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冬期雇用援護制度の存続・拡充を

2005年7月8日
建設・季節労働者のみなさんの、雇用と生活を守る、
冬期雇用援護制度の存続・拡充を
2005年7月  日本共産党北海道委員会
【 目 次 】

はじめに
1、通年雇用安定給付金制度(冬期雇用援護制度)がはたしている重要な役割
2、国は、建設・季節労働者の生活の安定と通年雇用に責任をもつべきです
(1) 実態を無視した国の態度
(2) 国は国会の「付帯決議」を尊重して、建設・季節労働者の雇用と生活の安定に責任をもって取り組むべきです
3、建設・季節労働者の雇用と生活を守る制度の存続・拡充を提案します
(1) 冬期雇用援護制度を存続し、生活と雇用の安定をはかるため改善をすすめます
(2) 雇用と賃金・労働条件を守るために
1 抜本的な雇用創出対策を推進します
2 高齢者、青年労働者の雇用の確保をすすめます
3 緊急地域雇用創出特別交付金制度の復活、または代わる制度の確立を
4 ILO第94号条約を批准して、公共事業や官公需に従事する労働者の適正な賃金・労働条件を確保する「公契約法」と「公契約条例」の制定をすすめます

はじめに
 いま、道内の建設・季節労働者の雇用と生活がきびしさを増しています。それは、小泉内閣の大増税・負担増の押しつけと、大企業の利益最優先のリストラで、本道の雇用情勢が1〜3月の完全失業率で5・9%と、全国10ブロックの中でも最悪を記録し、建設業では、長引く不況と公共事業の縮小が重なり、夏の仕事が減少しつづけているからです。そのうえ政府が、通年雇用安定給付金制度(通称=冬期雇用援護制度)の内、冬期雇用安定奨励金制度(2003年度、48億9,945万円)と冬期技能講習助成給付金制度(2003年度、52億315万円)の廃止を計画していることは、生活不安をいっそう深刻にしています。 
 この制度の2007年からの廃止が、建設・季節労働者と家族の生活はもとより、本道にとって基幹的役割を占める建設業と業者の経営、地域経済、自治体などにも深刻な影響をおよぼすのは必至です。
 日本共産党は、冬期雇用援護制度の廃止に反対するとともに、建設・季節労働者の雇用と生活を守る制度の存続・拡充の実現をめざして、道民ぐるみの運動に力をつくします。

1、通年雇用安定給付金制度(冬期雇用援護制度)がはたしている重要な役割

 道内の季節労働者15万5,475人の内、建設業に従事する季節労働者(短期雇用特例被保険者)は9万8,390人、冬期雇用援護制度を活用する労働者は6万6,677人です。建設業就業者(30万人)の5人に1人、建設・季節労働者の3人に2人がこの制度を活用(2003年度)しています。
 建設・季節労働者の年間就労日数は、20年間(1981年から2001年)に、男性で74日間、女性で98日間と大幅に減少しています(「北海道季節労働者白書」第3集)。また同「白書」によると生活実態は、年収200万円以下の労働者が、男性で43%、女性で90・1%と深刻です。ぎりぎりの生活を維持し失業を余儀なくされる冬を乗り切るうえで、雇用保険の短期特例一時金(50日分)と冬期雇用援護制度は、文字どおり「命づな」になっています(冬期雇用援護制度は通年雇用奨励金、冬期雇用安定奨励金、冬期技能講習助成給付金の三つにわかれています)。 
 また、積雪・寒冷地域における建設業の通年施工化が完全に実現されていないなかで、多くの建設業者がこの制度を活用して労働者の通年雇用化に努力しています。冬期雇用安定奨励金で見るとその活用数は、1990年度から96年度に4万人台を続け、その後の制度の改悪で活用が減少したものの、2001年度以後毎年、2万数千人の労働者の通年雇用化に大きな役割を果たしています。
 労働団体、企業組合とともに各地域の建設業協会も技能講習会を実施し、また自治体も講師の派遣をはじめ様々な支援を行ってきました。
 季節労働者の失業給付が90日分から50日分に大改悪された1976年以降、冬期雇用援護制度は、労働者の生活と建設業者の営業を守るうえでかけがえのない役割を果たし、延長を重ねて28年間存続してきました。また、年間100億円近い給付助成金、奨励金は、地域経済の重要な下支えとなっています。本道の建設業と建設・季節労働者にとって、また地域経済、自治体にとって、冬期雇用援護制度の存続・拡充こそ緊急に求められています。
*通年雇用安定給付金制度(冬期雇用援護制度)
通年雇用奨励金制度(恒常的)―冬期間、季節労働者を離職させないで雇用し、そのあとも1年以上通年雇用することを条件に、事業主に賃金助成をおこなう。
冬期雇用安定奨励金制度(暫定的・3年間)―冬期間に季節労働者を臨時的に就労させた場合の、事業主への賃金助成。
冬期技能講習助成給付金制度(暫定的・3年間)―冬期間に季節労働者が技能講習を受講した場合の給付金と講習の実施主体への助成金。

