しのとおりでございます。あるいはまた、償還金の無利子の繰延べを行う平準化事業等を実施しまして、対象地区の平均でピーク年償還額の約四割の軽減を図れるような対策を講じてきているところでありますが、また、農家負担の軽減に資するために、平成十四年度におきまして、これは小清水地区、斜里地区のことももう一つの大きな原動力といいますか契機になったわけでありますが、償還金の無利子での繰延べによりピーク時の負担金を更に引き下げるための措置を講じることとしたわけでございます。
 これらの事業制度の積極的な活用を推進するとともに、事業コスト縮減や効果の早期発現を図ることによりまして、農家負担の一層の軽減に努めてまいりたいと、かように思います。
 白金地区、あそこの皆さんからも、私、小清水の町長らから聞いたんだと、武部さんのところへ行って相談しろと。
 今、三番目に申し上げたことは、これ全国、総務省も私どもの話をよく聞いてくれまして、そういう対応策が十四年度から実施するということにも相なりましたので、今後更に、農家負担の軽減についてはいろんな角度から努力してまいりたいと思います。
○紙智子君 私が提案をいたしました、その増加所得がない場合には償還自体を延ばすとか、あっても一部にとどめるという、この点はどうですか。考えていただけるでしょうか。
○政府参考人(太田信介君) 先生御指摘のそういう手法というのは、手法としては考えられないわけではないと思いますが、いわゆる国民の税金をどう適切に使っていくかという問題、それから農業そのものに起因するポイントもございます。そのそれぞれの方の営農の能力の問題もございます。そういった意味で、直ちにそれを具体化するというのはやや難しい面があるんじゃないかという感じもしております。少し勉強させていただきたいと思います。
○紙智子君 是非検討していただきたいというふうに思います。本当に生産者の皆さんはもうぎりぎりのところで頑張っておられるわけで、考えていただきたいというふうに思います。
 やはり、農業公共事業を農家の意向に添ったものにするということでは、大規模な事業ではなくて、土質の改良ですとか、それからあの地域はやっぱり排水というのは必要だというふうに思うんです。さらに、農業予算の中に償還金とか負担軽減策ですね、先ほど述べられておりましたけれども、そういう予算の拡充を求めまして、私の質問とさせていただきます。