2、国は、建設・季節労働者の生活の安定と通年雇用に責任をもつべきです

(1)実態を無視した国の態度

 ところがいま厚生労働省は、「この制度を長くつづけてきたが通年雇用の効果があらわれない」、「季節労働者は毎年失業給付をうけている」などと言って2006年度(2007年3月末)で冬期雇用援護制度を廃止しようとしています。しかし、これは北海道の建設業と建設・季節労働者の実態をまったく無視する態度といわなければなりません。 

[1] 国は、「通年雇用の効果があらわれない」と廃止する理由を言っていますが、これは通年雇用化に必要な条件と課題を見誤っています。

 積雪・寒冷地域での通年雇用化のためには、きびしい自然条件を克服し冬期施工を可能にする技術の研究・開発と、冬期施工を積極的にすすめるための財政支援をはじめとした制度・施策の確立は欠かせません。
 たとえば、北海道と同じ自然条件にある欧米諸国では、通年雇用に対して政府が具体的な施策を実施しています。
 2003年の道の委託調査「季節労働者雇用安定対策業務報告書」によると、「冬期間の認可工事に対して地方政府が支出した直接費の50%(冬期の失業状況が高水準の場合は60%)を政府が支払う制度」(カナダ)、「公共建築物の維持、修理的な作業の大部分を10月以前または3月1日〜5月1日の開始を禁止する」(デンマーク)、「4年計画の下での国の建設事業計画の30%を11月1日〜3月31日までの間に実施」(西ドイツ、1960年以降)など、具体的な施策をすすめています。同「報告書」は、これら諸国の施策について、「長期かつ厳しい冬期のある諸国において大きな成功をみた」と評価しています。
 こうした各国の取り組みに比べてわが国の通年施工の取り組みはどうでしょうか。1976年12月、建設省(当時)、北海道開発局、北海道、東北6県、北陸3県による『通年施工化技術協議会』が設置され、冬期施工化技術の調査、研究と建設業界への啓蒙・普及などの取り組みで貴重な成果を上げ、季節労働者の常用化に一定の効果を上げてきました。しかし、通年施工を推進する独自の制度・施策といえるものは、工事量が少ない「端境期」の工事量を確保して工事量の平準化を目的にするゼロ国債措置事業だけです。しかもゼロ国債措置事業の規模が、年間工事費(着工ベース)の5%前後という水準では、毎年、10万人近い建設・季節労働者が冬期に失業する事態のもとで規模が小さすぎます(道は1990年度からゼロ道債措置事業を、1988年度から冬期増嵩経費措置事業を実施している)。
 通年雇用は、冬期にふさわしい規模の仕事があってはじめて可能になります。ですから道内の市町村自治体は、きびしい財政事情の中でも、独自の冬期特別就労対策(04年度99市町村で8億4,827万円、延べ11万1,283人就労)を継続し、すすめているのです。ところが、厚生労働省は、冬期の仕事をつくる制度、施策の努力を強化せずに、通年雇用の「政策効果」を冬期雇用援護制度に押しつけてきたのです。
 こうした国の態度は、通年雇用化のための前提条件や課題をまったく見誤っているといわなければなりません。

*ゼロ国債措置事業―継続中の事業について、新年度予算での事業支出を前年度の補正予算で債務負担行為として決議し、新年度予算成立前に工事契約を認め、工事開始の時期を前倒しする事業。

[2] 国は、「毎年失業給付を受ける・・」といいますが、これも本道の建設・季節労働者の特徴を無視した議論です

 もともと本道の建設・季節労働者は、積雪・寒冷という自然的な条件だけでなく、戦後の歴史的な開発政策のもとで形成されたという特徴をもっています。その多くは兼業ではなく専業的な季節労働者として、本道の開発にとってなくてはならない役割を果たし、現在も地域の建設業を支える重要な役割を担っています。かつて政府も「北海道の季節労働者は青森や秋田とちがい兼業でなく専業だ」(1976年、浦野労働大臣・当時)とその特徴を認めています。
 冬の仕事がないのは労働者の責任ではなく、冬期に工事量を拡大する独自の取り組みを抜本的に強化してこなかった政府にこそ根本的な責任があります。政府と大企業・ゼネコンが、建設・季節労働者の失業保障に責任を果たすのは当然ではないでしょうか。

(2)国は国会の「付帯決議」を尊重して、建設・季節労働者の雇用と生活の安定に責任をもって取り組むべきです

 国は、雇用安定奨励金制度と冬期技能講習助成給付金制度が期限を迎える度に、制度の改悪あるいは廃止を検討してきました。しかし、建設・季節労働者の生活を守り通年雇用化をすすめるため、政府は総合的な施策を推進する責任をもっています。

[1] 国の責任について、失業保険法が雇用保険法に変わった1974年12月、衆院と参院の社会労働委員会での「付帯決議」が明確にしています。「付帯決議」では、「出稼ぎ労働、建設労働等の不安定雇用の問題について通年雇用の促進、産業政策及び地域政策を総合的かつ強力にすすめること。また、雇用条件及び生活の安定、福祉の向上を図るための制度並びに施策の確立について・・・速やかに具体化をはかる」(参院)ことを強調しています。
 通年雇用とともに、生活・福祉について総合的、具体的な施策を求めていることは重要です。国は、冬期雇用援護制度の今後について、この「付帯決議」に立ちかえり、廃止ではなく存続・拡充をすすめるために努力をつくすべきです。
 
[2] 国の雇用のあり方を定めた雇用対策法では、その目的(第一条)で「国が雇用に関し、・・・必要な施策を総合的に講ずることにより、国民経済の均衡ある発展と完全雇用の達成に資すること」、「・・・労働者の職業を安定させるための事業主の努力を助長するように努めなければならない」と、国が果たすべき責務が規定されています。
 政府は、この「完全雇用の達成」に逆行するような制度の廃止ではなく、対策の充実につとめるべきです。また、雇用対策法第五条で「地方公共団体は当該地域の実情に関する必要な施策を講ずるように努めなければならない」と明記されており、道は制度の存続と充実にむけ、大いに力をつくすべきと考えます。

3、建設・季節労働者の雇用と生活を守る制度の存続・拡充を提案します

 道民ぐるみの運動の中でつくられ存続してきた冬期雇用援護制度は、今後も本道の建設業と建設・季節労働者にとってなくてはならない制度です。
 日本共産党は、建設・季節労働者の雇用と生活を守る制度の存続、拡充を実現するため、以下の季節労働者援護制度(案)を提案します。

(1)冬期雇用援護制度を存続し、生活と雇用の安定をはかるため改善をすすめます

暫定的な制度ではなく、恒常的な制度として存続させます。
冬期雇用安定奨励金制度は通年雇用目標数の達成が義務づけられていますが、冬の仕事が減少しているもとでは目標の達成は難しく、制度を活用しにくくしています。目標の義務づけをやめ活用しやすく改善します。
冬期技能講習制度については、受講制限をやめ、実施主体への助成の改善、受講給付金の引き上げなどをはかり活用しやすくします。
65才以上の排除を見直し、高齢労働者も対象とします。高齢労働者(60才〜69才)は、大工の33・7%、型枠大工の33・6%、全体でも36・7%を占め、重要な役割をになっています(「北海道季節労働者白書」第3集)。
雇用保険で制度の財源の確保をはかりながら、国や大企業の負担で改善をはかります。

(2)雇用と賃金・労働条件を守るために

[1] 抜本的な雇用創出対策を推進します
本道の季節的な失業を打開するため、冬期に10万人規模の雇用吸収がはかられるよう、国、自治体、民間全体で本格的に雇用を創出する長期的対策をすすめます。
冬期工事への強力な公的助成を行います。
公共事業の内容を、使うあてのないダムや船の来ない港、高速道路など、大型開発優先事業から、地域経済や雇用への波及効果が大きい、公営住宅や保育所の建設、学校施設などの耐震化など、福祉教育、環境中心にきりかえ、地元中小・零細企業の仕事と雇用の確保をすすめます。
現在、99市町村で行われている独自の冬期特別就労対策(2004年度)にたいして、国、道による財政援助を抜本的につよめ、さらに多くの自治体での実施をめざします。

[2] 高齢者、青年労働者の雇用の確保をすすめます
高齢労働者が地域で短期的な就労機会が得られるよう、企業組合などの活用をすすめます。
青年労働者が各種の技能訓練とともに実務経験をつむことができる制度の拡充をすすめます。

[3] 緊急地域雇用創出特別交付金制度の復活、または代わる制度の確立を

1999年度から2004年度末まで実施された交付金制度は、雇用期間の制限など不十分さを持ちながらも全国で83万人の雇用・就労の場を保障し、具体的な効果を上げました。全国の完全失業率は4%台後半を推移しており依然深刻な中、32都道府県にのぼる自治体から交付金事業の継続・拡充、またはそれに代わる施策の要望が出されています。交付金制度の復活、または代わる制度の確立によって地域の実状に合った雇用創出をすすめます。

[4] ILO第94号条約を批准して、公共事業や官公需に従事する労働者の適正な賃金・労働条件を確保する「公契約法」と「公契約条例」の制定をすすめます                       

 国、自治体が発注する公共事業、委託事業において、人件費を無視したダンピング受注やピンはねなどを根絶することは緊急、切実な問題です。いくつかの自治体では、公共事業を受託する業者に、「2省協定単価をふまえた賃金支払い」「建退共証紙の貼付実績の報告」をもとめる指導文書をだして下請業者と建設労働者の労働条件の保護をすすめています。
 政府は、ILO94号条約(公契約における労働条項に関する条約)の批准と「公契約法」を急ぎ制定すべきです。また、道や札幌市はじめ各自治体でも「公契約条例」の制定をすすめ、建設・季節労働者の賃金・労働条件を守ります。

以上

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